第13話 雲海幻想 🌄



短夜のあけゆく夢に山の風

ひつそりと葡萄郷なるワイナリー


山法師の花バイクに道を譲りけり

手を振りて先ゆくバイク青葉木菟


苔むせる廃墟の庭や草いきれ

熊笹と羊歯の増へゆく若葉山


いつの間に白樺の森かんこ鳥

どどどどとダンプ降り来る夏の暁


雲海に稜線ならべ四方の山

標高二千風のとがれる夏蓬


山頂に畳む二つのハンモック

林野庁の標識かすれ高山蝶


夏空に牧たれし牛動かざる

木道の傷みのはげし夏帽子


久女恋ふ山ほととぎすほしいまゝ

旧式のバス上り来るサングラス


体幹でくだるヘアピン青芒

対向車ふひに現はる木下闇


ひと息にワイナリーまで百日草

街の夏いつものカフェの独り客




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