第18話 口先で騙す
さて、それで、取り敢えず、日本全国に輸出する武器のチェックをしろと呼び出された訳だが。
もちろん、そんなものに俺が顔を出す訳はない。
お断りだ。
「よーしーたーつーさーーーん!!!」
「うるせえ」
騒ぐな揚羽。
お前は制服か給仕服でくるりと回ってスカートがたなびく姿を見せてりゃ良いんだよ。屈んで強調された谷間とかチラッと見える太ももとかを俺に見せて仄かな女の子の香りを振りまいてろ。
そんでたまにパンチラしろ。ついでにそろそろ夏だから水着も見せろ。水着はビキニな。
「何で行かないんですか?!」
「俺の仕事じゃない」
俺は喫茶店のマスターであり、鍛治屋でもなければましてやこの街の責任者でもない。
「義辰さんは天海街のリーダーなんですから!」
「違うね、役人はどうした?」
「役人さんなんて真っ先に逃げちゃいましたよ!」
「へえ、間抜けなんだな、ここにいれば、少なくとも外に行くよりはいくらかマシなのに」
「それは……、たまたま逃げることを選んだだけで、間抜けとかではないと思いますけど」
「いいや、間抜けだね。ビジネスマンとして言わせてもらうが、どんな場面でもチャンスを掴めない奴は間抜けだ。勘が鈍い奴は馬鹿ってことさ」
その上で、運も実力のうちだしな。
さて、コーヒーを淹れるか。
今日も楽しい喫茶店経営ー。
美少女歓迎。
麗しき女学生達が美味しいコーヒーを飲みに毎日来てくれる。
私服なのは残念だが……、私服ならではの短いスカートやお尻の形がくっきり見えるズボンは素晴らしい。
最近では、作りが簡単な浴衣やワンピース、チュニックなどが多く見られるな。
街の人々が浴衣で歩き回るのは涼しげで良いんじゃないだろうか。
しかし、ゆったりした服は露出が少なくボディラインもよく見えないのでそこは残念だ。これはこれで良いという意見もあるが。
まあ、俺はシャツとエプロンだが。
「って、そうじゃなくって、輸出する武具のチェックですよ、義辰さん!」
「知らん」
「義辰さんがチェックしてくれないと出荷できません!」
「知らん、勝手にしろ」
俺はイタリア書院のエロ小説を開く。ふむ、生徒会長を性奴隷に……?素晴らしい、理想的な展開だ。性奴会長とはよく言ったものだな。
こう言った風紀を守らんとする存在を汚すのは中々に刺激的だ。神聖であるからこそ自分だけのものにしたいと思うような……、男にはそう言う感情がある。
む、挿絵も良いな。今の絵師と呼ばれる人々は中々にレベルが高い。
アニメなどを見るとそれが顕著だろう。今の二次元アニメ風のキャラは精巧な出来だ。
「義辰さん!」
俺の手元の本を無理矢理閉じる揚羽。なんだテメーは犯すぞ。もうむしろお前を性奴隷にするぞ。
いや……、性奴隷にしたら一生養うことになるのか。性欲処理以外ができない女を一生飼うのはブルジョワのやることだな。まあ、今の俺ならできないこともないが、どうせなら生産性がある女の方が良いと思わないか?
仮に十年二十年経った時を想像して、セックス以外に取り柄がない女が隣にいるというのは嫌じゃないか?少なくとも俺は嫌だね。
飽きたら捨てると言う手もあるが……。
さて……。
「分かった分かった、行ってくるから店番を頼めるか?」
「はい!」
俺は懐のアメスピに火を点け、文庫本を仕舞って外へ。
まあ、もちろん大人しく仕事をする訳はない。
何故俺が小娘の命令に従わなくてはならない?
