第83話 よちよち仔犬 🐕



文鳥の紅のくちばしあたたけし

湧水の尽ることなくあたたけし


襟元にもの言ふ赤子うららけし

老犬によちよち仔犬うららけし


のどけしや「ゆ」の一文字の藍暖簾

のどけしや空のぐんじやう湖に貼る


うららかや橋わたりながらつぎの橋

おとがひを風に撫でられうららけし


山麓の庭のピザ窯長閑なり

あたたかや公民館の道祖神


お煮しめの田舎ぶりなる駘蕩に

駘蕩として鳶の羽シンメトリー


木は森に人はとくわいに春一番

永日や三色ペンのシャープペン


横に立つ寡黙な人や夕永し

永き日の影と同行二人かな


白壁をあかね色に遅日かな

ひとかけのバレンタインのビターチョコ


ひたひたと足音の去る春の宵

ふと目覚め甘き気配や春の夜




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