桃太郎part4

Grisly

桃太郎part4

最も偉大な男が死んだ。


村中が悲しみに暮れ、

葬儀は村をあげての壮大な物となった。




お爺さんが口を開く。


「皆さん、

 今日はお集まり頂き

 ありがとうございます。


 彼はまっすぐ、ただまっすぐな男でした。

 村のため、人々のため、

 ただひたすらに生きた。

 

 こんなにも多くの人に集まって頂き、

 嬉しい限りです。

 彼も喜んでいる事でしょう。


 しかし、余りにも早すぎ…」




突然、涙ぐみ、言葉が出なくなった。

無理もない。27歳。

偉大な男の死は、余りにも早すぎた。


1度に100人分の力を出せる吉備団子。

その副作用、体にかかる負担は

計り知れない物である。


それでも、この村のために、

彼はまっすぐに生き、死んでいったのだ。




村人達は熱くなった。


果たして俺達にも、

彼のような事ができるだろうか。

ただひたすら他者の幸福のために、

その身を捧げ、振り返る事なく…


いや、やらねばならない。

彼の棺の前に立ち、

その安らかな顔を目の当たりにして、

村人達は、決意を固くした。


彼こそ英雄。彼こそ偉大な男なのだ。




ちょうどこの頃、

鬼達に不穏な動きがあった。


桃太郎の死。彼等にとってそれは、

再び失われた栄光の時を取り返す

絶好の機会だった。


敗戦の教訓と言った物だろうか。

何故か彼等は、

ここ数年で恐ろしい程の

パワーアップを遂げていたのだ。




鬼達の猛攻に、

押されかけていた村人達だったが、

この葬儀は皆の心を一つにした。

彼の遺志を引き継ごう。


葬式後、村人達はお爺さんの元へ集った。


「俺達もようやく覚悟ができた。

 彼の遺志を引き継ぎ、

 この村を守らせてほしい。

 

 是非、吉備団子を売って下さい。」




お爺さんは涙を流した。

彼の遺志を継いでくれる者達が現れたのだ。


「丁度、新型の吉備団子がある。

 少々値が張るが、村のために戦ってくれ。」


村人達は心を一つに鬼と戦う。







勘の良い人なら気づいただろう。

この話、ただの良い話では片付けられない。


1人だけ、大儲けしている者がいる。

その者こそが、

秘密裏に鬼に吉備団子を流し、

村人達にも吉備団子を買わせ…







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桃太郎part4 Grisly @grisly

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