きりなが とうま

嘘か真か

 自殺願望、という言葉がこの世には存在する。


 動物などの言語を持たない生物の声を聴いたことはないが、人間と同じように自殺願望はあるのだろうか。


そんなどうでも良い疑問をベッドの中でふと考えた。


 こんなことを考えられるのは私が堕落した大学生活を送っているからなのだろう。


忙しく仕事をしている社会人やサークルで青春を謳歌している大学生などはこんなことを考える暇はない。


ダメ人間だからこそ考えるようなことなのだ。


 スマホ、ネトゲ、終いには栄養価の偏ったカップ麺を貪る日々。


人間としての最低限度の生活も送れていないダメ人間。


いっそのこと殺してくれ、とも思うし自死直前まではやってみた。が、気づいたのだ。



死ぬこと=痛い



ということに。


足がすくむ、手が震える、冷や汗が止まらない。


あれだけ死にたいと思っていても死が直前に迫ると恐怖が先行してしまうのだ。


そしてなぜか疑問に思った。


 動物は死にたくなることがあるのだろうか、と。



 人間の自殺願望の原因を集約すれば人間関係のストレスもしくは孤独になるだろう。


では動物でも同じなのか、と考えるとどうだろうか。


集団で行動する動物は一匹になった瞬間、孤独を感じることがあるかもしれないが、集団で生活しない、例えば熊などが孤独になった瞬間死にたいと感じることはなさそうだ。


あくまで憶測だが。


 この疑問を私的に総括して言えば自殺願望を抱く動物もいれば、そうではない動物も存在するのだろう。


人間と同じだ。


だったら私は確実に死にたい側の人間だと思う。何しろこんなことを考えているのだから。


 情けない、そう思う。生きてこうして食べ物に困らずある程度の娯楽とお金がありながらこんなことを考えてしまう自分が情けない。


死にたいが死にたくない。




そうやって友人は死んでいった。




あれだけ死にたくないともがき苦しみながら死とは何か、死んでもいいのか、情けない、生きたい、と言っていた友人が死んだ。



自殺を止められた、などと偉そうなことは言えないが、悩んでいるときに何故気づくことができなかったのかと今になって思う。


 人間は死というドツボにはまってしまうと自力でも他力でも抜け出せないのだなと、二十歳を目前に感じた出来事だった。そして今私はベッドの中で横たわりながら友人のことを考えている。



実話ですが創作です。

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きりなが とうま @kirinagatoma

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