第30話 サキュバスの勧誘
「赤龍イグニス召喚。イグニスは《疾風》を持つからこのターンに攻撃。五点持ってくぞ」
「青の魔導司書、三点防いで墓地行き。効果で二枚ドロー。ここで呪文ナザの鎖、このターンはそっちの方のユニットは攻撃行動ができない」
「チッ!あー、ターンエンド」
「僕のターン、ドローして……、ゼラの暗黒剣。龍城フィールドを破壊、そしてフィールドを魔戒都市へ。二枚伏せてターンエンド」
「スペルコントロールデッキ使う奴は心が醜い、相手をコントロールしたいと言う器の小ささがデッキに出てる」
「は?ミッドレンジは破壊力ばかりで雑な人間性が出てるからね?」
マジックザギビングやってる。
俺はデッキが色々あるが、一軍は中盤から強いドラゴンデッキ。スロースターターなところはあるが、破壊力抜群。
対するアーニーは魔法中心のコントロールデッキ。とことんうぜえ。手札破壊とかが多い。
「だがこれで死んでもらうぞ。バハムートだ!十点!同時に魔戒都市を破壊!」
「アァッ死ぬ!!!」
「バハムートの攻撃にチェーンして、ドラゴニックドライブを発動!攻撃力を一時的に倍にする!」
「死んだァーーー!!!」
「で?」
「いやー、そっちどう?」
「亜人?」
「亜人」
「亜人かあ、いるねぇ」
アーニーはコーラを飲んでゲップをして、話を続ける。
「街から車で三時間くらいの地点に、ケンタウロスの村があってね」
「ほう」
「いやあ、顔は可愛いんだけど下半身が馬だからどうもね……」
そうだろうか?
割とその辺はどうとでもなりそうだが。
「いや行けるだろ」
「無理だって、実際馬の尻で勃つかって言ったら無理でしょ」
「ケンタウロスの美女なら」
「えぇ?嘘ー?行けるー?」
「まあでも実際に尻を向けられた時勃つかは分からん。今度試すわ」
「やってみてよ、感想が聞きたい」
「でもハーピィとかは行けそうじゃね?」
「あー、ハーピィは行けるね」
「あ、てか、宗教的にはどうなん?」
「んー、まあ、デーモンだったらヤバイだろうけど獣人は許されてるよ。中にはケモナーもいてさ、ケモナーの人達が合コンしてた」
「アメリカってケモナー多いよな」
「いやあそれは偏見だって。アメリカは世界で一番多様性に富む国だから色んな人がいるってだけでしょ。それを言ったら日本人だってHENTAIでしょ」
「それは否定しねーけど。でもデーモンも一回抱いてみたくない?」
「分かる。サキュバスは本当にヤバかったからね、あれは最高だ」
この前、アーニーとサキュバスのいる地域に突撃してヤってきた。楽しかったです。
「じゃあ俺今度ハーピィと獣人抱いてくるわ」
「機人は……、そもそも穴が無さそうだし、魚人……、行けるかな?」
「顔だけ見てりゃ勃つんじゃねえかな?」
「んー、でもヌメヌメで気持ち良さそうなのはある」
「分かる」
男同士だと、どんなに学を積もうが、基本的には下世話な話になる気がするな。
て言うかなー、友人と顔を合わせて仕事の話ってのは違うよな。友人ならば、まあ、どこの風俗が良かったとか、新しいバイクを買ったとか、そう言う話をしなきゃよぉ。
あー、まあ、そんな感じで、アメリカにも亜人は出現しているらしい。
と言っても、大倉教授は、先日のリザードマンへの取材後、資料をまとめたいと研究室に篭っている。
しかしまあ、既に大学は無く、研究も仕事ではなく趣味でやっているようだが。
今、大倉教授は、教師として最低限の仕事と、農業手伝いをやって暮らしているようだ。
しかし、研究結果が認められて、国からの補助が出るかもしれない、なんて話も出てきているが……。
俺の見た限りじゃ、なんだかんだ言って野党に妨害されてなかったことになるだろうな、と考えている。
もちろん、「政変」とかあればこの限りではないだろうがね。
ふむ……、にしても、俺は割といける口だが、他の人もいけるのだろうか?
