第3話 両儀(陰と陽)とは

りょうとは


 原初はすべて混沌カオスの状態の「太極」です。

 その中から光に満ちた明るく澄んだ「陽」の気が上昇して天となり、重く濁った暗い「陰」の気が下降して地となったとします。

 この二気の働きによって万物の事象を理解し、また将来まで予測しようと試みるのが「陰陽思想」です。


 そこから太極が分かれて陰陽の「両儀」が生み出されました。

 「陰陽思想」とは世の中のすべてが陰と陽から成り立っていることを指します。



 陰陽の関係は常に相対的であり流動的です。

 一方からは陽であるものも、他方からは陰となりえます。

 また、陰と思い込んでいるものも、ある観点からは陽となるように、陰陽は状況の変化に応じて互いに転換して融通無碍なのです。


 たとえば父親は、会社において一社員として陽の社長との関係からすれば陰です。

 家庭において養う妻子との関係では陽でも、育児やその他家事全般を取り仕切るという観点においては妻が陽となり夫が陰となります。

 男性も女性から見れば陽でも、他の男性との関係から見れば女性的な陰であったりします。最近目立つ男性的で陽な女性もいます。




両儀(陰と陽)

 「陽」は能動的な性質を、「陰」は受動的な性質を主に表します。


 具体的には、

 有と無、電気のプラス極とマイナス極、(太陽が通って日向となる)南と(日陰となる)北、(日が昇る)東と(日が沈む)西、奇数と偶数、天と地、上と下、表と裏、前と後ろ、外と内、右と左、光と闇、明と暗、太陽(日)と月(太陰)、日向と日陰、昼と夜、夏と冬、春と秋、火と水、暑いと寒い、温かいと冷たい、充実(実)と空虚(虚)、勝利(勝)と敗北(敗)、進むと退く、歩くと止まる、走ると歩く、男性と女性、親と子、兄と弟、姉と妹、剛と柔、強と弱、動と静、積極と消極、攻撃と防御、肉体と精神、動物と植物、有機物と無機物、多と少、大と小、長いと短い、主と従、貴と卑、開と閉、遠と近、話すと聞く、福と禍、

 などに分けられます。


 天地の間に起こる一切の事物や事象は、陰陽の関係によってとらえられるのです。

 宇宙のあらゆる物は、相反する陰と陽の二気によって消長盛衰し、二気が調和して初めて自然の秩序が保たれるのです。



 これらは相反しつつも、一方がなければもう一方も存在しえません。

 陽は陰が、陰は陽があってはじめてひとつの要素たりえます。

 「陰」があるから「陽」があり、「陽」があるから「陰」がある。

 光があるから闇があり、闇があるから光がある。

 男がいるから女がいて、女がいるから男がいる。

 至極当たり前のことです。


 互いに反転し合いながらも、互いに補足し合い牽き合う関係でもあるために、しばしば反転して、陽は極まれば陽中に陰を生じ、陰もまた極まれば陰中に陽を生ずるといったようなことが起こります。


 この変転の発想が重要で、陽の年の次は陰の年、陰の年の次は陽の年。陽の日の次は陰の日、陰の日の次は陽の日と、時は絶えず循環しているのです。


 陰陽はけっして善悪のような二元論ではありません。陽は善ではなく、陰は悪ではないからです。

 万人が「あの行いは悪だ」と断定できるような陰はないのです。

 陽と陰はあくまで森羅万象を構成するふたつの要素に過ぎません。


 そんな森羅万象を表す陰陽が、中国戦国時代末に五行学と一体で扱われるようになり、陰陽五行説となりました。



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