第20話 フラミンゴ 🦩



文机の墨の匂ひやお正月

古雛の樟脳の香の奥座敷


春泥の轍くずれて乾き初む

朧夜に帰る女人の臈長けて


囀や枝葉少しく混み合へり

新刊のインクの匂ふ緑の夜


薫風に紅を散らせてフラミンゴ

眼さうなキリンの耳や若葉風


茄子瓜のぬか漬のせて朝の卓

かたつむり自転の軋む水の星


夕立や土の匂ひのあと先に

白壁のやや物寂びて晩夏光


のうみつなひみつのにほひ水蜜桃

万能のメンソレータムちんちろりん


さやさやと色なき風の通る道

さねかづら襟もと匂ふ恋女房


運びこむ雪の匂ひや藍暖簾

渡る神裾さばき美し氷面鏡


日の色と紫紺とありて冬すみれ

冬たんぽぽ犬の鼻孔の濡れ具合




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