第1話-2

追憶の焦点

第1章 現場復帰


1.還ってきた伝説


 都内某所のバー

 新室が来店すると、カウンターに一人の細身の男性が座っていた。


「悪いな、急に呼び出して…」

「本当に久しぶりだな、仕事は?」

「偉くなると現場に行かなくて済むからな、楽になったよ」

 新室は、細身の男性と顔見知りの仲であった。


「バーボンを…」

 新室は注文した後、細身の男性の話を聞こうとした。彼の名は藍井 一生あおい いっせい。彼は公安警察に属していた。

「お前が辞めて、どれくらい経つかな?」

「さあな、大昔のように思えてくる」

「何故、辞めた?」

「特に理由は…長く続けられる仕事でもないだろう」

 新室はかつて、公安警察の警察官であった。元同僚の二人は久々に再会して、酒を酌み交わすが…


「お前の写真展に行ってきた、あんな才能があったとはな…」

「ふん、そろそろ本題に入ったらどうだ?雑談するために呼んだわけじゃないだろう」

 新室は藍井の前で見透かす表情を浮かべた。

「おっしゃる通り、頼みたいことがある…」

 藍井は厳粛シリアスな顔で新室に話し掛けた。


「…嫌な予感しかしないな、来なければよかった」

「まあ、そう言うなよ、奢るからさ~」

 新室は頬杖をついて、仕方なく藍井の話に耳を傾けた。藍井は上着の胸内ポケットから一枚の写真を取り出して…

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