ありがとう

かいとも

ありがとう

<現在時刻22時>


 お父様とお母様が外に居る。

 珍しいなこの時間帯に何処に行くんだろう。

 側近の人も連れていないし。

 そうだ!勉強も終わったし、あとついていこう!


<部屋から玄関まで行けるが、執事やメイドにバレル為、部屋の窓からしか出れない。

 ルウカは窓を開き、両親のあとをついていった>


 夜の街ってこんな景色なんだ。

 家から光は出ているけど、夜は誰も歩いてないんだ。


<ルウカが住んでいる場所は、貴族や貴族の関係者達の家しか建っていない。

 夜歩く人間は少なく、今日はルウカと両親しか歩いていない。

 そして数分歩いた頃>


 お父様とお母様、なんでルイス君の家に入ったんだろう。

 なんで?ルイス君の両親に用があるなら、自分の家で話せばいいじゃん。


<ここから始まる…複数人のありがとう>


<同時刻ルウカの両親>


「こんな時間帯に珍しいですね、サハラ様、ウハン様」

「ちょっと話したい事があってな」

「そうですか。

入ってください」

「サルエ誰だったの?」

「サハラ様とウハン様だったよ。

それで…何故剣を抜いているんですか?」

「はぁ…気付くか?普通。

サルエ、お前も抜けよ」

「良かったんですか?気付いたんですから、なにも言わず切ればいいじゃないですか」

「どうせ反撃するだろ?優しいと思わないか?」

「優しい?何処が」

「優しいだろ…お前を先に殺さず、3人一緒に殺すからだよ!」

「貴方は俺に勝てない!

エルン、ウハンがなにするか分からない!

ルイスを必ず守れ!俺は手助けできない!」


 気付いたか!サルエ!

 俺はお前に勝てないが、今の俺はお前に勝てる!


 サハラ…!闇取引でもしたのか?こいつが手に入れる為には、闇取引しかない!

 なんの為に俺達を殺す?


<リビングの狭い空間での戦い。

 普通ならば…サルエが勝つはずだが。

 今日のサハラは、何故か強くなっている>


「飲んだな!魔血(まち)を!」


<魔血(まち)

 魔物の死体と人間の死体で作る事が出きる。

 その作り方は残虐すぎる為、持つだけでも死刑になる。

 効果

 魔血を作る為の2つの死体の、力を半分受けつく事が出きる>


「ここで殺すんだ!優しいだろ!」

「なんで魔血を手に入れた!なんで俺らを殺す!

その理由を答えろ!」

「そんなの簡単だ…お前ら2人が優秀だからだよ!」

「は?そんなちっぽけの理由で、悪に手を染めたのか!」

「お前には分からないだろ!貴族より側近の方が優秀なんて…。

どんな目でみられるか!

それに、お前らがサワンヤ家を乗っ取ろうとしているなんて知ってる!」

「は?乗っ取る?どういう事だ!」

「知らんぷりなんてな!」


 くそが!魔血を飲んでいるのに、なんでこいつに勝てない!


 どういう事だ…。

 俺達がサワンヤ家を乗っ取る?そんな事するわけがない!


「サハラ!これを飲んで!」

「ありがとう!」


 は?…まさか!


「ウハンお前か!」


<サルエの首が切れた>


 一緒に殺すつもりだったのに…。


「じゃあ、2人も死のうか。

そうだ、言い残す事はあるか?」

「サハラ!貴方は騙されてる!私達は貴方の家を乗っ取ろうとしてない!」

「それが最後の言葉かよ…!」


 ルウカ君…ごめん。

 僕ここで死ぬみたい。

 ありがとうルウカ君。

 友達になってくれてありがとう。


<2人も一緒に亡くなった>


 サルエ、エルン、側近として働いてくれてありがとう。

 乗っ取ろうとしなかったら、最高の側近そして、最高の親友だったよ。

 ありがとう、サルエ、エルン。


 これで邪魔物が居なくなった。

 ありがとうね、サハラ。


「お父…様?お母…様?」

「ルウカなんで居るの?」

「ルウカなんで居るんだ!」

「近づくな!」


<2人が死ぬ直前>


(ありがとうルウカ君)


 え?なんでルイス君の声が?!

