王様「バカには見えない服?」

黒墨須藤

裸の王様

むかしむかし、あるところに一人の王様がおりました。


ある日、仕立て屋を名乗る二人の男が国を訪れました。

二人は大層珍しい布を使って、素晴らしい服を仕立てると吹聴し、その噂は王様の耳にも入りました。

王様は早速この二人に服を仕立てさせることにしました。


二人は「今回使う布を使った服は、バカには見えない服」と言いました。

王様は「城内のバカをあぶり出すにはうってつけだ」とさらに興味がわきました。

二人は早速手付金を拝領すると、服を作り始めました。


さて完成が気になる王様は、二人の元に国の大臣を遣りました。

大臣は二人の元へ赴くと、作業の進捗を確認しました。

しかし機織りや裁縫をしているように見えますが、肝心の布や服が見えないのです。


「バカには見えない服」と聞いていた大臣は、自分がバカだから布や服が見えないのではないか?と恐ろしくなりました。


王様の元に戻り、様子を聞かれた大臣は「あれほど素晴らしい服は見たことがありません」と応えてしまいました。

また他に遣った召使いたちも、口を揃えて「見たことがない服だ、なんと素晴らしい」と言うのです。


仕立て屋は作っている服に必要だ、と言って高価な宝飾を要求しました。

大臣や召使いはそれを了承し、届けました。


そしていよいよ服が完成した、と王様の元に届けられたのです。

大臣はやはり素晴らしい服、この上ない色合いだと褒め、召使いもこのような服は見たことがない、と褒めました。


その様子を見ていた王様は、

「ははは!そんなとんちで騙せると思ったお前たちはバカか?」

と二人の仕立て屋と大臣、召使いもその場で処刑してしまいました。


おしまい。

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