第110話 花うばら 🌺



去る人と来る人のあり夏の雲

山ろくの黄色い屋根や三光鳥


塀沿に素朴な韮の花ざかり

万緑や野鳥の宴はじまりぬ


新樹光サラブレッドにあらざれど

花うばら子を抱く母と抱かれる子


渡すものありての橋や通し鴨

石ごとに愉快に跳ねて夏の川


高原の猛き木洩日てんとむし

分相応に期待してみる黄金虫


駅モスの大窓よぎる夏燕

内堀に五層の影や城の夏


また増えて夏草しげる空きの庭

軽トラの辣韭らつきよの粒を選りにけり


丸なすと長なす紫紺競ひけり

割烹のおとほし小粋花わさび


一瞬の一生ひとよを生きて踊り花

足もとを飛び立つ鳥や夏夕べ


けざやかにさんざめき合ふ夏の星

竹婦人気の合ふひとり暮らしかな




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