第18話 花野みち 🌺



秋灯やジョバンニ通ふ活版所

北方の父待つ母子の秋の夜半


身に入むや病母のミルク案じゐる

秋寒やラッコぎらひになりにけり


傷心の丘より望む祭の灯

秋声や海の底なる天気輪


秋澄みて黒曜石の地図ひろぐ

星めぐり口笛ふけば花野みち


水の秋三角標の櫓かな

竜胆のコップ飛ばせる幻燈絵


稲妻や白き十字架「ハレルヤ」を

冷まじや鳥捕るひとの鷺の菓子


車掌問ふ三次空間愁思かな

秋潮に家庭教師の思索せる


金紅のりんごもらひてさびしめる

手旗にて「いまこそわたれわたり鳥」


新世界交響楽や雁渡し

身を挺す蠍座かなし天の川


星飛びて現世と異界つなぎけり

銀漢やカムパネルラの赤帽子




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