俺の陰キャライフがアイツらに破壊される話

あんホイップ

第1話 美少女を助けてしまった陰キャ


 陰キャとは、いわゆる「陰気なキャラクター(陰気な性格の人)」の略。 言動や雰囲気が陰気・陰湿・暗い・後ろ向きな人。 周りの人の気持ちを暗くさせるような人、コミュニケーション能力のない人、社会性の乏しい人という意味を込めて使われる場合もある…らしい


 そう俺、陰田蒼かげたあおいは、インキャライフをただいま謳歌中だ。


 春に高校生になり、入学して早2ヶ月…俺の陰キャっぷりは完璧に等しい!


 陰キャライフと聞いてわからない人もいるだろう…そこで!俺が陰キャライフを送るための秘訣を軽く教えてあげよう。


 陰キャを目指している人はぜひ参考にしてくれ。


 陰キャライフを送るための秘訣…その1!地味な見た目をする。


 当たり前だが、基本的に目立つ服装や装飾品、髪色、ネックレス、指輪、時計など…をしないことだ。


 陰キャはまず見た目から地味に、目立たなくする。


 学校では、当たり前だが制服だ。

 なので、服装は問題なし。


 そして髪色はもちろん黒だ。

 なにやらいろんな色の髪のやつがいるが、俺は目立たない黒にしている。


 バック?もちろん地味な感じのやつだ。

 なんなら筆箱、シャーペン、消しゴムなどの文房具…それもなるべく目立たないだろうと思う物を使用している。


 こういう細かいところも、大事なのだ。


 身につけているものは二つだけ。

 

 百均で売ってそうな地味な時計。


 そして、伊達メガネ。


 伊達メガネをすることによってより一層陰キャ感が溢れ出す。


 これらのことを、意識するば見た目は完璧な陰キャの完成だ。


 おっと、まだだぞ?安心するのはまだ早い。

 あくまで、まだ見た目が陰キャなだけだ。


 陰キャライフを送るための秘訣その2!…空気になる!


 空気の割合は皆さんご存知でしょうか?主に窒素(約78%)、酸素(約21%)、アルゴン(約0.9%)、そして俺、0.1%で構成されている。


 そう…俺は空気と同じに存在になり、いるのかも認知されてないぐらいのポジションを獲得するのだ。空気になることにより、面倒な人付き合いもしなくていいし、まず話しかけられる機会もない。当然、目立たなくなるのだ。


 話しかけらても、基本無視か、会釈程度で対応すること。

 そうすれば、段々と自分に話しかける人がいなくなるのだ。

 

 これで、中身も一応は陰キャになったな!


 まだまだ、陰キャライフを送るために意識していることは沢山あるのだが、それはまた今度に紹介させて頂こう。


 ところでなぜ俺が陰キャしてるかって?


 そんなの決まってる。


 平和に静かに人生を過ごしたいからだ。


 目立ちたく無いのだ。

 注目も浴びたく無い。

 そこらへんの雑草とかと同じ存在になりたい。


 それが、俺の願いであり、希望なのだ。


 ん?何?友達がいないと寂しいって?


 そんなことはない。

 考えてみたまえ、例えば君が友達と食事をするとしよう。その時君が食べたい物が友達の食べたい物とは限らない。お互いが別のものを食べたいのだ。そして、優しい君の場合、相手の食べたいものの方に譲るだろう。そして、君は食べたい物じゃないものを食べる羽目になる。可哀想にな…


 俺はそんなの嫌だ。

 俺が食べたい物を食べる。


 そう、全ては俺基準に世界は回ってると思っている。だから人に合わせるとか妥協するとか我慢するとが嫌なのだ。


 嫌な思いするぐらいなら1人がいい。

 俺はそう思う。


 だが、勘違いするなよ!友達はいない訳ではないぞ!


 え?結局いるのかい!って思ったよな?


 その友達は俺にとって、都合がいいのだ。

 俺の友達も後ほど紹介しよう。


 彼女とか欲しくないかって?


 冗談じゃない。


 彼女なんて、面倒に決まってる。


 ほら、我儘で疲れるし、結果的に財布にされてお終いになるのが目に見えている。


 だから彼女なんて俺の陰キャライフに必要ない。


 それに、本当に好きだった人に裏切られたときのあの気持ちはもう味わいたくない…


 ここまで陰キャライフを語ってきたが、やはり俺の陰キャっぷりは完璧だった…そう完璧だったのに…


 突然、そんな陰キャライフが崩壊する危機が起こった。


 いや、俺が起こしてしまったと言っても過言ではない。


 そう…あれは放課後のことだった…




 ◇◆◇◇◆◇


 俺の現在通っている高校、花桜東高校は自慢ではないが、まあまあ頭が良い学校として知られる。


 そんなことはさておき、本題に入ろう。


 俺は普段電車で、高校へと通学している。

 たが、面倒なことに、最寄りの駅から高校までは、約2キロ弱の道のりがあるのだ。

 なので、2キロ弱ほど歩かなければならない。


 勿論、駅から高校まで自転車で行く方法もあるが、いちいち高校に自転車通学許可証を発行してもらわなければならないらしい。

 

 俺は、その手続きが面倒なのと、たかが2キロぐらい歩いても構わないと思っている。


 なので、駅から、徒歩で学校まで行っているのだ。


 大体、俺は1人で通学している。

 俺の陰キャ友達とは行かないのかって?


