天使と悪魔と捨て猫と。
音佐りんご。
◇Phase 1◇
【戦場】
響く雷鳴と剣戟の音。
悪魔〈ドライアン〉と天使〈カルミア〉が戦いながら話している。
ドライアン:ぬおおっっ!!
カルミア:っは!
ドライアン:てりゃぁっ!!
カルミア:――遅い。とぁ!
ドライアン:っく! ふははは! 相変わらずやるじゃねぇか、天使さんよぉ!
カルミア:貴様もな。
ドライアン:おぉ、なんだぁ? 認めて……っ! くれるってかぁ? 可愛い天使よぉ!
カルミア:はぁぁあっ……! やめろ、――鳥肌が立つわ。ウスノロ悪魔。相変わらず貴様は弱いと言ったまで。
ドライアン:そう、かよっ! その割にはいっつも俺に勝て無いじゃねぇか、えぇ?
カルミア:
ドライアン:っは、てめぇこそ顔色が悪いぜ。こうやって正面切って闘ってっと、泣きそうな面しやがるくせに。いつもは許してやってんだ、弱い者いじめは好きじゃねぇからよ。
カルミア:悪魔のくせによく言う。貴様の顔が見るに堪えないからだ。この私が手を抜いているとも知らず図に乗りおって。……いや、口が減らないのは悪魔だから、か?
ドライアン:はぁ?
カルミア:言葉で
ドライアン:上等だ! 脳筋ゴリラ天使。今日こそはその高ぇとこから引きずり下ろして土下座で泣かしてやる。
カルミア:っは! よかろう。今日こそは地に平伏させてその汚い声で鳴かしてやるわ。
ドライアン:うおぉぉぉぉ! 天使ぃぃっ!
カルミア:はぁぁぁぁっ! 悪魔!
続く剣戟の音と、時折混ざる両者の怒声や笑い声。
やがてその音が止むと、仰向けに寝転がり息の上がった二人の声。
ドライアン:……っく、はぁ、はぁ――
カルミア:……ん、はぁ、はぁ――
ドライアン:ぁぁあ、っくそ、またか!
カルミア:こちらの、台詞だ。忌々しい……!
ドライアン:何度目だ、えぇ?
カルミア:そんなもの数えるか、馬鹿者。
ドライアン:はは、教えてやる、これで七十四回だ。
カルミア:っ、貴様いちいちそんなもの数えておったのか、……だから負けるんだ。
ドライアン:負けてねぇ、引き分け。
カルミア:天使にとって悪魔との引き分けなぞ、敗北と同義だ。
ドライアン:っは、生きてる限り勝ちなんだよ、俺達悪魔は。
カルミア:ふん、汚らわしい。
ドライアン:お綺麗なこった。
カルミア:当然だろう? 私は天使カルミア・ラティフォリア、高潔なる神の使徒だ。だから敗北は許されない。
ドライアン:っは。合わねぇな。この俺、悪魔ドライアン・ダラスは自由と勝利を愛してる。だから自由に生きている限り俺の勝ちだ。
カルミア:喧しい。……しかし、生きている限り、か。我々は何のために生き、そして殺すのだろうな。
ドライアン:何だ? 今日の天使さまはピロートークがお望みか?
カルミア:貴様、今すぐにでも八つ裂きにされたいか?
ドライアン:おいおい、冗談だよ。熱くなんなって。
カルミア:気色の悪い冗談はやめろ、寒気がする。
ドライアン:んなことしたら冗談抜きで昇天しちまうだろうけどな。
カルミア:こちらは闇に墜ちる。
ドライアン:死んだ方がマシだな。
カルミア:ああ、故に殺す方が理に適う。
ドライアン:相容れねぇか。
カルミア:相容れぬさ。
ドライアン:――まぁ、でもよ。そういう
カルミア:うん?
ドライアン:俺は思うんだよ、こうして生きてっと。
カルミア:何をだ?
ドライアン:俺達はきっと、出会うために生きているんだ。ってな。
カルミア:…………。
ドライアン:死んでたら出会えないからな?
カルミア:当たり前だろう。
ドライアン:そう、当たり前のように生きて出会い、そして――
間
ドライアン:――殺すんだ。
カルミア:――殺すのだ。
雨が降り始める音。
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