#02『幻覚』

前回から聞いてくれた方への新情報なのだが、この思考は夕焼けと共に行われている。


タイトル回収、ってやつだ。


――その日、私は何の理由もなく教室で眠っていた。


よくやる居眠りの体勢で、寝息だけは可愛い。


それ以外はどうしようもなく人に見せられないので描写しないが、とにかく、私は居眠りみたいなことをしていたのだ。誰もいない教室で。


……いや、たぶん居眠りだろう。


さて、と。目を覚ました私が周りを見渡すと、さっきも言ったように誰もいない。


「ほぇ……?」


と。セカイで一番間抜けな声を出したかと思うと、ぴちゃり。

よだれが垂れた。


ほんの無意識だったので、とっさに私は机のよだれをごわし、と拭う。


(帰らなきゃな)


グラウンドを見ると、部活動の様子すら見えない。


完全にミスったのだ、起床時間を。


さて、と。


くだらない欠伸をしたところで、私は立ち上がる。


すると。


「……っ?」


視界が、ぐらりと。ただただぐらりと、傾いた。


そうなると、当たり前のようにコケてしまう。


私は地面に座り込む形になった。


「なにこれ」


まだ寝ぼけているのだろうか。


そう思って立ち上がっても、視界は元に戻らない。


ぐわり、ぐらり、ぐろい、ごろり。


視界はやがてぐちゃぐちゃになり、結果として、何も見えなくなっていた。


頭が痛い。


訳の分からないことが起きるとすぐこれだ。


吐きそう。


面倒くさそうになるとすぐにこうなる。


とにかく帰らなきゃ。


その一心で廊下らしき場所に出てみる。


視界はまだぐるぐるしていた。


そのうちに思考もぐちゃぐちゃしてきて、囲った様なぼんやりした痛みが走る。


きゅるきゅるの私をなんとか持ちこたえながら歩いていると。


ふと、幻覚が見えた。


「え……?」


ありえない光景。ありえない景色。


あり得ないはずの、少女。


かつて幼い頃。再会を約束して別れ、後に死んだと聞かされ、世間から存在が抹消してしまった少女。


「なんで……」


私の全てで、私を全てにしてくれた少女。


「キョウコ……?」


それは、酷い幻覚だった。

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