神になるか

ろみみん

第1話 

これが世界の終わりってやつか。


SF映画のそれとは違う。もっと地味で、もっと


絶望的なこの風景。


至る所に横たわる死体、それらから漂う鼻の奥


を抉られるような臭い。


崩壊した家屋は炎に包まれている。


何かがおかしい。これほど壊滅的な被害を受け


ているにしても、私以外に誰もいない事には


違和感がある。


消防やパトカー、ヘリも飛んでいない。


まさか、私はこの世界でたった一人の生き残り


なのか?被害を受けたのはこの辺りだけでは


ないのか?スマホはさっき試したが、どこにも


誰にも繋がらない。冷静になって画面を見たら


電波は繋がっている。だから余計に変だ。


-♪


電話だ!すぐに出たが、何やらブツブツと聞こ


えるだけで全然聞き取れない。


「どうしたの!どこにいるの?もしもし!?」


-プツッ


だめだ。その後もいくつか電話が来たが全てが


そんな感じだ。


そもそも何故こうなったのか、分からない。


3時間前に会社を退勤して、帰宅途中だったとこ


ろに大地震が襲った。頭に瓦礫がぶつかって


意識を失った。そして目覚めたらこの現状。


こんな事になっても、なぜか涙は出なかった。


家族は?彼氏は?友達、会社の人達、


みんなの安否が心配なのに、なぜだろう。


まだこの現実が受け入れらていないのか、でも


意外にも冷静にしていられた。


取り敢えず、歩いて行ける場所は全て行き、


生きた人間がいないか探し回った。


実家は遠いし、電話も繋がらない。


-ピロン…ピロ…ピピピピ-


「なに?これ…。」


ゾワっとした。急にメールの通知が沢山鳴り出


して、開いてみたらどれも謎のメッセージ。


「縺ゅ>縺�∴縺� ?撰…」


文字化けしている。メッセージをくれているの


は、家族や彼氏、友達、会社の同僚など。


どの人のメッセージも文字化けしている。


返事を打ってみたら、彼氏の隆太から返信が来


たが、またも文字化け。なぜだろう、でも生き


ている可能性がある事にひとまず安心した。


近くにドアが開いたままの車があった。その横


には車の持ち主らしき人が倒れていた。


「…っ、車のキー。ごめんなさい、車借り


ますね。」


死体に手を合わせて、キーを取って車の中に


入った。


-ブルンッドドドドド・・・


よし、エンジンが掛かった、ガソリンもあるし


取り敢えず彼氏の隆太の家に行ってみよう。


なんとか瓦礫の中車を走らせ、30分ほどで着い


た。だがあたりを見渡しても隆太の姿は無い。


次に実家を目指した。ここから2時間はかかるが


途中の荒れ果てた道を考えると、倍はかかるだ


ろうか。


1時間ほど走ったところで、家屋が倒壊していな


いエリアを見つけた。電気もついているし、


人がいそうだ、誰かを探してみよう。


「すみませーん!誰かいませんか!」


おかしい。誰もいない。


-ガチャッ


鍵がかかっていない家があったので、悪い気も


したが土足で上がった。


「助けてください!誰か!…なんで、誰もいな


いの?…!?」


リビングに信じられない光景が広がっていた。


まるで今の今までそこに人がいたような、手を


つけられていない食事、まだ少し温かい鍋。


とても奇妙な光景だった。椅子の下には箸が


落ちていて、なんだろう、人だけが消えた?


他の家もいくつか見てみたが、どこも鍵は空い


ていないし、チャイムを鳴らしても出ない。


私は車に戻って、ただ呆然としていた。


ただただ不安や恐怖を感じて、事態がまるで


掴めず、この世から人が消えたという事実に


ひたすら絶望していた。


考えていても仕方ない、私は再び車を走らせ


実家を目指した。


着いた頃には世が明けていた、やっぱり誰もい


ない。家は少し崩れていたが、


中は大丈夫だった。


「パパ…ママ…どこに行ったの?」


テレビがつけっぱなし。ここも同じか。


リビングのソファーに座って、私は疲れていた


のか、すぐ眠りに落ちた。


「…ん、…さん、聖良さん!」


びっくりして飛び起きると、目の前に男性が


立っていた。私は涙が溢れて抱きついて、しば


らくその人の胸で泣いていた。


「…落ち着きましたか。辛かったですね、


安心してください、あなたの家族は


生きている。」












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