 一緒に、行くのもありだが俺は基本音楽を聞いて行きたいのだ。

 俺が学校へ行く時の気持ちは、ボクサーの気持ちと同様だ。これから、戦いに行く…そういう気持ちなのだ。

 だから、入場曲気分で音楽を耳に流す…(曲はボカロだが…)

 これが、結構大事なのだ。


 で…本題の出来事の内容に入ろう。

 

 それは、学校が終わっての帰り道のことだった。


 普段は、学校が終わったら速攻で帰宅するのだが、その日は掃除当番だった。


 掃除当番なので、いつもより少し遅い時間帯に俺は帰ることになってしまった。


 俺は帰り道をトボトボと歩いていた。


 そして、俺の歩く少し先にある人が歩いていることに気づいた。


 少し先には同じクラスの清水奏きよみずかなでが歩いていた。


 清水奏は漫画とか、アニメでいうヒロイン枠だ。美しく、可憐な容姿、学力良し、運動神経良し、抜群のスタイル…まるで、女優だ。

 そう、一言でいえば美少女だった。


 性格は元気で明るく、誰にでも優しい天使みたいな人だと聞いたことがある…(陰キャ友達より)


 実際どうなのかは、わからないが…

 なぜかって?そりゃ、話したことがないからわからないのは当たり前じゃないか。


 俺とは無縁の存在。

 俺とは真逆の存在。

 俺の陰キャライフに必要ない存在。


 俺の陰キャストーリーには登場しないキャラクターだ。


 俺はそんなことを思いながら彼女が前を歩く姿を見ていた。(まあ、前にいるからね)


 そして、ここでアクシデントが起こった。


 彼女が信号を渡る時だった。


 歩行者の信号は赤にも関わらず、清水はボーッとして、渡ろうとしたのだ。

 そして、突然のごとく車が清水に迫った。

 このままでは、取り返しのつかない事故になる。


 まずい!


 このままじゃ彼女は車に轢かれてしまう。


 なんて考える間も無く、不思議と俺は走り出していた。


 そして間一髪。


 俺は彼女を抱えて前へと飛び込んだ。


 自動車はブレーキを踏んだが、大きく前進して、ようやく止まったようだ。

 俺が助けなかったら彼女は轢かれていただろう。


 俺と彼女は車道へと倒れた。


 「いたた…うわ…危なかった…」


 清水奏はそう呟いた。


 というか…なんだこの体勢は?


 俺の上に、彼女が抱きついていた。

 なんだ、恋愛ゲームに起こりがちな体勢は?

 

 最悪だ…

 

 これは、陰キャライフに起こるべきではないイベントだ。

 まるで、恋愛ゲームの主人公に起きそうなイベントではないか!


 早く、彼女をどかさなければ…


 「あっ…あなたは…」


 清水奏は俺を見る。

 

 近い…彼女との顔が近すぎる!

 少しでも動けば、俺の顔が、彼女の顔に触れてしまうほどの距離だった。


 俺の目の前には、美少女の顔が至近距離で向いていた。

 

 だっ…駄目だ…このままじゃ…

 

 それに、なるべく、助けたのが俺だと認知されたくはなかった。

 なぜかは、わからないが、美少女に関わりたくない陰キャの本能だろうか?


 まあ…どうせ俺のことなんて認知してないだろ。


 「陰田蒼君だよね?ありがとう助けてくれて…」

 

 「えっ?」


 俺は思わず声が漏れてしまった。


 「俺の名前…知っているのか…」


 「そりゃ、同じクラスだし、でも眼鏡かけてなかったから、一瞬わからなかったよ」


 「あ……眼鏡…」


 俺は言われて初めて眼鏡が無いことに気づいた。


 彼女を助けたときに眼鏡が飛んでしまっていたのか…


 俺の素顔が見られてしまった。


 「…………陰田君って…眼鏡無い方がカッコいいね…」

 「はぁ?」


 カッコいいだと?

 俺が?この、俺が?俺のとこがだ?

 コイツは何を言っているんだ?

 俺は彼女の言っている意味がわからなかった。


 「お、おい…とりあえず…避けてくれないか…」


 てか、まず俺から1秒でも早く離れて欲しかった。


 「あっ…ごめん!重かったよね…」


 ようやく、彼女の拘束から解放された…


 「大丈夫ですか?!怪我とかは?」


 周りの人達が集まって来た。

 まあ、側から見れば事故だからな…


 待て…これは、チャンスだ!


 俺はこの人だかりに紛れて走ってその場を逃げた。


 「あっ!待って!」


 俺は清水の声なんて無視してそのまま全速力で走り抜けた。


 おいおい…まるで、轢き逃げ犯みたいじゃないか!なんて、そんなことを考えている暇などはなかった。

 

 「ダメだ…陰キャがあんな美女と話してはいけない…」


 そう。


 陰キャたるものあんな恋愛ゲームみたいな展開はダメだ。

 あってはならない。


 今日起こったことは忘れよう。

 それが身のためだ。


 明日からも、俺は陰キャを貫くんだ!


 俺はそう心に誓ったのだから。


 明日以降に、何も起こらないことを願ったのだった。





 

 目立ってしまえば、存在を表せば自分を出せば、正直に生きれば、苦しみ地獄を見ることになる。


 俺はあの日から自分を殺し、偽りの自分を演じて生きてくことにした。


 全ては平和に、平凡な人生を送るため。





 


 


 


 

 


 

 

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