俺は当然のように無視して館へ帰った。
ガソリン発電機で電気は確保されている。
それを使って俺はテレビとプレーステーション4を点ける。
今日はスーパーなロボットが大いに戦うゲームをやるか。
ロボットが大いに戦うゲームは四週くらいしないと全ストーリーが見れないからな。
さて、主人公機とスーパーなロボットを強化して……。
「良い大人がビデオゲームか?」
「うるせえぞシーマ。ビデオゲームを差別するな、ゲームは人の心を豊かにする素晴らしいものだ」
「差別などしないが」
じゃあ黙ってろ。
俺は巧みにスーパーなロボットを操り、必殺技で敵のボスを破壊した。
「ああ、やはり良いな、スーパーなロボットは。ロマンがある」
「この手のゲームは横で見ていても面白くない、ゾンビゲーをやれ」
「あー?レジデントでイービルなゲームの2のリメイクでもやるか、まだ手をつけてないんだよな」
俺はシーマと二人でテレビゲームをして遊んだ。
「よーしーたーつーさーーーん!!!!」
「違うだろ馬鹿。朝は、おはようございます義辰さん、今日もハンサムですね、だろ」
「ハンサムですけど!そうじゃなくって!」
うるさい女だな。まあ、基本的に女とは喧しいものだ、許容しよう。
「それで、なんの話だ?覆面ライダーの話か?俺の世代ではやっぱりブラックが……」
「仕事の話です!」
「仕事?ハッ、そんなつまらない話がしたいのか?いくつになっても、ライオンとトラどっちが強いかとか、お尻とおっぱいのどっちが魅力的かとか、そう言う馬鹿な話で盛り上がれる友達が大切だと思わねえか?大人ってのはいつもそうだ、やれ結婚だ年収だとか……、そんな話どうでも良いじゃねえか。人間は仕事をする為に生まれてきたのか?違うだろ、限りある人生を楽しむ為に生まれてきたはずだ、そうだろ?」
「はえ?は、はあ?」
「揚羽よぉ、お前もそんな素晴らしい友人の一人だと俺は認識しているんだがな?そんな友人の口から仕事だなんだとつまらない話が飛び出てくるとなると俺はショックだね。そんなことより好きなプイキュアの話をしないか?俺は何と言っても初代だねもう十年以上前だが、あれは名作だった」
「そ、そうじゃなくって」
「ああ、それなら歴史の話か?もし織田信長が天下統一を成し遂げていたら?なんて話はどうだ?ベタな話題だが誰でも考えると思う。果たして織田幕府になったとして上手くいくのだろうか、とな」
「えっと、そうですね?」
上手く揚羽を丸め込んだ俺は、そのまま適当な雑談を続ける。
そして。
「おや、もうこんな時間だ。続きは明日話そう、それじゃ」
「はい!義辰さん、さよなら!」
切り抜けた、と。
次の日。
「よーしーたーつーさーーーん!!!!」
またかよ。
さて、今日も適当に言いくるめるか。
正直言って、海外の有名大学でプログラミングとを学び、MBAを持ち、会社経営の経験もある俺と、一般的な日本の高校生である揚羽とでは、知識や知能のレベルが違う。
言っておくが俺は、自社をNASDAQに上場させたくらいにはやり手だぞ?大学時代、十九の頃には初めてのスタートアップを立ち上げて、シードラウンドに某有名ベンチャーキャピタルから百万ドルの資金を調達してなあ……。
ま、俺からすれば揚羽程度の女ならいくらでも口先で騙せるのだ。
そんなこんなで一週間騙し続けた。
一週間後。
「義辰さん、おはようございます」
「ああ、おはよう」
揚羽は笑顔で挨拶をした。
俺も微笑み返してやる。
「さて、今日は暇か?暇なら店を手伝っていけよ。例えお前にどんなスキルがあろうと、うちの店員であることには変わりないんだからな」
「はい!」
そして、普通に店を手伝う揚羽。
ちょこちょこ動く揚羽の形の良い尻を見つめていたところ、一日が終わっていた。今日も有意義に過ごすことができたな。素晴らしい。
「……義辰さん」
終業後に真剣そうな顔で話を切り出す揚羽。
「あの、ですね。天海街での武器製造はある程度形になって、ちゃんと輸出できました」
「そうか。俺には関係のない話だ」
「……天海街で作られる武器は、これからの日本を支えていく重要な産業の一つになるそうです」
「そうか、で?」
「義辰さんは、手伝わなくて良いんですか?日本の危機なんですよ?」
「そうだな、日本が駄目になればアメリカやドイツ、ロシアに亡命しよう。伝手があるし、言葉も話せる」
「……日本が、どうなっても良いんですか?」
「特にこだわりはないな。平穏に暮らしていけるならどこでも良い」
「酷いです、そんな……」
んー。
「何か勘違いしているんじゃないか、揚羽?滅ぶ時は滅ぶべくして滅ぶんだよ。ローマもアテナイもスパルタも強大な国だったが、諸々の事情で滅亡しただろ?日本だって滅ぶ日が来る、それがたまたまお前の生きている時に来たと言うだけの話なんじゃないのか?」
「で、でも、自分の国なのに」
「そうだな、しかし、滅びるものは滅びる。仮に天海街が全力で日本を支援したとして、それは国として正しい形なのか?どこか一箇所だけに負担を強いるのはおかしいだろう?」
「それはっ!そう、ですけど」
「天海街でやれることはしっかりやっているだろう?俺一人が頑張って日本を支えるのはおかしい、健全じゃないんだよ。国とは共同体だ、誰か一人ではなく、みんながお互いに補い合って頑張っていくものじゃないのか?」
「は、はい、その通りです」
「つまり、俺一人が頑張るのはおかしい訳だ。俺は十分に働いている、違うか?」
「ち、違いません」
「よし、じゃあ今日はもう帰って休め、余計なことは考えなくて良い、お前も頑張り過ぎだ。日本の行く末は大人に任せろ、良いな?」
「は、はい」
よし、言いくるめた。
いやー、女はちょっと馬鹿なくらいが一番可愛いもんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます