第41話 死神戦場へ舞い降りる。

 夕陽が落ち、月灯が雲から零れ落ちる。

 その時【夢遊病:悪夢《ナイトメア》】が発動し、耐久が2倍になり、腕力が1/2倍に落ちる。

 これから攻撃開始だという時、火力は重要だろう。

 しかし今回の戦いにおいて、火力よりも、耐久が大事だった。これから行う戦いにおいて、人々に恐怖を与える為だ。

 火力が上がれば、一撃で死ぬだろう。しかし、一撃で死ぬという事は、痛みは一瞬という事。

 そうメアは静かにキレていた。姉であるひるねに害をなした【アランガント】の人々に対し、怒りが沸々と煮えたぎっていたのだ。

 だから考えた。どうしたら、人々を最大源に苦しめ、最大限に恐怖させ、殺すかを。

 刺した相手が一切避けず、笑みを浮かべながらが迫ってきたらどうだろうか?と、メアは例え殺せたとしても【輪廻転生】で蘇ってくる。そんな死神が戦場に舞い降りようとしていた。

 メアはこの戦いに置いて、使用する攻撃スキル【切り裂く】のみ。さあ、恐怖で慄くが良い愚民ども。


「にゃははは!!人がゴミのようにゃ!」

「ニャルたちの戦力は圧倒的にゃり!」

「さあ!我らも玄じぃに続くぞ!!」

「やったるケー!!」

「わたくしたちの力見せてやるのじゃ!!」


 上空で浮遊していた残りの四神たちと共に、地面に降り立つ。玄武の攻撃をギリギリで交わした兵士や、プレイヤーたちを威嚇すると、恐怖でガタガタと震える兵士たち。プレイヤーは死を恐れないだからこそ、強者と戦えることに狂喜し、各々の装備を構える。


「獣共を殺せーーー!!!俺らは誇り高き【アランガント】の兵ぞ!!」

「「「おう!!」」」

「私たちも行くぞー!!」

「へっへっへ。俺のナイフが血を啜りてえってよ」


 四神たちは玄武が離脱するのを見届けると、散開し、迫ってくる兵どもに攻撃を仕掛けて行く。

 白虎は圧倒的なスピードで戦場を駆け回り、その通った道には数秒後に雷が落ちて行く。

 朱雀は、近づく物、魔法や武器を関係なく、見に纏う炎で溶かしながら優雅に戦場を歩く、何故か水魔法を放つ者には嬉々として飛びかかっていた。

 青龍の周りには、いつの間にか雨が降り、地面から巨大な根っこらしき物が動めいていた。

 阿鼻叫喚。

 それを岩の上から眺めるメアとニャル子に近づく人たち。


「何で猫が居るんだ?」

「何か装備もボロいわね」

「弱そうだし、俺らでも殺れそうだな!」

「行くぞ!!」


 メアの事を知らない、哀れな子羊ちゃんたちが眼下に迫ってくる。ニャル子は岩から落ちて直ぐに【隠密】で姿を隠す。

 メアはその場を動かない。


「逃げねえなら死にやがれ!!【ソードインペイル】!!」


 先頭にいた男の剣が一直線にメアの身体を貫く。


【ソードインペイル】種目:アクティブ MP:20

 効果:剣で相手を貫く攻撃を放つ。使用中他の動作が出来ない。腕力2.5倍にする。

 クールタイム:10秒


「よっしゃあ!!」


 男は喜ぶ。だが気づいていない、経験値が入っていない事を。メアは刺されたままにやぁと笑う。

【液状化】でマントの下を液体にしていたのだ。そうとは知らず、後ろを向く男に向かって攻撃を仕掛ける。


「残念【切り裂く】にゃ」

「ほえ?」

「「?!」」


 首が落ちて行く中、最後に見たのは何ごとも無かったように笑う黒猫だった。

 そして男の死に動揺したプレイヤーたちの背後から、ニャル子が姿を現す。


「【隠刀】戦場で油断は命取りにゃよ」


 そして男女2人の首を小さな刀で切り落とした。プレイヤー2人は、自分たちが殺された事も知らずにポリゴンになって消えていった。


【隠刀】種目:アクティブ MP:30

 効果:【隠密】発動している時のみ使用できるスキル。腕力を2倍にし、相手の物理防御力を1/5下げる。

 クールタイム:30秒


 メアとニャル子は目配せをすると、戦場に向けて移動を開始した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る