第3話 見えないところにロマンはあるし、見えたら見えたで眼福である

 まず前提として毒島黒男と言う奴はエロい餓鬼なのである。

 ませているとも言う。

 12歳少年、まだまだ小学生だというのに無駄にエロい知識を持っている。

 間違いなくどっかで仕入れているのだろうが、一体どこでだろう。

 まあ、現代はパソコンでいくらでも情報収集できるだろうし、そこら辺じゃないかなと適当に考えている。

 変なサイトに引っ掛かってウイルス侵入されてしまえ。

 なまじ、本人のスペックが小学生離れしているので間違いなくコンピュータウイルスの侵入なんて許さないだろうけど。

 嘘か真は分からないが、自分でパソコンを組み立てた事もあるぐらいの奴なのだ、毒島黒男と言う奴は。

 

 そしてそんな毒島黒男のエロ具合に関してはクラスメイトの連中も当然知っている筈なのだが、しかし彼は何故かモテる。

 ものすんごいモテる。

 催眠術なんて使ってないのにモテる。

 なんでやねんと思ったが、しかし本人はイケメンだし高スペックだし学校でメチャクチャ活躍しているしで、モテる要素しかないのだった。

 エロいというマイナス要素に関しても「そう言うところも素敵♡」という意見を聞いた事がある。

 元男の私には分からないが、しかし女の子って不良に憧れる節があるよね。

 なんでだろう、どこに魅力を感じているのかまるで分からない。

 とはいえ、そんな感じに毒島黒男はモテるのであった。

 

 学校に行くときゃーきゃー言われ、女の子にラブレターを貰う事なんて日常茶飯事。

 お前本当に竿役か?

 だけど女の子に寄られると鼻を伸ばすしスキンシップされれば自分の方から逆にスキンシップしに行く。

 セクハラで訴えられるのではと一瞬思ったが、しかし相手は喜んでいるしなー。

 幸せならオッケーって事だろう。

 モテる男って、ズルい。

 

 そしてそんなイケメンモテ男の毒島だったが、一応男友達もいるっちゃあいる。

 少ないけど、いる。

 基本的に女の子からちやほやされる奴って男から嫌われそうだが、しかしなんだかんだで黒男は暇さえあれば男連中と混ざって話してたりする。

 耳を澄ましてみると聞こえてくるのは「○○のおっぱいすげーよな」「揉みてー」……

 

 やっぱエロ餓鬼じゃねえかお前等。

 ませてんのは黒男だけじゃねえな、これ。

 むしろ黒男に影響されているという可能性はある。

 

 とはいえ、彼は現状不健全な事をしている気配はない。

 それこそ「揉みてー揉みてーおっぱい揉みてー」とは言っているけど実際に行動には移していない。

 それを聞かされる身にもなってみろとは思うが、しかし行動に移らないのならば問題ないと思っている。

 まあ、私の見ていないところで行っている可能性もあるにはあるけれど、そうなったらもう私の知った事ではない。

 正直言ってしまうのならば、私は私自身が彼の毒牙に掛かって雌堕ちする展開を恐れているだけであって、むしろ寝取られ展開に関しては興味があったりするのだから。

 NTRゲーマーの名は伊達ではない。

 ハーレムを築き上げて酒池肉林しているのならば、それを遠くから眺めていたいし。

 薄情とは言ってくれるなよ、私は傍観者でいたいだけなんだ。

 

 そう言う意味では、彼が未だに誰にも手を出していないというのは拍子抜けであり残念でもある。

 まあ、小学生に何を期待しているんだお前って話か。

 むしろ小学生が『そういう』事をやっていたら事案だ。

 頭の中まっピンクのエロ餓鬼はむしろ私だったって訳である。

 

 と言う訳で、将来のヤリチン竿役間男である毒島黒男はエロい事を妄想しつつも健全な少年としての生活を送っている。

 外で走り回るのも好きだが、現代人らしく家の中でゲームを遊ぶ方が好きな子供。

 普通である、凄く。

 これがどうなったら他人の女に手を出すような奴になるんだ?

 私、気になります。

 寝取られゲーの原作は主人公目線で語られる事が多いし、だから間男である黒男のバックストーリーはあまり語られなかった。

 ただ、中学の時からいろんな女を食ってきたヤリチンという情報しか私は知らない。

 

 ……ん?

 と言う事は、あいつあと数年っていうか1、2年でそうなるって事?

 え、マジで?

 全然ヤリチンとしての片鱗を見せないんだけど、これって大丈夫?

