Vanitas vanitatum

目蛾遺体

第1話アスモデウス

アスモデウス

「蒸気機関車は便利なものだね、ソフィー」

「……」

「風も心地いい、田舎とはいいのもだね、ソフィー」

「うっせぇな」

「おいおい、ソフィーそんな酷いことを言わないでくれ」

 蒸気機関車の窓を開けて、外を見る。

「そろそろ着くぞ」

「ん……」

 俺達は依頼人へ会うため、このガンラヴィス村に来た、ここらの村では悪魔が凶暴化しているらしい、どうせまた悪魔退治の依頼だろう。

 

「ソフィー見ろトウモロコシ畑だ」

「……」

「なぁソフィー、今日は何でそんなに不機嫌なんだい?」

「不機嫌じゃねぇよ、こっちは2日も寝れてねぇんだよ」

「ヴァンパイア退治の時に噛まれた傷かい?」

「そうだよ、あいつら牙に毒塗ってやがったんだ」

「だから言ったろ、沙夜に治して貰えって」

「うっせ、治してくる……」

「ダメだ、死なないからって自害して治そうとするな」

「ちっ」

「とりあえず、今回の依頼が終わるまで待ってくれ」

 ソフィーの能力の内の一つ不死、この世で12個しかない最上位能力の中の一つでもある。俺の能力は細いものを操る能力、一般的に雑魚能力と言われる類の能力だ。

 

「あ、あの!ヴァニタスの方々ですか?」

「あぁそうだ、私はギルドこっちのはソフィー」

「可愛い……」

「……」

「すまないね、こいつは照れ屋なんだ」

「余計なこと言ってんじゃねぇ」

 挨拶を交わし、家へ案内された。

依頼人の名前はジェイド、15歳で姉と二人暮しらしい。

「まず何があったのか教えてくれるかい?」

「はい、姉は昔から誰にでも優しく純粋だったんですが、最近突如男の人を家に連れ込んで不純な行為に励んでいて、話しかけても無視されるし」

「バカらしい……」

「こら、そんな事言ってはいけないだろ?ソフィー、それはお姉さんが変わっただけじゃないのか?」

「僕も最初は、姉もそんな年頃だと思っていたんです!でも明らかにおかしいんです!とにかく調査していただけませんか!」

「あぁ分かった、だがこれで何も無かったら、諦めるんだ」

依頼人の話を聞き、その場を後にした。

「ソフィー、どう思う?」

「姉の心変わり、もしくは悪魔、まぁ悪魔と言っても色欲のだろうな」

「サキュバスとかか?」

「多分な」

 俺たちは、村の人達に話しを聞いた。

「村のちょいと離れた所に洞窟があるんだけど、あそこから悪魔が出てきてるらしいわ」

運良く1回でそれらしい情報を入手出来たようだ。

「ありがとうございます」

「よし、ソフィー行ってみるか」

「お前、その状態で悪魔と戦うのか?」

「こっちの方が身軽でいいだろ?」

「どうだかな」

 

ソフィーと一緒に洞窟へ向かう。

ある程度洞窟を見回って見た、そこにあったのは石版だ、俺にはなんて書いているのか分から無かった。

「おいギルドここを出るぞ、それとよる沙夜さやに来るように連絡しろ」

「まぁいいが、なぜだ?」

「石版にはアスモデウスと書かれてた」

「アスモデウスだと?最上級の悪魔じゃないか」

「こいつと戦う時は、夜と沙夜がいた方が楽になる」

「あぁ、分かっている」

俺達は洞窟出て直ぐに村に向かった。

「村の皆さん!洞窟には最上級の悪魔の石版がありました、退治するのでここの村に結界を張ります、絶対に家の外に出ないように」

結界を張るというのは実にめんどくさいものだ、構築魔法もある程度いるし、もっと硬い結界を張ろうと思ったらヴァニタスの許可がいるのだが、俺には能力がある、細い物を結界と混ぜ合わせ、より硬度な結界を張れる。

「ソフィー夜達が来る、迎えに行こう」

「ん」

 

蒸気機関車の音がする。

「来たか…」

「そのようだねソフィー」

 夜たちに会いに駅まで出向いた、そこにはやたら高身長の男に、女性にしては身長の高い女がいる。

「ソフィー!会いたかったよ!」

「やめろ!くっつくな沙夜!」

「姉さんにハグして貰ってるんだぞ!我慢しろ」

「まぁまぁ君たち落ち着いてくれ」

「報告した通り何だが相手はアスモデウスだ、いくら悪魔専門の夜達だって舐めては行けないよ」

「了解しました」

「姉さんは依頼者とソフィー待っていてくれ」

「はぁ!なんでだよ!私も行かせろ!」

「ギルドさんが姉さんを襲うかもだろ」

「そんな事する訳無いだろ、夜」

「ま、という事なんで待っていてくれソフィー」

「ちっ仕方ねぇな」

俺と夜はアスモデウスの石版のある洞窟まで向かった。

道中、夜に話しかけられた。

「ギルドさんと傀儡女はどういう関係なんですか?」

「傀儡女って、ソフィーの事?」

「ギルドさんの前だと大人しいし、ギルドさんの能力のイメージが糸でして、まるで操られてる見たいなので」

「育ての親見たいなものかな?ソフィーと出会ったのが10年前だったからねぇ育ての親ってより兄妹?」

「ギルドさんと傀儡女は何歳なんですか?」

「私が26歳でソフィーは16歳だよ」

「傀儡女そんなに若かったんですか?!」

「そうだよ、見えないだろ?歳の割に大人びているからね、口の悪さはそのままだけど…」

「夜は19歳だったよね?」

「はい、姉さんは22歳です」

「若いねぇ」

「ギルドさんも若いですよ」

「ありがとね、さてもう着いた様だ」

「はい、行きましょう」

石版は破壊すればアスモデウスが出てくるらしい、早速俺は農家の婆さんから貰ったハンマーでぶっ叩いた。

すると、地面に魔法陣が生成され、無駄にかっこいい炎を出しながら、アスモデウスが出てきた。

「フハハハ久しぶりの外だ」

 アスモデウスがこちらを見て「準備運動にまずはお前らからだ!」とテンプレの様なセリフを吐きながら、炎を放ってきた。

「おっと」

「大丈夫ですか?ギルドさん」

「余裕かな」

 アスモデウスが再び炎を出す。

「ギルドさん、さっさと倒してもいいですか?」

「出来るならそうしてくれ」

 夜は余裕の表情で炎を躱し、アスモデウスに接近した。

「よいしょっと」

 夜がナイフで一刺し。

「ガハァ!」

 あまりにも呆気なかった、アスモデウスは最上級の悪魔なはずなのだが……これは夜が強すぎた。

「終わりましたギルドさん、帰りましょう」

「あ、うん、そうだね」

 依頼者の元に戻り、姉が変わった理由はアスモデウスの性だと説明した。

「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

 ジェイドが泣きながら姉を抱いた。

 「お姉さんはもうすぐ目を覚ますはずだ、それまで君が傍に居て守ってあげてくれ」

「では、私達はここら辺でおいとまさせていただこう」


蒸気機関車で夜たちとヴァニタスに帰ることになった。

「と言うか、ソフィー顔色が良くなったが治してもらったのか?」

「ん、そうだけど」

「ありがとうは言ったのか?」

「言ったよ」

「私からとありがとう沙夜」

「いえいえ、大丈夫よ」

「流石姉さんだ」

 とソフィーを治してくれたお礼を言った。

 その間にソフィーは眠ってしまった、相当疲れていたんだろう。

 

 

 

 



 

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