一発逆転人生

青い葉

第1話 髪の毛一本

 髪の毛の遺伝子を解析するだけで、その人になりすますことができる? そんな馬鹿げたことがあるはずないとは思っていたが、それでもやはり気になってしまう。好きな女の子の髪の毛をなんとか手に入れて、そのネット記事に記されていた住所に直行した。

 

 その住所は意外と近所らしい。コンビニ裏の路地の最奥に、その古びた屋敷はあった。髪の毛を握りしめた手で恐る恐る扉を叩くと中から老人の声が。次の瞬間、俺は眠らされてその場に倒れ込んだ。


 目を覚ますと…。なんと、俺があの好きだった女の子に!?

「はっは。乱暴なことをしてすまなかった。でもこれで、君の願望は叶えられたのではないかね。君はもうその女の子そのもの。体の隅々までをコピーしておる。どう生かすかは、君次第じゃ」

 どう生かすか。そんなのはもう決めてある。


 顔を隠すようにして自分の部屋に帰ってきた。家族に見られなかったのはラッキーだ。元の俺はどうなったのかなんてことは、後で考えよう。今はこの、興奮を鎮めることが優先だ。


 この日から俺の人生は一変した。家族には友達の家に泊まると告げ、学校には休みの連絡をいれた。俺は隠れるようにして今の体の細部まで観察することから始めた。

 毛穴、体毛、ほくろの数。そのそれぞれを自覚していくたびに、俺は自分の股間に握りしめるものがないことを後悔した。女子のやり方がわからないからだ。テキトーに擦ってみても、うーん、なんだかよくわからん。まあ、焦らされてるようなこの状況も、それはそれで楽しい。

 

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