第57話 結成 秘密結社暁月

「リーダー姉御。こっちは終わったやす」

「流石。キスケ手際がいいな」

「へへ。元農家でやしたし、鎌の使い方はピカイチですぜ」

「キスケこっちも手伝ってー」

「へい!ただいま」


 白を誘拐しそこねた3人組。リーダートウヤ、姉御アネモネ、腰の低いキスケは、田舎の農村で家を持ち畑作業に殉じていた。

 そこに1匹の鶏?のプレイヤーがふらりと現れた。


「コケ……お腹、空いた……バタッ」


 その鶏は、逸れていたアウローラだった。貧乏神のせいで何もご飯を食べれていなく、空腹で行き倒れていた。


「おいおい大丈夫か?」

「キスケ!畑はいいから、お家から水と握り飯持ってきて」

「へい!姉御」


 木陰に寝かされたアウローラは、キスケが持ってきた握り飯具なしを貪り尽くす。


「美味しかったコケー!!助かったコケ!あ、あたしアウローラ」

「お、おう。俺はトウヤ」

「あたしはアネモネよ」

「あっしは、キスケでやす」

「うん!宜しく!」


 3人はアウローラの瞳の【竜魂ドラゴンソウルの瞳】を見て固まる。


「そ、その瞳は?」

「ん?これ?クエレブレ。あたしのお友達のドラゴンクーちゃんに貰ったよ」

「混沌ドラゴンクエレブレ……」

「急にどうしたの?コケー!」


 3人がアウローラの前に膝をつく。慌てるアウローラ。


「俺、いや私どもの御神体となって下さい!」

「ゑ。うえー!!」

「あたしたちは、混沌ドラゴン様の信者」

「あっしたちは、その瞳を持つ方を探してやした」

「だからどうか!」

「んーじゃあ友達からって事で」


 パァッと笑顔になる3人。此処に秘密結社暁月は結成された。そこで畑仕事を数日やっていると、ふくよかなおじさんが通りかかる。アウローラはお金が使えない為、畑仕事をしながら食料を確保する為に日々を費やしていた。


「マッマッマ。ここまで逃げれば大丈夫だろう」


 馬車を引いて通りかかったのは、【元アランガント】のお抱え商人マネマニである。この男は、あの混乱の中、店の全財産を持って逃げ出す事に成功していた。


「コッコッコケー!今日のもろこしも美味しいな〜汗水流して育てた作物美味しいな〜コケ?」


 嘴でとうもろこしを咥えたアウローラが、マネマニの馬車の前を通りかかる。


「マッマッマ。これはまた不死鳥フェニックスの子供とでも言えば、高く売れそうな異界人だのー」

「き、きも」


 気持ち悪い視線で身がすくむ。


「秘技【ゴールドスプラッシュ】!!」


【ゴールドスプラッシュ】種目:アクティブ MP:5

 効果:自分の財産を撒き散らし注意を惹きつける。


「コケー」


 アウローラの視線がお金の方に吸い寄せられているのを確認してから、そそくさとマネマニは背後に回った。


「【ゲージ】と、マッマッマ!簡単簡単」

「コケ!!ここから出すコケー!!」

「出すわけねえだろ。お前はどっかの貴族に高値で売るんだからよーマッマッマ!!」

「コケー!!あ」

「マ?」


 マネマニの馬車には大量の金貨が積み込まれており、アウローラは急いで【火事】を発動させる。次の瞬間マネマニの大量の金貨が【禍福かふくあざなえる縄の如し】の効果で大爆発を起こし、マネマニはそれに巻き込まれて爆死した。

 アウローラは【不死鳥】で【火事】の炎に蘇生される。


「ふう。危なかったケー」


『サブクエスト:旧アランガントの悪徳商人を捕縛もしくは、殺害をクリアしました。報酬として、マネマニの資産の1/4がアウローラに譲渡されます。【禍福かふくあざなえる縄の如し】の効果によって獲得した資産が消し飛びました』


「おうふ。損はしてないのに、損した気分。こうなったらやけだ!!馬さん!!あそこの畑まで乗せて行って!一緒に野菜食べよ!!」

「ヒヒーン」


 馬とアウローラは一緒に畑で取れた野菜を食べたのであった。


『アウローラは、【煤汚れた馬】の仮主人になりました』

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