第57話 バカ政治家をぶっ飛ばせ

夏である。


燦々と光る太陽が、日光を振り撒く。それはまさに、マリリンモンローが色気を振り撒くみたいに。


しかしその光は先月よりも弱くなったかなと思える九月の某日。


我々、チームクズの面々に、政府からのラブコールが届いた……。




俺達、チームクズは俺の洋館に集まった。


俺が手元の手紙を読み上げる。


「パーティ『廃棄物』の皆さんへ」


「廃棄物?」


アーニーが聞き返す。


「チームクズってことよ」


シーマが言った。


「パーティ『廃棄物』の皆様につきましてはー……、この辺はテンプレートな季節の挨拶だな、前略、と」


「それで?」


「内容は……、『キミタチ強いんでしょ?なら戦っていち早く日本の平和をー』って話だ」


「差出人は?」


「××党」


「へえ!チーム『売国奴』がチームクズに依頼か!世も末だね!」


とアーニー。


「実際世界は崩壊してるから末法の世だぞ!」


と俺。


「「HAHAHAHAHA!!!」」


笑っておく。


笑うことは良いことだ。嘘か真か、笑うと癌の予防になるなんてトンデモな学説もある。


……多分嘘だろうな。


「何笑ってるのよアホ共め」


とシーマが言った。


ヴォルフは置物みたいに黙ったままだ。


「だってよ、お笑いだろ?」


「ああ、お笑いだ」


俺とアーニーが笑う。


「ほら見てよ、僕も民主党から同じようなラブレターもらったんだよね!」


「……実は俺もドイツ政府から」


アーニーとヴォルフが手紙を見せてくる。


「従わないとどうなるって?」


「いや?なーんにも。今の世の中、他人に言うことを聞かせるのには武力が必要なんだけどねー」


「む……、大分迂遠に書いてあるが……、戦わねば、国会で、財産を強制的に徴収する……、法律を新たに作る……、検討をするそうだ」


「実質、何もできないって言ってるようなもんじゃん」


まあとにかく……。


「じゃあ、『穏便』に『話し合い』で解決するかー」


そう言うことになった。




ドラゴンの革や骨、そして部分的にオリハルコンが使われた鎧や武器を装備した俺達は今、長野県の暫定政府の目の前まで来ていた。


「なんだアレ……?」「あれは……、チーム『廃棄物』だ!!!」「ま、間違いない、俺は見たことあるぞ!!!」「な、なんなんだ一体?!」


騒ぎ立てる愚民共の視線を浴びながら、俺達は生活魔法の一つである『拡声』を使う。


『あーあー、聞こえてるかな?こんにちは、日本の人々。我々はチームクズこと、「廃棄物」パーティです。今回は××党に用事があってここに来ましたー』


ざわざわと騒ぐ民衆。


『具体的に言えば……、この俺達に向かって、日本の高難易度ダンジョンを攻略しろ、財産を没収すると命令なさいました、××党の直枝正男さん。直枝正男さんにお話を伺いたくー!』


「何だと?!」「やべえ……」「あの売国奴共め、よりにもよって『廃棄物』を怒らせたな?!!」「もうだめだぁ、おしまいだぁ……」


そう言いつつ、俺は、足場になっている……、ヴォルフの飼い犬であるルディに指示をした。


「ほら、ルディ!もっと怖そうな顔しろ!」


『ああぁできないですぅ〜!巨大化するので精一杯ですよぉ〜!』


あ、うん。


魔法で全長百メートルくらいに巨大化した、ルディの上から呼びかけてます。


限界までデカくなったルディは、肉体の形状がブレて、犬どころかなんか悍ましい神話的怪物になっている。


まあ、脅しとしてはバッチリだろう。


『話し合いをしに来ましたー!命令のお手紙の件について、話し合いをー!』


拡声魔法、大きな音でギンギンに、街中に呼びかけていると……。


「はっ、羽佐間さんっ!こ、これは何事ですか?!」


おや、総理。


それと、防衛大臣も。


『××党の方からいただきました、手紙の件何ですけどお!!!これってぇ、どういうことですかねえ?!!?!!?!』


「わ、私は何も聞いておりませんが……、後日、情報をまとめますので……!」


『財産没収、もしくは、東京の全ダンジョンの攻略とありますが?』


「んっ、スゥー……ッ、その件につきましては、我が国の、公式の言葉では、ないと、断言させていただきます」


あ、今総理、ガチギレしかけてたな?