 どういう事?なんでありがとうなの!ルイス君!

 もしかして…何かあった?そんな事はないはず!


<何故かルイスの心の声が、ルウカに聞こえた。

 何故聞こえたのか分からないが、家の中に入った>


 なんでなんでなんでなんでなんで。

 ルイス君とルイス君の両親が死んでるの?

 なんでお父様が殺したの?お母様は止めなかったの?

 なんでなんでなんでなんでなんで。


「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」

「待って!ルウカ!お母さん達の話を聞いて?」

「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」


<ルウカの中から、黒いモヤモヤが出てきた。

 そして…黒いモヤモヤから剣が出てきて…両親を殺した>


<数分後>


「はいこちら、騎士団本部です」

「アカラン家から、鉄の臭いと血が出ていて…魔人が居るんです!」

「魔人が!?分かりました。

その魔人が誰か分かりますか?」

「サワンヤ·ルウカです」

「分かりました!直ぐに騎士団をそちらに向かわせます。

すぐさま逃げてください!」

「騎士団長!」

「どうした?」

「サワンヤ·ルウカ様が…魔人化しました」

「それは本当なのか!」

「多分…今報告がありましたから。

見間違えじゃない限り…ルウカ様です」

「分かった。

Aグループに向かわせろ!

魔法師団の方にも連絡を!」

「分かりました!」

「俺は向かう場所が出来た。

副団長別の件は任せる」

「分かりました」


 なんでだ…なんでルウカ君が魔人化に?

 それもアカラン家で魔人化なんて…。

 これはナイルに伝えなければ。


<騎士団長は、ナイルという人物の場所に向かった。

 その場所は…王室だった>


「ナイルじゃないか」

「王。

サイルは何処え?」

「速報聴いて向かったよ。

壁穴空いてるだろ?」

「本当だ…」

「側近居なくなったからさ、居てもらっていいか?」

「勿論です」


<ナイルが来る数分前>


<放送が聞こえた>


「速報!速報!サワンヤ·ルウカがアカラン家で魔人化!

近くにお住みの方は、直ぐに避難をお願いします!」

「迎え」

「ですが…」

「お前の弟子だろ?後悔しても知らないぞ?

壁破壊してもいいぞ」

「王…。

ありがとう!」


 うわー…本当に壁壊したわ…。

 さぁ、どうなっちゃうんだろうか。

 ルウカ君はまだ12歳だ。

 意識があるかどうか…。

 意識がある確率は1%も無い。

 奇跡で意識があってほしいな。

 殺すなら自分の手で殺さないと後悔するからな。


<そして、サイルはアカラン家に着いた>


「サイルさん」

「カラウンか。

今はどうなっている?」

「まだ家から出ていません。

もしかしたら、まだ意識があるかもしれません」

「ここは俺に任せろ」

「承知しました」


 1%も無い確率…。

 頼む…意識あってくれ!


「サイル…さん…」

「ルウカ!まだ意識あるんだな!」

「もう…無理…です…」

「待て!速く魔法を使うんだ!魔力を減らせ!」

「こ…ろ…し…」


<ルウカだった者は、サイルに向かって走った>


「ルウカ!」


<サイルは突進を受けて、ルウカだった者は、そのまんま玄関に向かった>


「皆!対戦準備!」


<カラウンの発言で、他の騎士団員も剣を抜いた。

 そして戦闘が始まった。

 元は12歳の子供でも、魔人になって強くなった。

 それに、剣豪の称号を持っている、サイルの1番弟子だ。

 魔人になった事によって、サイルを討伐出来る人間が少ない>


「サイル先輩!貴方が討伐しなきゃ行けない!