 原作始まる?

 ヒロイン達、このままだと普通に主人公とくっつかない?

 それはそれで嫌だぞ?

 雌堕ちはイヤだけど、寝取られ展開は普通になんなら私見たいんだけど。

 最悪な事を考えている自覚はあるし、どちらかというとそう言う方にさせない方が人情があるのだとは思っている。

 だけど私の本質はやはり、NTRゲーマーなのだ。

 

 ヒロイン達が主人公の裏でエロい目に遭っている姿を見たい。

 ヒロイン達が快楽の為に他の友人を売る姿を見たい。

 ヒロイン達が主人公に嘘を吐くところを見たい。

 ヒロイン達が――白目を剥いて果てる姿を、見たい。

 

 うーん、やはり私の方が性格的にはアレなんじゃないかって思えてきた。

 現状黒男はエロい餓鬼でしかないので、悲しいかな、多分それはあっている。

 なんてこったい。

 

「歩夢、どうかしたん?」

 

 と、考え事に耽っていた私に対し黒男が尋ねてくる。

 現在、私達は帰宅の途中だった。

 やはり夏の時期に外でゲームをするというのはいろいろと問題があったので、続きは私の家でと言う事になったのである。

 やっぱり夏の日差しと気温でゲーム機がぽっかぽかになるのは恐い。

 熱中症も恐いし、やはりクーラーをガンガン効かせながら氷たっぷりのグラスに注ぎこんだコーラ片手にゲームをする事こそ至高。

 やっぱり分かんだね。

 

「ていうか黒男、貴方。ゲーム下手だね」

「いや、これに関しては絶対違う。歩夢が上手すぎなんだって」

「そんなんだと貴方が他人に「はちみつください」とか言って迷惑掛ける未来が見える」

「どういう未来を想定してんだお前は、少し怖いぞ……」

 

 失礼な、私はお前のマジカルチ○ポの方が怖い。

 ……今も凶悪な形をしているのだろうか。

 ちょっと興味ある。

 もしかしたらまだ皮を被っている可能性もあるし、逆の可能性もある。

 うーん、まさしくシュレディンガーのチ○ポだ。

 何考えてんだ、私は馬鹿なのか?

 

 そうこうしている内に私達は家へと到着。

 生憎と父親と母親は仕事でいないらしい。 

 というか二人に関してはむしろ家にいる方が珍しい。

 共働きの家庭だと、子供は独りぼっちで家にいる事が多くなると思う。

 その点、私には黒男がいるので退屈しない。

 まあ、現代は通信プレイがあるので別に黒男が家にいなくても普通に遊べるっちゃあ遊べるんだが。

 

 しかし、暑かった。

 気づけば私は汗びっしょりで服の着替えが必要なほどだった。

 それは黒男も同じだったが、しかし男の子なんだし我慢出来るでしょ。

 

「あー、その。歩夢?」

「ん?」

 

 と、そこで黒男が提案してくる。

 

「汗びっしょりだしさ。『一緒に風呂で水浴びしないか』?」

「んー」

 

 それに関しては別に良いけど。

 

「黒男、貴方着替えあるの?」

「そ、それはその。お、置いてたらすぐに乾くって!」

「……ま、夏だしね――それじゃあ、ん」

「ん?」

「服、脱いでよ。乾かしておくから」

 

 目を丸くする黒男。

 ……なんで躊躇するんだ?

 一緒に風呂入るんだし、どうせ裸になるんだからさっさと脱いでよ。

 

「わ、分かった……」

 

 結構な時間躊躇したのち、彼はゆっくりと服を脱ぐ。

 と言ってもやはり男の子。

 着替えは頭突っ込んで「ハイ終わり」ってタイプなので、その逆も速攻で終わった。

 

「……」

 

 すっぽんぽんの黒男。

 股間は何故か手で隠しているが、私はちゃんと見ていた。

 ビッグエレファントだった。

 ていうか何故か少し膨らんで上を向いていらっしゃったね。

 あれでまだまだ大きくなる余地があるというのだから驚きだ。

 こう、えげつない形をしたし、既に女泣かせの片鱗を見せてくれた。

 

「じゃ、ちょっとこれ干してくるから。先に風呂入っててよ」

「お、おう……」

 

 

 …………

 

 

 がらがら。

 

「ん? 何やってんの貴方」

 

 服を脱いで風呂に入ると、何故か黒男は突っ立っていた。

 え、なにしてんのこいつ?

