ほくろ
painyrain
第1話 ほくろ
子供の頃のあだなは、“ほくろおばけ”。
鏡をみながらつくづく思う。「ほんと。ほくろのお化けみたい」
右の目の横にある大きく、膨らんだホクロ。ご丁寧に産毛まで生えてる。ときどき1本。真っ白な毛が伸びてくるのもイヤだった。
鏡に映ったほくろを指先でつんつんとつついていたが、ふと彼の顔を思い浮べた。
「こんなホクロとってしまおう。」彼の視線が時々ほくろにくることがある。それがとっても恥ずかしくていやだなとおもう。
「見た目も悪いもん。」
ネットでホクロ治療をしてくれる病院を探し、診察の申し込みをした。
窓口では明るいお姉さんが応対をしてくれ、先生はおもったより若い。ほくろをとりたいというと、ちょっとした診察の後、早速取りましょうと言うことになった。
いざ!ほくろよさらばというしゅんかん・・・急にあたりが暗くなった。
「どうしたんだ?」
「先生、停電のようです」
「停電?」
「周りはついているようなんですが・・・」
「あ、しまった電気代支払ってないよ」
手鏡を手にホクロを眺めている。やっぱりとりたい。ほくろを取ろうと何件病院を巡っただろう。1件目は電気代滞納で治療ができなくて、次は税務署の査察がきたとかで大騒ぎになって、それから先生が怪我したところが2件、病気になったところ、突然閉鎖した病院などなど、結局ほくろはとってもらえなかった。
鏡の中のほくろは、「俺と別れるなんて無理、無理」といばっているように思えて憎たらしい。ほくろを爪先でぐいとおすと、ぶにっという感覚が爪先に伝わってくる。
えいえいとつつくと、ぽろっ。取れた。後には大穴が開いている。掌に載せたホクロはまん丸でぶにぶにとしている。
それまでバラエティが流れていたテレビから緊急ニュースが流れ始めた。地球の半分に大きな穴があいたと訴えていた。
掌のホクロと、鏡に映った大穴を見つめ「まさかね」とおもいながら、ホクロを穴にもどす。テレビのアナウンサーが絶叫している「なんということでしょう。穴が突然なくなりました。」「へー・・・」ほくろをとってみる。「穴が出現しました!」
面白くなって、ほくろをなんども、もどしたり、はずしたりしていた。
「あっ」ほくろが転がり落ちてしまった。慌てて受止めようとして、ほくろは掌の中でぱちんと割れた。同時にテレビはぷつんと切れ、窓の外には闇が広がっていた。
ほくろ painyrain @painyrain
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