第2話-2

追憶の焦点

第1章 現場復帰


2.皇族来日


 場所は変わり、東京都内某所。そこは下町で、日本の良き時代の雰囲気が色濃く残っていた。

 商店街では店員の威勢の良い声が飛び交い、主婦は財布の中身を気にしながら買い物をしている。学生は学校帰りに繁華街に寄り道、カラオケやゲームセンターで時間を潰し、子供は行きつけの駄菓子屋で馬鹿騒ぎしている。ママ友は駅前の喫茶店にたまってティータイムを楽しんでいた。

 いつもと変わらない平和な日常が描かれているが、そんな環境と合致していない人物が一人いた。


「ふん、失礼な話だ」

 新室は語り手わたしの余計な一言で機嫌を損ねた。彼は下町の住宅街、築四十年近くのアパートに住んでいた。そこは少し変わった建築構造で、二階建て木造建築で、一階は喫茶店になっており、経営者の夫婦が住んでいた。

 二階は一般の住居スペースで二室あり。そのうち一室の住人は新室で、もう一室は住人がころころ変わり、現在は空き室であった。


 新室は朝早く起きて、ジョギングをしながら外の光を浴びていた。帰宅後、彼は軽くシャワーを浴びて、下階の喫茶店に顔を出した。


「よう、マスター元気?」

「………」

 喫茶店の店主は強面で不愛想、新室が挨拶しても表情一つ変えなかった。それに比べて…


「いらっしゃい、いつもので良いの?」

 喫茶店の接客担当〝未希みき〟は美人女性だった。彼女目当てで来店する常連客は多く、店主マスターが淹れるコーヒー、サンドイッチは絶品だった。店が繁盛している理由が把握できる。


 新室はカウンターの特等席に座り、店自慢のコーヒーを口に含みながら、朝刊に目を通そうとするのだが…

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