禁じられた森の守護者
青木タンジ
不思議な出会い
第1話 不思議な出会い
太陽が地平線に沈みかけ、セルドリアン王国の広大な農地が金色に染まる頃、エリオット・グレイブスは一日の仕事を終えて家へと戻る道を歩いていた。彼の肩には使い古された鍬がかかり、手には汗と土でごわついた手袋をはめている。エリオットはその日も長い一日を過ごし、体は疲れていたが、心は満足感でいっぱいだった。彼は自分の生まれ育ったこの土地を愛し、自然と共に生きることに大きな誇りを感じていた。
家に近づくと、エリオットの足は無意識のうちに、彼をいつもとは違う方向、禁じられた森の端へと導いた。森は魔法と古い伝説に満ちており、村の人々の間では様々な話が囁かれていた。しかしエリオットにとって、その森は常に不思議で魅力的な場所だった。彼は子供の頃から、森の奥深くには何か特別なものが隠されていると信じて疑わなかった。
その日、エリオットは森の端に佇むと、ふと奇妙な光が木々の間を彷徨うのを目にした。それは自然界のものとは異なる、不思議な輝きだった。好奇心が彼の心を掴み、疲れた体を忘れさせた。彼は慎重に、しかし確かな足取りで光の源へと近づいていった。
木々が密集する場所に差し掛かると、光は突然消え、エリオットの目の前には傷ついた鹿が横たわっていた。鹿の体は傷だらけで、痛々しいほどに弱々しく見えたが、その目には不思議なほどの知性が宿っているように見えた。エリオットはこの生き物がただの鹿ではないことを直感した。彼は手袋を脱ぎ、ゆっくりと鹿に近づき、声をかけながらその傷を確認した。
「大丈夫かい? ここから動かないでくれ。助けてあげるから」とエリオットは優しく囁いた。鹿は彼の声に反応し、怯えた目を少しだけ落ち着かせたように見えた。
エリオットは鹿を抱え上げると、自分の家へと急いだ。彼の家族は畑から離れた小さな家に住んでおり、人目を避けて鹿を連れていくことができた。家に着くと、エリオットは鹿を柔らかい干し草の上に横たえ、家から持ち出した薬草と水で傷の手当てを始めた。
夜が更けていく中、鹿の姿は突如として変わり始めた。輝く光に包まれた瞬間、鹿は美しいエルフの姿へと変わった。エリオットは目を疑ったが、目の前に立つのは間違いなく、傷ついた鹿だった生き物、アレン・フォレストウォーカーだった。
「君のおかげで助かった、エリオット・グレイブス」とアレンは静かに言った。その声は森そのもののように深く、落ち着いていた。
この出会いは、エリオットとアレンの運命を永遠に変えることになると、その時の二人はまだ知る由もなかった。
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