第6話-2

追憶の焦点

第2章 陰謀の影


3.次なる展開


 今回の一連の事件には情報漏洩の恐れがあり、内通者がいるのではないかと、新室は独自で推測していた。ただ、小説や映画のように身内が黒幕だというは勘弁してほしいと切に願い、彼は藍井や仲間を疑ったことを心の中で詫びた。

 

 職業柄仕方がないことで、公安警察の業務は人間不信や疑心暗鬼に陥りやすかった。誰を信じていいか分からず、肉体的精神的に追い詰められる職業であった。

 新室も現役だった当時、裏切ったことも裏切られたこともあった。仕事のために仕方がない苦い経験だった。ただ、彼には思いだしたくない過去が他にもあり…


 その一方で、また一つ重大な事件が展開されようとしていた。新室はまた厄介ごとに巻き込まれそうだ。


 都内某所ホテル

 起床時間、モナクライナ皇族の侍女はミーシャを起こそうと、彼女の宿泊部屋へと訪れたが、異変に気づいた。ベッドはもぬけの殻で、部屋中捜しても何処にもいなかった。ホテル側に捜索を協力してもらったが、ミーシャは既に、別の場所に移動していた。


「ここまでお願いします」

 ミーシャは変装のつもりか、サングラスと帽子で小さい顔を隠して、カジュアルな服装でタクシーに乗り込んだ。彼女は僅かながら日本通貨を所持していた。

 ミーシャは流暢な日本語を話し、目的地の内容が記された紙きれをタクシー運転手に渡した。

 同じ頃、新室は藍井の連絡が入るまで自宅待機していたが、暇を持て余していた。彼はぼけっとテレビを観ていたが…


「………」

 新室は自宅のテレビに映っているミーシャの顔を見て、ふと何かを思い出した。そして…


 新室は思い立って外出した。彼には行く当てがあり、過去が大きく関わっていた。


 場所は変わり、都内某所に位置するモナクライナ大使館。大使館の執務室には大使の他に男の存在があり…

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