掌編「偏向学習」


 イラストを描いてくれるAIにお願いしてみた。

 頼んでみたのは――「AI絵師」だ。


「AIが描く『AI絵師』って、どんなイラストになるんだろう……」


 パソコンのモニターをキャンバスに見立てて、絵具をべったりとつけているのだろうか。

 それとも多くの文字を筆に乗せて振り回しているとか……?


 パソコン、文字、筆……このあたりは出力されるだろうと思う。

 だってAI絵師と言えばパソコンだし。


 一応、絵師だから、代表的な画材道具は使われるとして……、

 さてさて、どんなイラストができあがるのか、楽しみだなあ。



 ――指示の入力後は一瞬だった。


 人様に見せるためには細かいところを修正し、調整する必要があるが、ある程度は一回の出力でおおよそ完成するだろう。

 AIが思う「AI絵師」とは、こうなった――


 それは、



 シルエットだけならサンタクロースに見えるが、昔ながらのほっかむりを頭に被り、口の周りにはマジックで書いたような一周した黒いヒゲ。

 膨らんだ大きな袋を担いでおり……中年男性がパソコンのモニターの窓枠(?)に足をかけ、外に出ようとしているイラストだった。


 これは……泥棒……?


 他人の技術と絵柄を盗んで(拝借して)逃げようとする架空の絵師の姿がそこにあった。



「…………え? 自覚あるの?」



 …了

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