男の俺からあげてもいいよな?

しがと

第1話 告白に最適な日

「今年のバレンタインどうする?」

「告白しようかな」

「手作り頑張ろう」

 バレンタインまであと2週間余り。みんなドキドキし始める時期。俺は、バレンタインを利用して好きな奴に告白すると決めていた。


 花崎恵那はなさきえな。俺の好きな奴。高校の同級生で、いつも俺と成績を争っている。どちらが下か、で。

 花崎は、ばかだけど、(俺が言えることではないが)、優しくて面白い。周りを巻きこんで何かをするのが得意だ。体育祭や文化祭の時は、クラス全体の盛り上げ役をやっていた。いつもきらきらした笑顔で楽しそうにしているあいつが俺は好きだ。だからこそ、告白する。あいつからチョコをもらえずに撃沈するのを防ぐために。


 1ヶ月ほど前に、好きなお菓子を聞いたら、何でも好きだと言っていた。それならば、キャンディ、ドーナツ、マカロンを手作りして贈ろうじゃないか! その意味を理解してくれるか分からないが。


 そうこうして準備を進め、納得いく出来のお菓子をきれいに箱につめてラッピングをした。あとは渡すだけ。


 その日は俺のクラスもあいつのクラスも移動教室が多く、なかなか会えず放課後になってしまった。


 あいつのクラスに行ったら、ひとりで寂しそうにお菓子が入っているであろう袋を見つめていた。


 振られたのか……?


 そっとしておくべきか。そう思ったけれど、好きな女を悲しませたままでは帰れない。そう思った俺は、花崎、と声をかけていた。

「あ、佐田」

 そう言って顔をあげた花崎は泣いていた。

「振られちゃった」

 そう言ってまた泣き出したので、俺は持っていたティッシュをあげた。(ハンカチはぐちゃぐちゃで渡せなかった)

「ありがと」

 落ち着いたのか、ぽつぽつと話してくれた。

「好きな人がいてね。半年前くらいかな。自覚したの。本命渡そうと思って作ったんだけど、その人も本命を誰かに渡すみたいで。告白する前に振られちゃった」

「そうか」

「ごめんね、こんな話」

「いや。俺、すげー悪いやつになるわ」

「ん?」

「これ。本命。お前に」

「……」

「……」

 あ、待って。いらねぇ? どうでもいい男から手作りとかいらねぇか。そう思い直し、袋を引っ込めようとしたら。


 がしっ


「え?」

「私にくれるの?」

 そう言った花崎の目が潤んでいた。

「は? なんで泣いてんだよ? そんなにいやか?」

「違う! 私佐田が好きで、振られたと思ったの!」

「え?」

「これ。本命です」

 やっべ。え? 好きな子と両想いとかまじて? 嬉しすぎてやばい。

「あー、この後時間あるか?」

「え、あるけど」

「告白仕切り直させてほしい。かっこつけてぇわ」

「うん。まあかっこつけなくてもかっこいいけどね?」

「あんがと。かわいー、お前」

 そう言ったら、花崎は茹でダコみたいに顔を赤くした。


 その後。ちゃんとかっこつけて告白をして無事に交際を始めたのだった。


 そして家に帰って、もらったお菓子をみたら、キャンディ、ドーナツ、マカロンだった。まじで? 同じこと考えてる? そう思ったら花崎から、考えてること同じだね!、とかわいいスタンプとともに連絡がきた。思考回路も同じとか最高だな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

男の俺からあげてもいいよな? しがと @Shigato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