第57話 なんとか

ゴンの案内でダンジョンを進む。しかし、ふと思った。ゴンは誰かがいるとは言ったが、それが仲間だとも人間だとも言ってるわけじゃない。もしかしてモンスターという可能性はないだろうか、それが強力な敵だったら僕一人ではどうしようもない。


「コノサキダ」


モンスターの可能性もあるので、隠れながら近づくことにした。壁に隠れて奥を覗くと、そこにいたのは不安そうに辺りをキョロキョロしているヒマリだった。


「ヒマリ、無事だったのか」

「あっ! 健太!」


ヒマリは体当たりするように勢いで僕に抱き着いてきた。よほど不安だったようで、僕を見つけてものすごく嬉しそうだ。


「他のみんなは?」

「わからない……気が付いたら一人で通路に立ってたの」

「じゃあ、みんなばらばらって可能性もあるんだ」

「ごめん……ヒマリが不用意にドアを開けようとしたから」


僕もミスはするので、ヒマリを強く怒ることはしなかった。だけど、今度からは気を付けるようにと注意だけさせてもらった。


「ねえ健太、ところでさぁ、このへんなの何?」

ヒマリがゴンは見てもっともな質問をしてくる。


「ヘンナノトハナンダ、コノヤロウ」

「ヒマリはやろうじゃないよ! へんてこな格好して失礼なこと言わないでよね」

「テメーケンカウッテルノカ」

「だからヒマリはヒマリなんだって、てめーとか言わないでよね」


あっ……ヒマリとゴン、むちゃくちゃ相性悪いかもしれない。


「健太! なんなのこいつ!」

「いや、なんとなく縁があってね」

「縁があったくらいで変なの拾ってこないでよ」

「拾ったわけじゃないんだけどね、はははっ……あっそうだゴン、ヒマリと合流させてくれてありがとう。でも、君も色々忙しいだろ、もう屋敷に戻ったらどうだ」

「ナゼダ、オレハ、マスタート、イッショニイル」

「いや、屋敷の管理とかどうするんだ」

「ソンナノシラン」


ゴンは聞き分けが悪かった。何度も帰るように言ったけど言うことを聞かない。もう仕方ないので帰すのは諦めた。それにゴンは人の気配を感知できるみたいだし、他の仲間たちの合流には必要かもしれないとポジティブに考えることにした。


「ゴン、この辺りに人の気配とかないかな?」

「チカクニハ、ダレモイナイゾ」

「そっか、じゃあ、少し移動しよう」


他の仲間たちを探して場所を移動することにした。聞くとゴンの探索能力の有効範囲は50mほどということなので、その範囲内を基準に移動する。


しばらくウロウロしていた時、不意にゴンが声をあげる。


「ケイコク、ナニカクルゾ」

「えっ! どっちからくるの、ゴン!」

「ニシノホウガクダ」

「西ってどっち!?」

「アッチダ、バカマスター」

指さしで教えてくれた方向を見た瞬間、それは現れた。牛の頭を持つ巨体のモンスター、ファンタジーではお馴染みのミノタウロスだった。


「ヒマリに任せて!」


近づく前にヒマリがライトニングボウガンで射撃する。雷撃に撃たれたミノタウロスはのけぞり動きを止めるが、すぐにまた動き出してこちらに向かって突進してきた。


「ヒマリ、もう一度、ライトニングボウガンお願い!」

「うん!」


ミノタウロスがライトニングボウガンで撃たれて動きを止めた瞬間を狙い、ケンタワンドのスキルを発動する。


「鉄槌を!」


強烈な衝撃がミノタウロスを襲う。ダメージ表示は100万を超えている。ミノタウロスは上から押しつぶされるように倒れて、粒子となり消滅した。

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