野党議員は、ツブヤイターで名誉毀損(?)した市民を起訴するのに対して、「煽り耐性カンスト」の、あんだけネットのおもちゃにされて、国会でヤジられ、裏でも表でも名誉毀損されまくっているのに黙っている、あの跡部総理が……、ガチギレ?


ああ、じゃあマジで野党の独断なんだ。


コワーイ。


「政府としては、未来、永劫!国民の皆さんに対して、法的根拠の伴わない、強制的な、所謂『徴兵』のような行動は、決して、行わないと、ここに宣言するもので、あります!!!」


『では、強制的な戦闘命令と、従わない場合の財産没収につきましては、××党の独断!××党の独断によるものと!そういう認識で、こちら、よろしいでしょうかーーー!!!』




「こちらも、そのような認識であります!!!」




お、言い切ったな……?


こんな公の場で、「野党切り捨て宣言」を……。


……ん?


「お、おいお前!確か、××党の支持者だったよな?」


「ひっ!そ、それは!」


「お前みたいなのが、あんな馬鹿政治家を支持するから……!」


「××党を支持すると、あんな化け物が街に……?」


「じ、自衛隊なんかじゃ、勝てる訳がない!」


「戦車って、もう殆ど残ってないらしいぞ?」


「マジかよ!じゃあ、あの化け物に勝てないじゃないか!」


「な、なあ、こいつ、やっちまおうぜ!××党を潰せば、見逃されるんだろ?」


おや、おや、おや?


『国民の皆さんに申し上げます!我々、チーム「廃棄物」は、東京のダンジョンの根絶は不可能です!しかし、これ以上増えないように、押し留めることはしております!』


よし、じゃあ、俺も政治家風に演説といこうか。


『我々の本拠地は、千葉県です!日本一危険な、東京のすぐ隣です!我が家を守る為、事業の傍らで、ダンジョンの間引きも並行して行なっております!ああ、ですが、しかし!』


タメる。


『私は……、悔しいっ!確かに、インターネットも新聞もない今、国民の皆さんに知っていただく機会はありませんでしたが!我々は、日本国の礎にならんと、日夜戦いを続けてきたというのに!それが、この扱いとは!』


はい、盛り上げてー?


『本日も、世界中がモンスターに溢れる中、私達の言葉を伝えたいが為に、命懸けでこの地まで来ました!完全武装をして、従えたモンスターに跨がり、ここに来ました!命をかけているんです、我々は!』


嘘は基本。いや、本当でもあるけど。


『財産につきましても!私は、私財を切り崩し、天海街の発展や、この長野へ売る製品の開発や製造などに、資金を投入させていただいており!社会的な義務は果たしているという認識です!!!』


これ、株式投資って言うんですけどね。


『××党の皆さんは!天海街にヘリコプターでいらっしゃいまして、街の接待を無料で受けていたと、風の噂(大嘘)を耳にしております!それが、それが……!その仕打ちが、これなのですかっ?!!!』


うん、嘘です。ツケにしようとして拒否されて、ちゃんと金を払わされていた。


ヘリコプターで来てたのも大分前。今はもう石油がないでしょ。


でも後で聞かれたら、「あくまでそう言う噂を聞いたってことです」と誤魔化すよ。


「何だとぉ……?!」


「お、俺達が汗水垂らして働いているのに、××党な連中は、温泉宿にいたのか?!」


「ヘリコプター?!石油はもうないんじゃなかったのかよ?!」


いきり立つ市民様。


そして……。


「もう我慢ならねえ!××党に問いただしに行くぞ!!!」


「「「「うおおおおっ!!!」」」」


大規模なデモ、いや、うち壊し?反乱?に発展。


めちゃくちゃな大騒ぎが始まった……。


温厚な日本人と言えども、江戸時代レベルの文明にいきなり戻されて、理性を保持できる奴なんてそう多くはないんだよなあ……。


日本人が礼儀正しくておとなしい理由、九割は「カネ持ってるから」だと思いまーす。




そんなことを、アメリカとドイツでも行う。


まあ、うん。


ヤバいレベルの大暴動に発展したよね。


でも俺達、事実しか言ってないよ?


怒られる謂れがないんだよ。


それぞれの国で、治安維持を頑張ってほしいね。

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