 

「べ、『別に良いだろ』!」

 

 ……確かに、どうでも良いか。

 

「じゃ、私シャワー浴びたいんだけど」

「あ、っと。じゃあ俺、浴槽の方にいるわ」

 

 そう言いつつも彼は私の身体をジロジロ見ている。

 私の身体、どこか変、かな。

 一応怪我とかしてないし綺麗だと思うけど。

 おっぱいも学校で一番膨らんでいるし、恥ずかしいけど女的にはちょっと自慢にしている。

 

「……おっぱい見てても良いけど、揉みたいとかは言わないでよね?」

「んなっ! な、なな……ッ!」

「まったく、そんなえっちな事考えてたの? ――一応言っておくけど、そういう事は普通、女の子は嫌うんだからね?」

「わ、分かってるって」

「じゃ、私シャワー浴びるから」

 

 と、そう断ってから私はシャワーヘッドを持ってそれから蛇口を捻る。

 しゃー、と少しだけ温かい水が噴き出て私を濡らしていく。

 汗を流すためにゆっくりとした手つきで身体を撫で上げる。

 ごしごしっと擦りたい気持ちもあったが、それやると肌が傷つきそうで、恐い。

 女の子の肌って敏感だし、大事にしていきたい。

 だから本格的に身体を洗う時も普通の女の子みたいにスポンジを使って洗っているし。

 

 そしてあらかた身体を清めた後、私は黒男に言う。

 

「じゃ、はい。シャワー」

「お、おお!」

「背中とか洗えるよね」

「子供扱いすんじゃねぇ!」

 

 顔を真っ赤にして怒る彼を見て、なんだかんだでこいつも子供だなーと思った。

 

「別に一緒に入ってるんだから、背中を洗う事くらい別に良いじゃん。むしろ、しっかり洗わない方が汚いと思うんだけど」

「え、は? え、そうか?」

 

 何故か黒男は混乱しているみたいだ。

 一体どうしてだ。

 私は割と一般論を述べているつもりなのだけれども。

 しかしこのままこいつに付き合ってても時間の無駄な気がしたので、「あーもう」と私は強引に彼を椅子に座らせ、それからシャワーから出るお湯をぶっ掛けた。

 

「のわっ、わ!」

 

 黒男を濡れネズミにし終えた私は、まあ、こいつ男だし良いだろうと思いながら手でボディソープを泡立て、それで彼の背中を洗っていく。

 ごしごし、ごしごし。

 ただ、そこで少し問題が発生。

 ちょっとボディソープを取り過ぎた。

 泡が多過ぎる。

 このまま流すのも勿体ないし、良し。

 

「ぇへ、……?」

 

 黒男の前も洗う事にした。

 前に回るのも面倒なので、手を回して洗っていく。

 ごしごし、ごしごし。


 

「ねえ、黒男?」

「う、ぐ……『自分で洗う』!!!!」

 

 え?

 そ、そんなに叫ばなくても、それなら別に良いんだけど。

 

「さ、『先に出てて』!!!!」

 

 お、おお。

 分かった……?

 

 首を傾げながら私はひとまずシャワーで付いてしまった泡を洗い落とし、持ってきていたタオルで軽く拭いてから風呂場から出る。

 風呂場の外に置いてあったバスタオルで身体をしっかりふき取り、服を着てから改めて振り返る。

 ……シャワーの音が聞こえてこないんだけど、何してるんだろあいつ。

 良く分からんけど、まあ、いっか。

 とりあえず楽しくゲームを出来るように部屋のクーラーをつけておいて、後は黒男の着替えを用意しておこう。

 干していた時点で気づいていたけど、服がそんなすぐに早く乾く筈もない。

 だからまあ、やっぱり変えの服は私が用意しなくてはならない。

 そして、幸い私達はまだ12歳で肉体の差があまりない。

 つまり私の服をあいつは着られるって事だ。

 

 ……まあ、お約束ならばここで女ものの服を置いてあいつに女装させるものなのかもしれないけど、しかしそれって誰得なのかって話しなので、普通にジャージにしておく事にする。

 学校のジャージは男女共通だし、あいつも着れるでしょ。

 それじゃあ、私は部屋で待っていようかな。

 

 

 ――それからしばらくした後。

 いや、結構待つ事になったな。

 なにしてたんだこいつ、風呂場を洗ってたりしたのか?

 

「……なんか、歩夢の匂いがする」

「いや、私の服なんだからそうでしょ」

「……」

 

 なんか鼻血を出す黒男の姿があった。

 いや、何でだよ。

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