羽根を持った飛び魚

@peacetohanage

第1話

南の方にある小さな楽園(島)に、一匹の空飛ぶ魚が住んでいた。

彼は飛ぶ事(飛び魚)が得意で、もっともっと空を飛びたいと願う内に二枚のヒレが羽根に変身したのだ。

彼はココヤシを飲んだり、バナナを食べて過ごし膨大な時間を気ままに満喫していた。

ある日、一羽の渡り鳥が島に遊びに来て、魚は彼を歓迎した。

それから鳥が再び地に帰る日まで、二人は共に過ごす事にする。

二人で釣りをしたり、夜には焚き火を焚いて語り合ったり…浜辺には幾つもの立派な砂の城が建造された。

そうしてついに鳥が再び渡る時が来たのだが、島を離れる事が嫌になり来年のその日まで残る事に決めた。

その次の日、二人はささやかなキッカケで喧嘩をしてしまう。

鳥の大切な貝殻を魚が割ってしまい、そんなささやかなキッカケで互いの貶し合いにまで発展をした。

とうとう鳥は島を出て、地に帰ってしまった様だ。

夜になっても、次の日になっても、またその次の日になっても鳥は島へ帰って来なかった。

魚は後悔し、そうして行き先の知らない鳥の事を考える。

「僕には羽根が有るんだ。どこへだって飛んで行ける。そうさ、島をしばらく留守にして旅に出よう。きっとまた会えるさ」

楽園にはもう魚の姿は無く、たわわに実るココヤシが暖かな風にそよぐばかり。


おわり

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