第2話 リバースエンジニアリング
数か月後――
「それでは今日の魔法学の授業は自由魔法の実技試験を行います」
魔法学のおじいちゃん教師がそう告げると、
「「「おぉおおお!!」」
クラスのお調子者たちが活気づく。
自由魔法の実技試験……それは学生各々が、自由に魔法を披露し、その能力を評価する試験である。
「では、最初の者……」
「はい!」
最初の男子生徒が前に出る。そして……
「
男子生徒の手の平からは水の弾丸が放たれ、見事に的を射ぬく。
「おぉおおおお! いきなり無詠唱か!」
「しかも、なかなかの威力だ!」
最初の男子生徒の滑り出しは上々であった。
その後も次々に生徒たちが各々、思い思いの魔法を放っていく。
生徒たちが初めて魔法を使ってから三か月が経過している。
三か月もすると、多少、能力の差も出てくる。
勢いのある水流を放つものもいれば、元気のない風を放つのが精一杯の者もいる。
「それでは、次、リバイス……ユキ・リバイス」
そんな中、おじいちゃん教師にユキの名が呼ばれる。
「はい……」
ユキは緊張した面持ちで前に出る。
ユキの番になると、それまでに比べ、少し空気感が変わる。
いくらか静かになったのだ。
ユキにはそれまでの生徒と異なる点がある。
それはユキが杖……すなわち魔法補助具を携えていることだ。
ユキは魔法補助具をかざし、的へと向ける。
そして……
「
杖の先端から青白い光の弾が連続で三発放たれる。
三つの光球は一応、的には命中した。
しかし、周囲は微妙な雰囲気になる。
「また白玉三兄弟かよ」
誰かが我慢できずにそんな言葉を口にすると、かろうじて堪えられて鼻笑いがいくつか解き放たれる。
「控えなさい」
おじいちゃん教師が穏やかな口調ではあるが叱責し、すぐに場は静かになる。
(わかってはいるけど……やっぱりちょっと辛い……)
魔法補助具があれば、別に直接、魔法が使えなくてもいいじゃないか。
そう思っていた時期がユキにもありました。
魔法補助具についてわかったこと……
魔法補助具を使うと、哀しいかな……その補助具に埋め込まれているらしい〝単一の魔法〟しか使えない〟
「次、アレイ・ハイレンス、前へ」
「はい」
白玉三兄弟を放ったユキの後は、初めて魔法実技を行った時にユキのことを嘲笑するのを必死にこらえていたアレイ・ハイレンスの番であった。
「
アレイ・ハイレンスの手の平から放たれた炎は火柱となり、直進し、的を射ぬく。
「うぉおおおおお、すげぇええええ!!」
「流石、アレイくん……!」
「アレイくんなら、王立の高等部への入学も夢じゃないかも」
アレイ・ハイレンスの放った炎槍により、訓練場は今日一番の盛り上がりとなる。
(……すごいなぁ)
そんなアレイを見つめるユキの目にも
才能というものは時に残酷なものであった。
◇
(ふむふむ……魔法補助具とは……魔法の才のない者でも魔法を扱うことができる奇跡の
ユキは自室のベッドで寝っころがりながら、学校の図書館から借りてきた魔法補助具に関する資料を読んでいた。
「へぇ~、こんな杖みたいな形しているのに、人工物じゃなくて、天然物なのか」
ユキは資料から得られた情報を抜粋したメモを改めて確認する。
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●魔法補助具
・一つの魔法補助具で一つの魔法のみが使用可能
・魔法の才のない者でも魔法を扱うことができる奇跡の
・魔物を討伐した際のドロップなどで稀に入手できる
・神聖なものとして扱われている
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「なるほどな~~……魔法補助具を使うと、あんなに馬鹿にされるけど、その実、奇跡なんて言われてるんだな。まぁ、確かに本来、魔法が使えない俺みたいな奴でも少しでも魔法が使えるようになるっていうんだから、奇跡には違いないか……」
ユキはぶつぶつと独り言を言う。
そして、ユキはふと素朴な疑問が思い浮かぶ。
(……でも、なんで魔法補助具は単一の魔法しか使えないんだろうなぁ)
「…………」
その答えはすぐにはわからなかった。
だが……
ユキは魔法補助具の杖をじーっと、見つめ、息を呑む。
(…………解体してみるか)
「いやいや、しかし、神聖なものとか言われてるみたいだし、罰当たりだったりするのだろうか……」
(……だけど……)
◇
数日後――
ごくり……
再び、ユキは自室にて、息を呑んでいた。
(…………買ってしまった)
ユキは新たな魔法補助具を実費にて、購入していた。
調べてみてわかったのだが、街の武具屋でこじんまりとだが、魔法補助具の取扱いがされていたのだ。
ユキはその中でもっとも安価であった杖型のものを購入する。
そして魔法補助具購入の目的は……
(うむ、早速、解体してみよう……!)
解体・分析であった。
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