第130話 をとこ日傘 🦧



緑陰のきれいな街に犬と住む

まばたきを忘れし魚や土用波


風鈴や可憐にほそき子のうなじ

後れ毛を撫でゆく風の涼しさよ


あの木だけ風の吹くらし合歓の花

あいまいな身体の泳ぐサンドレス


帰省子の胴着を擦る引の音

称名や湖畔の寺の夏期講座


大正の家族のごとく夏座敷

椅子四つありし昔の露台かな


いうやうとひろぐる男日傘かな

葭すだれくるりと剥けてゆで卵


板前の横顔ちらり夏暖簾

急坂の途中のテラス夏館


川端の骨董店の夏日影

積乱雲川に突き出す船の宿


雑貨屋の軒の暑さよ蔵通り

薄き雲吐きて火山の夏旺ん


月涼し架け替へ中の月見橋

枕辺に添い寝の犬や星涼し




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