無邪気

芯鯖

「あーした天気になーあれ!」


無邪気な可愛らしい子供の声が響いた。


苦しい…


見下ろすと小学1年生くらいの女の子が楽しそうに母親らしき人と父親らしき人に話しかけている。


「あしたはれるかな?」


「きっと晴れるよ」

「楽しみにして今日は寝ような」


真っ暗になった。


地面に足はつかない。


この広そうな部屋を見渡すことも出来ない。


時計の針の音が暗闇の中響く。


ガラス越しに激しい雨の音だけが聞こえる。


—————————————————


何時間経ったのだろう…


部屋がパッと明るくなった。


眠そうに目をこすった女の子が近づいてきて嬉しそうに叫ぶ。


「やったあ!はれたよ!」


「ほんとだ!良かったね!じゃあ今日の遠足のお弁当ママ作ってくるから学校へ行く用意しててね」


「はーい!」


「じゃあこれはもういらないな」


父親らしき人が近づいてくる。


ブチッ


身体が手に包まれて運ばれていく。



運ばれている途中かがみにうつった自分の姿は



マジックで無理やり笑顔にされ首を縛られたてるてる坊主だった。



身体が手によってぐしゃぐしゃにされゴミ箱であろう箱に放り込まれた。



「いってきまーす!」


「「いってらっしゃい!」」



自分をようやく認識した私は雨が降ることを願った。


———————————————


父親が振り返りゴミ箱を見たとき


マジックで笑顔にされたはずのてるてる坊主の顔が歪んで見えた。


気味が悪くなり急いでゴミ袋を包みゴミ収集車へ持っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る