余り者による最低ランクパーティーだけど、レアドロップ率2000%アップのユニークスキルと強運で最強にまで成長します
RYOMA
第1話 パーティー編成会場
東京中に原因不明の爆発が起こり、のちにハクスラ波と呼ばれる不可思議な波が降り注いで三年、東京は混乱からようやく立ち直りつつあった。ハクスラ波を受けた人間の覚醒についても随分と調べられ、科学的な理由は解明されていないが、世界的なRPGゲーム『メルティライナー』との関連が決定的となっていた。ゲーム設定が現実の東京に反映された世界、そんなSFな展開に僕も巻き込まれていた。
「源健太さん、あなたのステータスはこちらです」
鑑識眼スキルを持つ政府の担当官が、そう言って渡してきたカードが、これから冒険者としての身分証明書になるそうだ。そんなカードには力、体力、知力、精神力、敏捷力、魔力などの項目が書かれていて、僕のステータスは、力7、体力8、精神力10、敏捷力8、魔力3となっている。それが良いのかどうかわからないけど、レベル1でのステータス値の平均は12だそうなので、全てが平均値以下ということになるから、かなり悪いんじゃないかと思う。
さらにジョブの項目には楽人と書かれており、戦闘ランクG、ジョブによる補正無しと記されていた。幸い、ユニークスキルの項目には大幸運++というものが付いてるが、聞いたことないスキルで、どういったものかよくわからない。
「レベルアップしたらカードを更新してくださいね。まとめて更新してもいいんですけど、理由なく、レベルアップしてからから三か月更新しなければペナルティがあるので気を付けでください」
「わかりました」
東京都民がプレイヤーとして覚醒した日、東京全体の状況は一変した。都内各地には多くのダンジョンが出現し、そこから大量の異形のモンスターが姿を現した。モンスターに多くの人々が犠牲となったが、覚醒した都民の力はモンスターをダンジョンへと押し返すことに成功する。
しかし、その後の調査で、ダンジョン内には貴重な金属や、不思議な力のあるアイテムが大量に眠っていることがわかると、モンスターが跋扈するダンジョンへと自らの意思で入る者が現れる。そんな者たちをゲーム『メルティライナー』の設定から引用して、”ダンジョンシーカー”と呼んだ。
それから東京都はいくつかの理由により外界から孤立することになる。まず、覚醒者は東京都から外にでることができなくなった。理由はわかっていないが、外の出てしまうと、時間の経過とともに衰弱死してしまうのだ。それとは逆で、外界の者は東京都に入ることができない。同様に衰弱死してしまうからだ。
短い時間ならお互いに行き来できることから、辛うじて物流は継続された。外界から東京へは食材や生活用品などが、東京から外界へはダンジョン産アイテムや金属が運び出されることになる。
こういった孤立状況から、東京都民の職などの選択は大幅に限定されることになってしまった。ダンジョンシーカーかそれ以外の二択と言ってもいいくらいだった。
高校を卒業して僕も進路には悩んだ。ハクスラ爆発から、よりエリート化されてしまった東京の大学などに進む学力などなく、やはり選択はダンジョンシーカーかそれ以外であった。本当はそれ以外に進みたかったけど、家庭の事情で僕はダンジョンシーカーを選択した。それほどシーカーとそれ以外では収入に差があるのだ。まあ、その分危険なんだけど、無理をしなければある程度はリスクを回避できるといわれている。
ダンジョンに挑戦するには大きく三つの工程がある。一つはダンジョンシーカーとしての登録、もう一つはパーティー編成(安全のためにソロでのダンジョン攻略は特別なシーカー以外は禁止されている)最後にダンジョン攻略申請が必要となる。
それで今の僕のタスク状況はというと、ダンジョンシーカーの登録は終わり、これから苦楽を共にする仲間たちとのマッチングをする為に、パーティー編成会場へとやってきていた。
「君、ちょっとステータスカードを見せてくれないか」
「あっ、はい、どうぞ」
僕にカードを見せてくれと言った男はあからさまにがっかりしている。そしてため息をつきながらカードを乱暴に返してきた。
「なんだよ戦闘ランクGかよ、ゴミがウロウロしてんじゃねえよ」
なんとなくこんな扱いを受けるとわかっていたので、特にショックは受けなかった。
それから何人かがステータスカードを確認してきたけど、どの人もいい顔はしなかった。そんな感じで、いつの間にか僕に話しかけてくる者なんて誰もいなくなり、会場のすみっこで小さくなって、ただ時間が過ぎるのを待っていた。
気が付くと会場の人はかなり少なくなっていた。パーティーの編成が終わり、会場を出て行ってしまうので時間の経過でどんどん人は減っていく。優秀なステータスの人物からいなくなるので、多くの人たちが人が少なくなるにつれて妥協していくのだけど、それでも僕には声をかけてくる者なんていなかった。
そして……気が付けばその会場には、ひとパーティー分の人数しかいなくなっていた。
「俺はやっぱり、あまりものか。まあ、仕方ねえよな、こんなステータスじゃ」
余り物の一人、短髪で黒髪の男が苦笑いしながら嘆く。
「うはっ、ゴミステータスじゃん、おもしれえ」
短髪の男のカードをのぞき見した、髪が肩まである茶髪の男が本当に面白そうにそう言う。
「なんだよ、そんなお前はどんなステータスなんだ」
「ほら、これが俺のステータスだ」
「偉そうに言って、お前も戦闘ランクGじゃねえかよ」
「あたりまえだろ、余り物だぞ、たぶんここに残っている奴ら全員Gだと思うぜ」
「いえ、私はEランクですよ」
露出度の高い衣装に濃い化粧の女性が発言する。完全な偏見だけど、この人はステータスというより見た目で避けられたんじゃないだろうか。
「ヒマリもGじゃないもん、え~と、え~と……これなんだから!」
自信満々に出したステータスカードにはネコテイマーの文字と、戦闘ランクFと書かれていた。
「え、小学生!? なんでがきんちょがこんなとこいんだよ」
実は家庭の事情などの理由があり、親の承諾などがあれば子供でもダンジョンシーカーに登録できることがある。まあ、有用性の高いユニークスキルの発現者などのレアケースでも登録できるみたいだけど、余り物になってる時点でそれはないかと思う。
「ヒマリは16歳だよ! 子供じゃないもん!」
とても16歳には見えないけど、確かに16歳なら普通にダンジョンシーカーの登録は可能だ。
「嘘つけ! どこが16歳だよ!」
「嘘じゃないもん! ヒマリ、嘘つかないよ!」
「じゃー証拠見せてみろよ」
そんな茶髪とお子様のレベルの低い言い合いを止めたのはこの会場の職員だった。
「あっ、パーティーは組まれました? そろそろ、ここ閉鎖しますので、終わったら出てくださいね」
兎にも角にも、もうこの余り物の面子でパーティーを組む選択しか残されていなかった。ちょっと心配にはなっていたけど、パーティーを組むことができればダンジョンには入ることができる。そうすればお金を稼ぐことができるわけで、実家に仕送りをしなければいけない身としては、ヒマリの年齢なんてどうでもよかった。
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