やりこみシューター、STGのように変身した仲間の獣人達を乗りこなし異世界で無双する

保戸火喰

第1話 異世界転生

「おめでとう、ハイスコア更新だ」

「ありがとうございます」


ここは都内某所、ゲームセンターの一角。置かれているシューティングゲーム(以降STG)をプレイして最高得点を更新した。俺、杉田進(スギタ シン)は子供の頃シューティングゲームの面白さに目覚め、高校生くらいからシューター達が集うゲームセンターに通うようになった。あれから5年、様々なSTGを遊び、ついに夢だったゲームの最高得点に手が届いた。


「まさか今の時代に抜かれるとはな。はは、俺もやる気が出てきた」


現在STGは下火、それどころか新作STGは滅多に作られない状態。正直絶滅寸前まで来ている。ゲームセンターもかなりの数が潰れてしまった。まあ皮肉にもそのおかげで達人クラスの濃い人達が一部に集中しゲームの攻略を教わりやすくなっていた。仲の良い人達に挨拶してこの日は気分よく帰宅。夕飯を食べ湯船につかり鼻歌を歌いながら上機嫌になり顔を上げ、点数を思い出して笑みがこぼれる。それと同時に残念という気持ちもこみ上げてきた。


「もう少し早く生まれていれば」


たまに思う、全国の猛者達と戦ってみたかったと。出来ることならSTGが復興するといいんだけどね。無理かな? STG界の将来を憂いながらも夢を叶えた強い達成感を身に受けながら眠りにつく。


(‥‥もう朝かな)


目が覚める。目を開けるが周りは暗い。まだ夜のようだ。あれ、呼吸をしてないような。そんなことあるわけ。寝ぼけていると遠くから声が聞こえてきた。


「がんばれ、もう少しだ!」

「んんー!」


誰の声だろう。ランニングしている人達の声かな。よくわからない状況に困惑していると、急に押し出され、人の手により引っ張り出されるような感覚を覚える。呼吸をするとオギャーという声が出た。


「男の子だね」

「よくやった! 名前は決めてある、今日からお前はシンだ!」


どうやら俺は生まれたようだった。産んだ女性に抱かれる俺。嬉しそうにしている男性、旦那さんかな、それと産婆さん。ああこれって。状況を理解した。まさか俺の身に起こるとはな。それからあっという間に十二年の月日が流れる。弟も生まれ、家族は四人。生まれ育ったこの街は王都グアナタ。親は道具屋を営んでおり、俺はその手伝いをしている。だいたい想像していた異世界ではあったが一つだけ大きく違うところがあった。ポーション等の万能な回復手段がないこと。回復魔法もない。戦闘はより慎重にしなくてはならない。


「能力者の儀を受けるのは今年だったな。約束通り能力がなければ道具屋を継いでくれよ」

「わかってるって」


能力者の儀とは神から「クラス」を授かる儀式。簡単に言えば剣士や魔法使いになり剣技や魔法を使える様になること。能力を手に入れた者は冒険者となり、各地にて魔獣退治等の活動をする。魔獣は人を襲う人類の敵。この世界では日々彼らとの戦いがおこなわれている。冒険者は命のやり取りをするため様々なことが優遇される。お金も稼げて、豪遊できる。能力を持ってないこともある。俺は転生してこの世界に来たくらいだ、能力を持っているのはほぼ確定だろう。後はどのクラスかだな。10日後、儀式を受ける。それから3日後、今日は結果が自宅に届く日。父さんが封筒を開き結果を見る。


「残念だったな、能力はなしだとよ」

「ええっ、そんなはずは」


紙には能力なしとはっきり書かれている。父さんが紙をすり替えた様子はなかった。本当は俺に能力があるけど儀式に失敗、連絡ミス等のトラブルが起きた? いや、国が儀式に関与していて、能力者の発掘には全力を尽くしているからそれはないだろう。つまり完全なる無能力者。なんでこの世界に送られてきたの!? しかし意外と残念な気持ちは無かった。冒険者は死と隣り合わせの非常に危険な仕事。このまま道具屋の息子として生きていくのも悪くはないなと思っていた。それから6年経過。店内の手伝いだけではなく商品の仕入れ等もするようになる。俺は大人になり一般人として立派にこの世界の一員として働いていた。


「頑張っているなシン。継ぐようだから親父さんも喜んでるだろうよ」

「まだまだ修行中ですよ」


常連の冒険者が褒めてくれた。顔と体は人間だが狼のような耳が生えていて尻尾もある。この人は獣人。他羽が生えていたり、大きな牙が生えていたりと多種多様な獣人が存在する。彼らは基本的に人類の仲間。街には多数の獣人がいる。この世界では一般的な存在だ。獣人は獣に変身できる。魔獣に見えるため普段は皆、人形態で過ごしている。買い物をすると帰っていった常連さん。そろそろ閉店時間か。その日の仕事を終わらせ、翌日。


「それじゃあ竜人様達でも見てくるよ」

「いってらっしゃい」


今日はお休みの日。そして街では人と竜人が仲良くなった日とし、特別な催し物がおこなわれる事になっていた。毎年やるこの催し物、今回は王女様が来るということでいつもより賑わっている。俺も見物をするため広場に移動。広場はやはり混んでいた。遠くからステージを見ることに。王様、妃様、王子が会場に用意された椅子に座っている。すでに始まっているようだった。司会者が竜人の王と王女を呼ぶ。奥から大きな角、羽、尻尾が生えた男性と女の子が出てきた。竜人王と呼ばれる竜人の王とその娘の王女。堂々と入場する王。王女は口元を布で隠している。竜人王が挨拶を始める。そして竜の王女の番。


「はあ、退屈だ。私は帰らせてもらう」


立ち上がると王女は竜の姿に変身、王城の方角へ飛んでいってしまった。


「ちょ、ちょっとお待ちを!」

「主役がいなくなってどうするんだ!」


司会者と竜人の王が彼女に呼びかけるが構わず帰っていってしまった。


「申し訳ない。妻を早くに亡くし、大事に育てすぎてしまって」

「子育ては難しい。お互い苦労しますな」


ウンウンと頷く王様。それにしてもこの状況で帰っていくのは豪快な性格ではある。将来大物になりそうだ。その後は滞り無く進み会は終了。王様が挨拶をして締めた。俺も帰るか、屋台の食べ物を買い家に帰りその日はのんびり過ごす。そして次の日。


「仕入れにいってくるよ」

「おうよ、気を付けてな」


街から少し離れた村へ道具の仕入れに向かう。1日あれば帰宅可能な距離。こうして今日も道具屋の息子としての1日が始まった。村に到着、品物を見て購入。昼食を食べてから街へ帰る。昼食中、話が盛り上がってしまったからちょっと遅くなりそうだ。夜は魔獣が出る可能性がある。戦闘能力を持っていない俺が出くわすのは危険だ。しかしそこは道具屋の息子、この辺りの魔物なら眠ってしまう「眠りの香」という眠りガスが発生する木炭を持っている。ふふふ、どんな魔物が来ても問題ないぜ。いつでもアイテムを使える準備をしながら帰宅する。


「りゅ、竜人王様! 巨大魔獣がこの城に迫っています!」

「なんだと! 竜人達は王城にいる人を乗せただちに避難を!」

「街の者に今すぐ避難するよう伝えよ!」

「はっ!」

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