第54話 キメラ解放戦

「ふぁー」


 ひるねがふよふよと現実に戻って来る。


「ひるねちゃん!」

「ひるねお姉ちゃんやったんだね!」

「お帰りなさい」

「ひるね様どうぞクッションです」

「んーありがと。お休みなさいzZ」


 白がちゃっとクッションを取り出し、みんなで今にも倒れそうなひるねをクッションに誘導する。

 ひるねはスライムのようにぐてーと溶けながら、クッションと同化する。


「寝ちゃいましたの」

「これからどうする?」

「そうね〜」

「取り敢えずさっきから音が凄い南に行ってみようか。キャロさんひるね様をお願いしても?」

「はーい。よっと、あらひるねちゃんて思いの外軽いわ」


 キャロがひるねの頭を肩に乗せるように抱き抱える。


「そうなんですのね?」

「むにゃむにゃ」

「何か食べてるのかな?」

「かも知れないわ」

「さて、皆さん王は倒しました。ですが、今だに此処は敵地ど真ん中です。慎重に行きましょう」


 白の言葉に3人頷き、こそこそと城を後にした。南に向かう途中、デットやルビア等と出会い一悶着があったとか、無かったとか。


 少し時間が遡り、メアたちはというと?

 キメラ相手に苦戦を強いられている南門では、メアとニャル子が奮闘する中。

 四神が罠にハマり囚われてしまっていた。


「この結界壊れないケー!!」

「我が遅れをとるとは……」

「わたくしたちの能力が封じられてしまったのー」

「儂たちが〜一矢報いる事もー出来なんわ」

「すまないが、メア殿、ニャル子殿、宜しく頼む」


 頭を下げる四神たち。


「ニャーたちに任せるにゃ!!」

「にゃん!メアたちに任せるにゃ」

「恩にきる」


 メアたちは胸を張って宣言したが、今回に限っては余り自信がなかった。どうしたものかキメラの攻撃を避けていた。

 その時、ひるねがクエストをクリアし、その報酬として2つの称号を授与されましたと視界の端に表示された。


 称号:【死神の代行者】

 効果:一度に100,000,000以上の魂を解放した。特定npc死神の残業が決定しました。魂を救った事への感謝を、私たちは急な仕事でパンクしました。至急現世の死神は冥界に帰還して助けて下さい。

 特殊武器:【死神の爪】特殊防具:【死神のマント】特殊装飾:【幸運を齎す死神猫の尻尾用カンテラ】が統合し、特殊防具:【死神代行猫セット】に進化しました。

 特殊防具:【死神代行猫セット】HP(+?)MP(+?)腕力(+84)耐久(+84)技量(-84)幸運(+84)

【カルマイーター】【輪廻転生】【霊蒼炎】装備スキル

 効果:倒した相手のカルマ値を喰らい自身の基礎HPと基礎MPを上昇させる。

 祈る事で彷徨える魂を冥界へと送る事が出来る。また、送った魂の数だけ、戦闘中であっても死んだ場合そのバトルフィールドに転生出来る。

 着ていると死神としての身分が証明され、教会では手厚い恩恵を受けられる。

 蒼炎が照らす。この炎は、基本味方と彷徨える魂のみが見える。近寄って来た浮遊霊を冥府へと送ってくれる。

 死神と行動を共にし、死神を助け死んでしまった猫さんの魂が宿っている。稀に猫さんが現れ助けてくれるかも?

 この防具は、奪われず、壊れず、譲渡不可。


 称号:【獣人の英雄】

 効果:100,000以上の獣人を1日で救った。

 特殊npcハヤグリーヴァが貴女の事を気に入りました。

 特殊武器:【スダルシャナ・チャクラム】をプレゼントされました。

 特殊武器:【スダルシャナ・チャクラム】

【畜生道】装備スキル

 効果:手で触れた場所、人、物の邪悪を弱め毒を中和する。獣人、動物に触ると呪いや怪我などを健康な状態に戻す。

 この武器は、奪われず、壊れず、譲渡不可。


 いつもの様に枠が余っていたので、強制装備された【スダルシャナ・チャクラム】は手首から身体の周りをぐるぐると回るように薄い緑色のエネルギーが漂い始めた。


「メアにゃんが急に光だしたにゃ?!」

「にゃん。にゃんかひる姉ぇが無茶したみたいにゃ、どうにゃるか分からにゃいけど、取り敢えず殴ってみるにゃ!!」

「ふしゃー!!」


 近づいてきたキメラに向かって猫パンチを当てようとすると、緑のエネルギーが前脚に集まり、キメラに当たった瞬間、そのエネルギーはキメラの体内を駆け巡り、全身に巡り回った瞬間煙と共に元の獣人の死体と、掛け合わされたモンスターに分離したのだった。


「ふ、ふしゃー……」


 急に分離されたものだから、ヒョウ型のモンスターの威勢が小さくなっていく。


「キ?!」

「「にゃ……」」

「「「「えーーーーーー!!!!!」」」」


 敵味方関係なく驚愕する一同。

 キメラ融合は謂わば、獣人の身体を弄り改造する事、その者が持つ本来の姿ではないのだ。つまり、【スダルシャナ・チャクラム】の治す力の範疇だったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る