後悔しますよ!それに、まだ戻せるチャンスはあります!

立ち上がってください!貴方が討伐してください!」


 は…そうだ!俺がやらなきゃ行けないんだ!

 ルウカ…解放してあげる。


<誰にも分からなかった。

 家の中に居たサイルが、魔人を討伐したのだ>


「おい!ルウカ!目を開けろ!ヤミル!」

「分かってるわよ!」

「サイル…さん…」

「ルウカ君喋らないで!傷が治せない!」

「貴方の…弟子に…なれて…良かった…ありがとう…」

「ありがとうなんて言うな!嫌だ!」

「泣き…虫…ですね…なか…ないで…」


<最後の力を出し、サイルの目まで手を伸ばし、涙を拭いた>


「亡くなったわ…」


<ヤミルの発言を聴き、サイルはルウカの身体を抱きしめた>


「ああああああああああああああああああああ」


<アカラン家付近は、鉄の臭いと1人の男の泣き叫びが聞こえる>


 助けれなかったか。

 愛する妻に騙された男が始めた物語。

 いや、悪女が始めた物語か。

 色々と言えるが…サイル奇跡を2回も呼ぶなんてな。

 魔人化から人間を戻すのは、%なんてバラバラだ。

 俺達神だって助けたいが、簡単に命を救いまくったら駄目だからな。

 強く生きろよ、サイル。


<数時間後。

 サイルの部屋>


 もう…何時間たったんだろ…。

 最後のありがとう…辞めろよ…。

 俺だってありがとうを言いたかった!

 なのに…なんで死ぬんだよ!

 聞いているか分からないが…言うよ。


「俺は今まで弟子を作らなかった。

理由はめんどくさいからだ。

だけど、ルウカはいつも頼んで来た。

毎日毎日頼んで来た。

鬱陶しかったんだ…だからぼこぼこにしてやろうって思った。

そして…模擬戦した時勿論俺が勝った。

それでその日は帰ったが、明日になったらまた頼んで来た。

これを毎日して…何故か楽しくなったんだ。

何故か弟子にする!って思ったんだ。

そして俺は1日の中で、稽古が1番好きな時間になったんだ。

俺の弟子になってくれてありがとう。

こんな俺の弟子になってくれてありがとう。

そっちに行くよ」


<サイルは剣を抜いた。

 その剣を心臓の近くに…刺すはずだった>


(なに自殺しようとするんですか)


 幻聴?幻聴って凄いな…。

 刺すはずなのに…刺すはずなのに!

 手が動かない!誰かに止められているみたいだ。

 動いてくれよ!なんで動かないんだ!なんでルウカの場所に行けないんだ!


(師匠。

 俺は嬉しかったんです。

 師匠の弟子になれた事が。

 師匠の本音が聞けて良かった。

 俺から言わせてください。

 俺の師匠になってくれてありがとう。

 弟子の願いを聞いてくれませんか?)


 幻聴ってこんなに聞こえるのか?

 幻聴だろうとなんでもいい、願いはなんなんだ。


 (天国で見せてくださいよ。

 師匠の笑顔を。

 師匠って泣き虫だったんですね)


 幻聴だと思っていた…だけど、人の温もりを感じる。

 涙を拭いてくれている指。

 ルウカ…その願い聞くよ。

 だから、師匠の願いも聞いてくれ。


(なんですか?)


 ハグさせてくれ。


(師匠って甘えん坊なんですか?

 いいですよ!)


<師匠と弟子のハグ。

 涙を拭いてくれたのに、サイルの目からまた涙が出ていた>


(ありがとう)


「俺こそありがとう」


 これは奇跡と言うのだろうか。

 なんでルウカと話せたのか分からない。

 神が本当に居るのならば、神がしてくれたんだろう。

 ありがとうございます。


 他の神から怒られるかな。

 これは君への報酬だ。

 今まで国を守ってきた報酬だ。

 ありがとう、サイル。

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ありがとう かいとも @kaitomo

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