つまり、人外との性行為だ。
まあね、ぶっちゃけた話。
天海街に性風俗を作りたい。
本来なら、俺が出しゃばる話じゃないんだが……、これには理由がある。
ここが、限られた人数のコミュニティで、尚且つ、世界的に極限状況である、ということ。
となると、カップルもそれなりにできるし、再婚した人とかも多い。
人間という種が減少している、と言う事実に対して、積極的に子供を増やそうという種族全体の本能が働いている、のかもしれない。
だからなのか、このクソ忙しい中でも、皆やることはやっているらしく、「妊娠しましたー」みたいな報告を結構聞く。
コンドームの在庫だって有限(実際は増やせるが、増やせることを悟られたくない)だから、その辺も気にしなきゃならない。
街の運営とかはどうでも良いが、風紀の乱れにより女子学生が外を出歩けない……、なんてなったら、俺の喫茶店が寂しくなっちゃうだろ。
レイプ多発、とかなったら困る。とても困る。
俺は人間社会の良いところだけを、上澄だけを摂取したいのだ。治安維持とか産業保全とかそういうめんどくさい細かな実務は他人に安い金でやらせて、「平和で暖かな日本の小町」の気持ちのいいところだけチューチュー味わいたい。
その為には、資本の供出もやぶさかじゃあないんだ。
となると……。
「天海街に風俗店を作ろう」
となる、訳だな。
取り敢えず……、中国へ転移。
中国の田舎町。そこに、低レベルのダンジョンが。
ここは、サキュバスの集落だ。
サキュバス……。
美しい人間の女の姿で、コウモリの羽と尖った黒く細い尻尾、水着のような薄着の服を着た亜人。
人間の女という範囲の中では、自在に体格や顔、服装を変幻する変幻魔法(中級)を使いこなす。
下級スキル「エナジードレイン」を所持しており、他種生命体のエネルギーを吸収できる他、精液からもエネルギーを得られる。
また、幻惑魔法も得意な傾向にある。
その分、身体能力は人間の女性並だが。
サキュバスの男性版のインキュバスも存在するが、ここにはいないようだ。
さて、ここに訪ねる。
「すいませーん」
「はーい?」
「あら!」
「男!」
男!の一言を聞きつけたサキュバス達……、総勢で五十人くらいか?
集まって、俺を見つめる。
「うーん、貴方はこうでしょ?」
姿を変えるサキュバスは、ちょうど俺が好きな女子高生くらいの姿に化けた。
「グッド!……ってそうじゃなく、交渉がしたい」
「交渉?」
サキュバスは首を傾げる。
動作の一つ一つがあざとく、男ウケする感じだ。
俺の目から見ても、可愛い。
「ここの長は誰だ?」
「一応……、そうね、多分、アーシェが一番しっかり者だと思うわ」
「ではそいつを呼んでくれ」
「呼んでくるけどぉ、それより、私と良いことしましょう?」
「いや、この話がうまく行けば、お前らを男が沢山いる街へ案内できる。少し我慢してくれ」
「本当?!なら、すぐに呼んでくるわ!」
中国の田舎町の廃村にて。
ボロボロの家屋の中に案内された。
「こんにちは、人間さん。私はアーシェ、サキュバスよ」
アーシェ。
サキュバス族のここの集落のリーダーらしい。
艶のあるピンク色の長髪、優しげな瞳、豊満な胸と尻、ムチっとしたセクシーな足。銀幕女優のような華やかさよりも、ポルノ女優のような淫猥な印象を受ける。
俺も、仕事を抜きにしたら抱きたいくらいだ。
「こんにちは、サキュバス。俺は義辰、近くの国にある天海街の、喫茶店のマスターだ」
「茶屋の店長が何の用かしら?」
「天海街には合計で四千人の人間がいる。その約半分は男で、性欲が有り余る若者も多い」
「あら、素敵ね、美味しそう」
「そこで提案だ。お前達全員、天海街へ来ないか?兵士に街の安全は守らせるし、住居も用意する。近くにダンジョンもあるから、精液だけでエネルギーが足りない場合、近場のダンジョンのモンスターからエナジードレインしてきて良い」
「ふうん……」
アーシェは俺に近付いてきた。
「破格の条件ね。若い男から精液をもらえて、街に入れてもらえて、安全も保証してもらえる……。本当かしら?」
「疑うのも無理はないだろう。しかし、聞いてくれ、こういう背景かあるんだ」
俺は語り始める。
「まず、俺の国は、一億を超える人口がいて、栄えていた。当然、身売りをする女もいて、猥本も多く出回り、強姦などの事件の発生率は極めて低い国だった」
「それで?」
「しかし、ある日急に、世界中にダンジョンが現れ、モンスターが溢れて、殆どの人間を殺したんだ」
「そうらしいわね」
「だから、今、俺の国の国民は、生きていくだけでいっぱいいっぱいなんだよ。色街もなくなったし、売春宿もない。皆、色々と溜まっている訳だ」
「成る程……、それなら納得できるわ。なくなった色街の代わりに、男達を癒せって言うのね?」
「そうだ。ああ、だから、死ぬまで犯したりはしてはならないぞ」
「ええ、分かってるわ。でも、私達は亜人よ?受け入れられるのかしら?」
「日本人はそう言うの割と寛容だし……、そもそもうちの街にはワーウルフと結婚した男もいるぞ」
「移動はどうするの?」
「これは誰にも言わないで欲しいんだが、俺には転移系のスキルがある」
「そう……、うん、それじゃあ、試しに行ってみようかしら。もしも駄目だったら、ここへ帰してくれるかしら?」
「良いだろう」
………………
…………
……
さて……、これで天海街の性風俗は充実した。
確かに、最初は警戒されてもいたが、やがてすぐに受け入れられた。
サキュバス自体、別に邪悪な種族ではないからだ。
色々な意味で鍛えられている天海街の住人は、「まあ、そんなこともあるか」と言ったように受け入れた。
モンスターがいる、ワーウルフがいる、リザードマンがいる。
なら、サキュバスがいてもおかしくはないだろう、と。
そう言うことになった。
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