飲みゲー文化保存サークル

大藤晴希

プロローグ


 飲みゲーとは。


 読んで字のごとく、何かを飲みながら行うゲームのことである。


 この場合、飲み物はどんなものでも構わない。

 ビールやワイン、日本酒などのお酒はもちろん、水でもいいのだ。


 そして飲み物を片手に持ち、人々は談笑する。

 どの授業が楽単なのか、バイト先に可愛い子はいるのか、最近起こったどうでもいい話をするのだ。


 そんな和やかな空気を切り裂くのが、ゲーム開始を知らせる『コール』である。

 一番有名なコールは、やはり『山手線ゲーム! お題を用意!』だろうか。


 何を言っているのかがわからない人が大半かと思うので、軽く山手線ゲームについても触れておこう。


 このゲームの最小催行人数は二人。

 まずコールを叫んだ人物が『お題』を用意する。お題はゲーム名になっている山手線の駅名でも、歴史上の人物でもいい。


 お題さえ決まればあとは簡単。リズムよく二回両手を打ち鳴らし、お題に沿った名詞を交互に発言していくのだ。


 そしてテーマから外れた言葉を言った者、既に言われてしまった言葉を繰り返した者、リズムから外れて発言した者が負けとなるとても単純なルールである。


 では、ここで負けた者が何をするのか?

 こちらも単純で、ただ一杯の飲料を飲めばいいのだ。


 この飲み物がアルコール飲料の場合、負けた者は次の試合で頭が回らなくなり、さらに負ける可能性が高くなる。トランプの大富豪のようなものだ。

 ただ、大富豪と唯一違う点がある。


 それは『お酒を飲むと楽しい』ということだ。


 大富豪ならば、負け続ける状況は決して楽しくない。

 それに比べて飲みゲーはどうだ? 負けても美味しい飲み物が手に入るなんて、かなりハッピーじゃないか?


 もちろんゲームに勝った方が損をすることもない。

 勝者側には『おめでとう』コールなるものが与えられ、飲料を手にするチャンスがしっかり回ってくるのだ。


 ただこのコールについて説明するには紙面が小さすぎるので、今回は割愛させていただく。


 さて、ここまでこの文章を読んでくれた君はもう立派な飲みゲーマスターだ。

 つい先ほどまで飲みゲーもコールも知らなかったのに、恐らく一分ほど飲みゲーについて語れるのではないか?


 そしてこうも思っているはずだ。

『なんて意味のわからないサークルのチラシを受け取ってしまったんだ! ゴミ箱行きだ! 資源の無駄だ!』と。


 だが、君はまだ本当の我々を知らない。

 どのようにこの飲みゲーという文化を知り、活動し、布教し、保存しているのかを。

 もしも気になるようだったら、是非『飲みゲー文化保存サークル』の扉を叩いてほしい。

 新歓食事会、六日にやるので来てね!


 文責 社会学部三年 飯酒盃正宗

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