第56話 結婚
「「「え?マジで?」」」
「うむ……」
マジで?
ヴォルフが、ヴォルフが遂に!
「結婚するのか?!」
「うむ」
ヴォルフが、何かと仲が良かった後輩の女の子と結婚するらしい!
めでたいな!
「しかし……、この状況では、名目上……、ということになるだろう」
あー……。
そうか。
まあ仕方ないわなー、みたいな雰囲気。
と、そこに、シーマが言った。
「おい、ふざけるなよ貴様」
お?キレてるね。
怖ーい。
他人がキレる様を見てるのは面白いから止めないけど。
「惚れた女にウエディングドレスすら着せない気か?」
「しかし……、そんな余裕は……」
「黙れ。そういう腑抜けは唾棄すべき存在だろう。男なら、最低限の甲斐性を見せろ」
ヴォルフの襟首を掴むシーマ。
「そうだそうだー」「もっと言ってやれー」
ヤジを飛ばす俺とアーニー。
「あんたらもだよ」
「「え?」」
あっ飛び火した!
えー……。
と言う訳で、ヴォルフの結婚式と、ついでに俺の重婚結婚式、アーニーの結婚式も行われることになった。
周りに転移スキルバレるじゃん!と思ったが、よく考えればバレてもデメリットがないことに気がついた。
今までの地盤固めと、俺達自身のレベル上げ、スキル習得……。
何より、最近はやっと、貨幣経済が再開し始めたのもある。
外部からの冒険者達の流入、人の流れに付随する金とモノの流れ、国債や街の再建のための債券、様々な企業の新規発行株など、手に入れられる分だけ手に入り……。
このままだと、何もやらなくても左扇は間違いなしというレベルまで、甘い汁を吸える体制を作ってある……。
今後、この街で新たな産業が興ったとして、そいつらは必ず俺達チームクズの資本にお伺いを立てなくてはならない……って感じだろうか?
陰謀論とかで語られる謎の支配者階級みたいだな!ディープステート?だか、なんかそういう若干語感がカッコいい感じのやつ。
と言うか逆に、ここまでこの街の市販の流れの根幹的部分を抑えられているのであれば、真っ当に街の経済活動を推奨した方がいいやつだなこれ?
陰謀論だ!悪いことをして稼いでいるんだろう?!みたいな話を聞くが、金融関係を支配すると、逆に悪いことをやらずにみんなに儲けてもらう方が、我々も儲かるようになるんだよね。世界が滅んだりする方が大損害って感じ。
税金と一緒で、例えばだけど、お前が食べ物を買う時、その5%分の金はウチに入ってきますよ。宿に泊まる時の宿泊費の5%は……、武器の5%は……と、そんな調子で、誰かが何かをすればちょっとずつ俺達が儲かる訳。そういうスキームを作ってあるの。
なのでいっそのこと、盛大にやります。
ヴォルフ後輩にして花嫁たるフェイには、俺が権能の『輝くトラペゾヘドロン』で作った最高級ウエディングドレスを着てもらう。
輝くトラペゾヘドロンは、どんな物質にも変化する謎の黒い物質を召喚し操作する権能だ。
つまり、実質的に俺は無限の資源を持っているに等しい。
ヴォルフにも俺が作った最高のタキシードを着せてやる。
会場はヴァイスベルグの教会で、豪華な料理とウエディングケーキを用意して……。
リンゴーン、鐘を鳴らす。
泣きながら喜ぶヴォルフの母親。
ここ、ヴァイスベルグでは、ヴォルフとフェイの結婚式が行われていた。
当然のように、俺達、チームクズも出席。
披露宴会場でビュッフェスタイルで食料を提供。
それも、安物じゃなくって、俺の厳選素材で作った高級品ばかりだ。
酒も最高級品を集めてある。
当然、こんな高価なものをこのご時世にどうやって集めたのか?誰もが気になったが、俺達は黙して語らず、ただ、俺の好意で用意したということになっている。
どうやって?の部分の答えにはなってないが、俺の好意で用意したでゴリ押す。
ヴァイスベルグの人々も、久し振りに美味いものが山程食べられて大喜びだ。
ついでに、ヴォルフの母親に挨拶してくる俺達チームクズ。
「まあ……!ヴォルフのお友達?ヴォルフがいつもお世話になってます」
「「「ああ、いえいえ、こちらこそ……」」」
我々チームクズはクズではあるが、親友の母親に対しては普通に丁重に対応する。
流石に、友人の身内に対して威嚇してもメリットがない。
俺達は常識もマナーも知っているが、その上で、自分の邪魔になるならば常識もマナーもスルーできる人間だ。
俺達は自分が人間のクズだと知った上で割り切っている。
まあ、つまりは、やるときは躊躇わずにやるってことだな。
ヴォルフも身内には甘いが、やるときには躊躇いなく常識を捨てられるタイプだ。
だからこそ、このような崩壊した世界でも楽しく生きていられる訳だな。
さあ、ヴォルフの母親であるマリアンネさんに挨拶した後は、適当に騒ごう。
「ええ〜?僕も〜?」
アーニーも結婚した。
お相手は秘書のローラとか言う女だ。
アーニーの両親にも挨拶しておく。
ブーケトスもやる。
俺は日本で結婚式をする羽目に。
シーマ、揚羽、羚、昌巳、月兎との結婚式。
五回のケーキ入刀と五回のキスと五回のブーケトス。
なにこれ。
なにこれ?
「………………」
「「「お父さんお母さんありがとう!私、幸せになります!」」」
「たーくん大好き!」
シーマと馬鹿女四人の面倒をこれからも見なきゃならないのか……。
まあ良いや、切り替えていこう。
わざわざ作った天海街の教会で、身内を集めてパーティーをする。
もちろん、揚羽の親父、羚の親父、昌巳の親父にはぶん殴られた。
当然だな、娘が重婚だなんて。
甘んじて殴られるかと言ったら話は別で、全員にカウンター腹パンを入れておいた。義父を殴るとかヤバいんだが、俺はクズなのでそのあたりは気にしない。このご時世、強い方が正義なので……。
そして……、俺達、チームクズは全員、種族がもう人間ではなく超越者になっている。
歳をとらないのだ。
となると、嫁が先に死ぬのは確定。
しかし、俺の嫁も、ヴォルフの嫁も、アーニーの嫁も、「夫を残して死ぬのは嫌だ」と言い始めた。駄々をこねるな、ぶっ飛ばすぞ。
よって、嫌々ながらに俺が錬金術で不老不死の霊薬である『アムリタ』を作成。
嫁に配った。
すると、全員、喜んでこれを服用し、種族を不死者にした。
全員永遠に夫について行くつもりらしい。
一応、「ヒトの身で長生きし過ぎるとどのような影響が出るか?」の治験で知見が欲しかったのは確かだもんな。
もし何の問題もないのなら、こっそりと総理大臣に飲ませて永遠に総理をやらせるという荒技もあり得る。日本の現総理はまあまあ仕事できるので、このご時世に選挙という名の総理ガチャを下手にやられて、ウチへの法規制!とか始まったらダルいし……。
まあ、アレだな。
犬を飼ったと思っておこう。
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