第9話:またまた別荘。

「そろそろホテルをでるから・・・」


「分かった、充分気をつけろよ」

「そうだ・・・また別荘へ、俺の叔父貴の別荘へ戻れ」


「あそこはもう危険なんじゃ?」


「灯台下暗しって言うだろうよ、一度ガサが入った場所には、やつらももう

来ないだろ?」


「大丈夫かな?」


「大丈夫だろう・・・偽のガイノイドの件がうまくいくまでの時間稼ぎだよ」


「とにかく来いよ、俺も行くから」


「なにもかもすまんな」


「なに言ってる・・・俺はそのくらいしかしてやれないからな・・・」


「分かった・・・」

「じゃあ別荘にすぐ向かう」


そう言ってパンは電話を切った。


「ノルン、このまま当てもなく逃げていても、埒があかない・・・

いつまでも逃げ続け切るのは無理になってくると思うから、ホテルを

出たら、また別荘へ向かうからな」


「分かった・・・どこへでも付いて行くから」


「ザルには今回、世話になりっぱなしだな」

「あいつの家はさ、親父が政治家で長男がおやじの後を次いで政治家になったんだ」

「優秀な親父と兄貴に挟まれて、あつはいたたまれなくなったんだろうな」

「卑屈になってグレたんだ」


「一時は悪い連中とつるんで警察の世話になったりしてたんだけどな・・・」

「で、その頃、俺と出会ったんだ・・・いろいろあってな」

「だから、あいつは自由に好きなことをやってるのさ」


「悲しいね」


「さあ、急いでここを出るぞ」


パンとノルンはホテルを出た。

バイクで駐車場を出る前にパンは外の様子を伺った。

するとパトカーとジープが止まっていて、おまわりと他に男がひとりたむろ

していた。

アパートに来た賞金稼ぎか・・・間違いない。


「見つかった・・・さっきのザルに連絡した・・・あれで場所を察知されたか」


「ノルン、見つかったぞ・・・」

「早く、乗れ」


パンはすぐにノルンをバイクに乗せて車とは別の方向へ走った。

バックミラーを見ると、男たちはすぐに車に引き返していく様子が見えた。


「ノルン、しっかり掴まってろよ、飛ばすぞ」

「やつらを振り切るからな」


すぐに黒い車はパンたちのあとを追いかけてきた。

逃げるのは車よりバイクのほうが早い。

だが、向こうもパンたちを捕まえるのに必死だ。

だから、ただアクセル全開で車の横を必死で走り抜けるしかなかった。


かなり近くまで追い込まれたが、パンは狭い路地をかいくぐって必死で逃げた。

幸いにも日本の道路は狭い。


アメリカみたいにカーチェイスができるほど広くもないしすぐ渋滞につかまる。

案の定やつらの車もすぐ渋滞に捕まった。

しばらくは追ってはこれないだろう


パンはスピードを緩めることなくカメの別荘へ向かった。

来た道を少し戻ることになった。

街を抜けてバイクは次の街から山に向かって走った。


うねった道路を上がること二時間ほどで他の別荘がぽつり、ぽつり見えてきた。


その中のひとつにカメの叔父貴の別荘がある。

しばらく行くとカメんちの別荘が見えてきた。

別荘にたどりつくと、パンはバイクが見つからないよう別荘の裏に止めた。


ザルはまだ来てなかった。


「おれたちの居場所はバレてないことを祈ろう」


そう言ってパンはノルンをつれて別荘に玄関を入った。


バタバタ騒がしく逃げた後だからパン派多少放心気味だった。


「大丈夫?パンちゃん」


「ああ、大丈夫だよ」


するとザルが騒がしくやってきた。


「来てたか・・・腹減ってるだろ?」

「肉、買ってきたから、焼肉でもやろうぜ」


「そんな呑気に肉なんか食ってていいのか?」


「いいのいいの・・・たぶんだけどな」


ザルのおかげでとりあえず落ち着くことができた。

いつまでここに隠れていられるんだろうか?


焼肉を食った後、ノルンは疲れたのか眠ってしまった。


つづく。


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