第20話 カウンターの利用★

 このように、ただ1つの冷気の塊を魔法補助具先端に留まらせるだけの魔法論理マジック・ロジックに一工夫入れて、〝見栄え〟を良くすることで、エネルギー効率が改善され、長期稼働に寄与することがわかった。


 これだけでもそれなりの成果が得られたのであるが、ユキは更に、一つ、工夫を加える。


////////////////////////////////////////////

【変更前】

// 弾の初期化処理

time = 600 // 射出時間

interval = 60 // 射出間隔

angle = 360 / 10 * count / 60 // 射出角度

position = device.position //射出位置

size = 1 // 大きさ

power = 0.1 // 威力

attribute = ICE // 属性=氷

speed = 0.1 // 速度

acceleration = 0 // 加速度

 ・・・


 ↓↓↓


【変更後】

// 弾の初期化処理

time = 1200 // 射出時間

interval = 60 // 射出間隔

angle = 360 / 10 * count / 60 // 射出角度

position = device.position //射出位置

size = 0.5 // 大きさ

power = 0.1 // 威力

if(count < 600){

 attribute = ICE // 属性=氷

}

else{

 attribute = WIND // 属性=風

}

speed = 0.1 // 速度

acceleration = 0 // 加速度

 ・・・


////////////////////////////////////////////


 この変更による大きな変化は、魔法の前半は氷属性、後半は風属性となることである。


 変更点の一つ目は射出時間(time)を600から1200に変更している。

 これはつまり5秒間から10秒間に変更したということだ。


 射出時間(time)を倍にした変わりに大きさ(size)を1から0.5の半分にしている。


 これでトータルの出力はほぼ同じになったわけだ。


 加えて、


////////////////////////////////////////////

if(count < 600){

 attribute = ICE // 属性=氷

}

else{

 attribute = WIND // 属性=風

}

////////////////////////////////////////////


 の部分で、ショットカウント(count)の前半の600未満であれば氷属性、それ以外(else)、後半であれば風属性というように前後半で属性を変えている。


 前半で出した氷属性の冷気を後半の風属性の送風効果で、装置全体を冷やす効果を得ることができ、結果として、冷却装置の性能改善につながった。


 ◇


 2週間後――


「大丈夫です、2週間前に稼働を開始した冷却装置、まだ稼働を続けています」


 ユキは、前世における一般的な冷蔵庫のサイズである400L程度の容量のある直方体状の冷却装置の内部を確認する。


「やった!」


「成功だ」


「うむ……」


「では、アイシャ様、こちらを……」


 ユキは冷却装置内部から、白い液体が入った容器を取り出す。

 そして、その液体をコップに移し、アイシャへと手渡す。


「こ、これを……飲めばいいのだな?」


「……はい」


「アイシャ様、そのようなものを口にするのは……」


 今日も、アイシャにくっついている秘書のスパ・ゲッツェコードがアイシャを制止せいししようとする。


「スパ、心配には及ばない」


 だが、アイシャはその制止を拒否する。


「……では、いくぞ」


 アイシャはコップに入った白い液体を見つめながら、緊張したような面持ちで、一度、ごくりと息をのむ。


 そして、一度、目を強くつむると、覚悟を決めたように白い液体をいっきに飲み干す。


 ごく……ごく……ごく……


「「おぉ……」」


 オーエスとソレハはその様子を見て、小さく感嘆する。


「ふぅ……」


 アイシャは白い液体を飲み干すと、一度、溜息をつく。


「いかがでしたでしょうか? アイシャ様……」


「うむ…………キンキンだ……」


「はい……?」


「だから……キンキンに冷えていた」


「……!」


 その結果を聞き、オーエスとソレハが小躍りする。


「素晴らしい! 素晴らしいぞ!! 冷却効果は十分。稼働時間もすでに2週間を超えている。もうすぐ燃料切れになったとしても、十分な稼働時間を確保しているといえるのではないか?」


「はい……!」


「ユキ、みんな、おめでとう……そして、ありがとう。〝冷蔵庫〟第一号の完成だ!」


 アイシャは力強く宣言する。


「よかったねー、ユキくん!」


 ソレハも祝福してくれる。


「はい、ソレハさん、オーエスさんのおかげです」


「いえいえ、ユキが頑張ってたからだよー……でも、お役に立てたなら光栄ですよー」


「ソレハ、オーエスも頑張ってくれたが、ソレハの言う通り、やはり、ユキ……君が一生懸命に取り組んでくれた成果であると思う。それは、誇るべきことだよ」


「……はい、アイシャ様……ありがとうございます」


 ユキはアイシャの言葉を噛み締める。


(あれ……?)


 ユキはアイシャが少し身震いするように、プルプルと震えていることに気付く。

 アイシャも自分自身が震えていることにユキが気付いたことに、気付く。


「あ、これか……? これはその……先程、キンキンに冷えた牛乳を飲んだから……」


(氷の魔女なのに、寒さに弱いんだな……)


 などと、思いつつ……


「どうぞ……」


「あ……」


 ユキは自分の作業着をアイシャにかける。


「「おぉ……」」


 それを見て、ソレハとオーエスが小さく声をあげる。


 だが……


「貴様……! 下賤の身で……!」


 秘書のスパは明らかな怒りをユキに向ける。


(あ……やばいか……貴族様にこんな平民のボロい作業着を……)


「あ、えーと……申し訳……」


 ユキは謝罪しようとする。


 しかし……


「…………ありがとう」


 アイシャはユキの上着に包まるように背中を少し丸めるのであった。


「っっっ……」


 しかし、スパは眉間にしわを寄せてユキを睨みつける。


(おー、怖っ……)


「……」


(だけど…………これで俺の研究開発室ここでの業務も終了か……)


 ユキは冷蔵庫を作成するという役目を終えた。

 明日からはまた、元の用務員の仕事に戻ることになる。


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【あとがき】

ここまでで冷蔵庫編、一区切りです。

このような変な作品をここまで読んでいただきありがとうございます。

もし少しでも気に入っていただけましたら、作品フォローを何卒よろしくお願いします。

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