ネコ王子とおてんば姫
絵山 佳子
第1話
この世界の大陸は大きな4つの大陸から成り立っている。
中でも一番大きな大陸をほぼ治めているのがミュール王国である。
周りの4つの帝国を束ね、世界最大の権力と軍事力を誇るミュール王国は向かうところ敵はない。
ミュール王国が実権を握っている限りこの世界の平和は保たれている。
17才になったミュール王国の第一王子ミケルトのお妃を探すため、王城には各帝国の王女や王国の高位貴族の令嬢など、全部で7人の妙齢のお妃候補が集められていた。
これから彼女たちは王城に1ヶ月間泊まり込み、簡単な面接の後、各々の生活をしてもらうことになった。
特に試験などはない。
彼女たちには立ち入り禁止エリア以外、自由な生活が約束されている。
※※※
ミュール王国の王妃は小さな島国から嫁いできた魔法使いの娘だった。
当時の王太子が、たまたま島国に外遊に行ったときに一目惚れをし、その場で求婚。そのままミュール王国に連れて帰るという荒業をやってのけた。
お陰で今でも国王は王妃に頭が上がらない。
完全に尻に敷かれている。
王妃タマールは百年に一度現れる、大魔法使いだった。
人が想像できるほとんどのことが叶ってしまう。
ミュール王国が栄えているのも、王妃タマールのお陰と言っても過言ではない。
ちょっとでも不穏な動きをする者や反逆を考える帝国などが直ぐに分かり、王妃タマールは大きな問題が起こる前に排除してしまう。
帝国の王など塵より軽い。
首のすげ替えなど意図も簡単にやってしまう。
王妃は3人の子どもを産んだ。
長女ソマリ、次女ラカン、長男ミケルトの順番である。
長男のミケルトは女性が苦手なのも、お節介な二人の姉と溺愛しすぎる母のせいかもしれない。
要するにかまわれ過ぎて女性が苦手になった。
※※※
お妃候補が揃ったということで、ミケルトと二人の姉が国王の私室に呼ばれた。
ソマリ「お父様またやるのですか?」
王「仕方がないではないか」
ラカン「また、これを見ないと行けないの?」
王 「しっ、もうすぐ始まるぞ」
王と王女たちはこそこそと話していた。
「いいわね」
と王妃が問うと、
「わかりました。母上」
ミケルトが答えた。
すると王妃はミケルトに顔を近づけて、鼻と鼻をくっつけた。
「あともう少しね」
「う、うっ」
王妃の鼻と息子の鼻をくっつけてから10秒で魔法がかかる。
なんとミケルトは立派な三毛ネコ♂になった。
「母上程の魔法使いならば、鼻などをつけなくても出来るのではないのですか?」
ミケルトはネコの姿のまま言った。
「出来ないわよ。わかっているでしょ」
王妃はつんと澄まし顔で言った。
王 「もっと簡単に出来ると思うよ」
ソマリ「そうなの?」
ラカン 「やっぱり。母上の趣味ね。かわいそう」
王と王女たちはミケルトに聞こえないようにささやいていた。
「今日はまず、帝国の4人の姫たちの様子を見てきなさい」
王はネコのミケルトに命令した。
帝国からはノースト国のロシアン、イストール国のペルーシア、ウエストル国のメルン、サウズアン国のシャムナが来ていた。
城では猫が数匹飼われているので、使用人たちも気がつかない。猫の通り道も沢山あるので部屋ヘは入り放題だった。
「まずはノースト国のロシアン姫のところだね」
ネコになった王子は尻尾を立て澄まし顔でロシアン姫の元に向かった。
ロシアンは色白で背が高かった。可愛いというよりは美人だった。
お茶を飲みながら時折ため息をつき、うっとりした顔で本を読んでいた。
王子は本の内容に驚いた。
BL本だった。腐女子だ。
人の好みは色々あるので、偏見はないが、想像してなかったので驚いた。
本の世界に浸っていてこっちに気がつかないので、邪魔しないように部屋の外に出た。
「次はイストール国のペルーシア姫だな」
ペルーシアの部屋に着くとペルーシアは不在だった。メイドの話しを聞いていたら、厩舎に行っているようだった。
彼女はよく出掛けており、じっとしていられない性格のようだ。
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