第8話:スキンヘッドの男
階段を降りた先でスキンヘッドのオッサンは待っていた。私が降りてきたのを確認してから彼は眼の前の木製のドアを開いた。
「おーっす。ヘンズの旦那ぁ。客だぞぉ」
スキンヘッドが部屋の奥に呼びかける。
室内はかなり薄暗い。何か香でも焚いているのか、わずかに良い匂いが漂っている。
品物は整理整頓され、掃除も行き届いている。
かなり几帳面なのかな?
そんな印象。
そして奥の部屋から現れた男は予想通りに、神経質そうな人物だった。眉間にはシワが寄り、目付きが鋭い。
「あぁ、確かクレアスだったか?」
「おう。俺の名前を覚えていたのか。嬉しいねぇ」
「あぁ、まぁな。それで? 何の用だ?」
「おいおい。ここは古道具屋だろ? ここに来る理由なんて決まってる。売買だ」
「お前がか?」
「いんや。こっちの嬢ちゃんが、だな」
そう言って私を差し出すクレアス。
「ほぅ? 何を売ってくれるんだ?」
そう言ってカウンター席に座るヘンズ。私は彼にククリナイフを差し出した。するとヘンズの目つきが変わる。
「ほぅ。これは……」
そう言って鑑定を始めた。その表情は真剣そのもの。
「全長は310ミレンス。刃の長さは……165ミレンスと言った所か? かなり変わった形のナイフだな。グリップは革か。刃は鋼。しかしこれは…… 随分と質のいい鋼だな」
そう言って眉間のシワを深めた。ナイフを置いて言葉を続けた。
「そうだな。13,000ジレットでどうだ?」
私はクレアスをジィっと見る。すると彼は片方の眉を上げた
「なんだ?」
「うん。私、貨幣価値が分かんないから。13,000ジレットってどうなの?」
「おう。そうだな。ナイフでそれだけの値段なら結構な業物ってことだな。ちなみに小銀貨が3枚と大銀貨1枚だな。そこそこの宿なら1泊小銀貨2枚からだ」
「ふぅん」
私は少し考えてからウィンドウを開いた。
さっき気がついたのだが、キャッシュが増えていたのだ。
どうやらゴブリンを退治したことの報酬らしい。
なのでウィンドウのショップでククリナイフを購入する。
その様子を物珍しげに見ているクレアスとヘンズ。すると目の前のカウンターにククリナイフが出てきた。それに二人が驚く。
「おぉ! ナイフが出てきた。随分と変わった魔法だな?」
「うん。まぁね」
私は二本の内、一本を腰に刺した。
「こっちを売るから買い取って下さい」
ヘンズは苦笑いをして頷いた。一応鑑定もしてもらう。
「あぁ。こっちも同額だ。13,000ジレットだな」
こうして当面の資金を得たのでクレアスと共に大通りまで戻った。
そこで私はクレアスにお願いをすることにした。
「ねぇ。クレアスのオジサン」
「オジサンは止めてくれ。これでもまだ23歳だ」
「え! うっそ!」
「本当だ。今年23になったばかりだぜ?」
「いくらなんでも老けすぎだよ!」
「うるせぇよ。それより要件は何だ?」
若干憮然とした様子を見せるが、どうもこのクレアスなる人物。なんだかんだと面倒見がいい。なので私はその善意に甘えることにした。
「私。冒険者になりたいんだけど?」
私の言葉にクレアスは考える。
「あぁ、まぁ、街なかでの仕事だけなら良いんじゃねぇか? でも他に伝手はないのか?」
「伝手は無いね。でも、街の中だけ?」
「おう。街の外はアブねぇから止めとけ」
「ふぅん?」
本当は街の外での仕事も受けるつもりでいるのだが、ここは黙っておくことにした、そしてクレアスに引っ付いて冒険者ギルドの中へと入っていったのだった。
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