「宵風」

 ラーメン屋で慣れないビール飲んで

 居酒屋もハシゴして

 コートも脱がないまま

 泥のように眠ってた


 何食べたんだっけ

 そうだカツ丼も食べたんだった

 あとは何飲んだんだっけ

 ちゃんと忘れてるのに


 他に好きな人がいるのって

 君のたった一言と

 すまなそうな苦笑いはなぜか覚えてる


 シャツも脱がずに

 冷たいシャワー頭から浴びても

 酔いも気分も晴れないままさ


 夢の中でなら

 君を僕のものにできるかな、なんて



 風邪をひいて

 体温計咥えて

 毛布被っても

 思い出すのは君のことばかり


 いつか僕が寝込んで

 他のやつらと一緒に

 君も看病に来てくれたっけ


 今度は君だけで

 僕のために来てくれないかなって

 熱にうかされてたのかな



 本当はもっと早く

 気づくべきだったんだ

 不意に髪型を変えたのも

 知らないタバコの匂いも

 僕じゃない知らない誰かのためだって


 ああ神様はなんて残酷なんでしょう

 たったひとり君だけが欲しいって

 そんなささやかな願いも

 月よりも星よりも遠いものにしてしまうなんてね

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る