第35話 白とひるねとマリー

「や!」

「にゃ!」

「こうですの!」

「逃がさないにゃ!」


 ひるねはテンションが上がった2つの声で起きる。

 白はマリーが悪いやつでは無いと感じた、マリーは只々駄目なことを知らない王女様。好奇心旺盛で特にモンスターに興味を持っていた。

 駄目な事を駄目だと叱る者が居なかったから、無邪気なままにモンスターを殺してしまっていたのだ。


「ふぁーおはよう、白さん」

「あっ!おはようございます!ひるね様!」

「おはようですの」

「……貴女だ〜れ?」


 ひるねが起きると和気藹々と猫じゃらしで遊ぶ白とマリーが目に入る。

 白は直ぐさまひるねの前に行きお座りをする。その視線はマリーの手にある猫じゃらしを狙っている。


「わたくしはマリー・アランガントですの。この国の第一王女ですの!」


 ふんすっと鼻息荒く、無い胸を張って自己紹介するマリー。ひるねも眠たそうに自己紹介をする。


「わたしはひるねよろしく〜」

「宜しくですの!」

「あ、白さんや、故郷の場所は分かったの?」

「は!?忘れてました」


 猫じゃらしに夢中になり完全に目的を忘れていた白さん。


「白さんー」

「にゃ……」


 じとーと見つめられて一歩後退る白。

 マリーは近隣の地図を棚から持って来てくれていた。


「白くんの故郷は多分此処から南に行った所ですの」

「あ、ありがとうマリー」

「良かったね、白さん」

「はい!」


 故郷の場所が分かり元気に返事する白。

 マリーは俯きながら白に尋ねる。


「やっぱり、帰ってしまいますのね」

「あ……」


 マリーの言葉に、どうしたらいいのか分からず押し黙る白。


「どうしたの?」

「ひるね様実は……」


 ひるねは白からマリーの現在の状況を聞く。


「成程ね……ねえ、マリーちゃん」

「ひるね様?」

「何かしら?ひるねちゃん」

「貴女はどうしたい?此処に残る?それともわたしたちと此処を出る?」

「わたくしは……」

「此処に残るなら、マリーちゃんはわたしたちの敵だよ。もう直ぐ此処は戦場になるから」

「それはどういう……」


 キョトンと首を傾げるマリー。白も何を言い出すのかとひるねを見つめる。


「起きる時にステータスを見たら、わたしの妹のメアのステータスが見れたの。そしたらそこに『緊急クエスト:白虎の愛子の救出戦に参加しました』って書いてあったの、それに中の四神がこっちに向かっているみたい。其処の白さんを助けにね」

「母様が!」

「わたくしがあんな事をお願いしたばかりに……」


 マリーは顔を青ざめる。これからこの国に沢山の血が流れるのだと悟ったからだ。


「確かにキッカケはマリーちゃん。だけど、原因はこの国のあり方、この国の人は人種しか認めていない、それも獣人すら認めない徹底ぶり、心当たりがあるんじゃない?」

「確かに、わたくしがペットのモンスターを殺してしまった時も、何も怒られなかったですの。それにお父様は、獣人の方達を虐めるのが趣味ですの」

「マリー」


 白は唇を噛みながら腰を落としたマリーの身体に寄り添い慰める。マリーは白の身体を優しく撫でる。そして決心が付いたのか立ち上がる。


「ひるねちゃん。白くん。わたくしお父様と戦いますわ」

「あは!良く言ったね。マリーちゃん!わたしはマリーちゃんを応援するよ!」

「マリー僕もこの国を変えるのを手伝うよ!」

「ありがとうですの」


 ひるねは妖艶な笑みを浮かべる。ひるねの影から深淵が漏れ出し始めた。


『国落クエスト:マリーの思い。人類国家アランガントの滅亡に参加しました』

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