掌編「理想のテーマパーク」


 幽霊になった幼馴染とデートへいくことになった。


 彼女が生前、行きたがっていたテーマパーク……。開園オープン目前で彼女は死んでしまったので、結局、一緒にいくという約束を果たせなかったけど……、だからこそ彼女は幽霊となって、未練を残しこの世に留まってしまっているのだ。


 ……彼女を成仏させるためには、簡単だ……。

 一日、テーマパークで存分に遊べばいい。僕も行きたかったし、一石二鳥だ。


「やーくん、ありがとね……わたしが死んでも付き合ってくれて」


「そんなの……だって元々約束してたんだから……もちろん付き合うよ」


 幼馴染の手を握る。触れる、見える……。

 他の人には見えていないだろうけど、僕だけが分かればそれでいいのだ。


 チケット売り場で入場券を購入し、受付があるゲートへ向かう。

 受付のお兄さんにチケットを渡して、テーマパークの中へ入り――



「あ、君。ふたりで入るならチケットは二枚ないとダメだよ?」



「え? …………お兄さん、もしかして、見えてる……?」


「あぁ……悪いね、私は幽霊が見えるんだよ。……よくいるんだよね、幽霊連れ。高校生一枚分の料金を払わずに入るズルは認められないからね――。……安くないのは分かってるけど、ここはちゃんと払ってくれるかな?」


「…………」

「幽霊でもひとりとしてカウントするよ。他のお客さんには見えていないかもしれないけど、私たち『従業員デスマーチ』はきちんと見えているから……困った時の園内での対応は任せてくれ……。その代わり、タダではこの先の『理想の国』を歩かせるわけにはいかない」


 幽霊分の入場料。


 まあ、払えないわけでもないけど……。


「払ってくれれば、そこの幽霊ちゃんも含めて存分に楽しませるさ――

 それが私たちの『お仕事デスマーチ』だからね」



 …了

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