第21話
「お兄様!お父様!お花を咲かせましょう!!!」
「「は、はぃ…??」」
エレーナの突然の宣言を聞いて、『またなにかはじまった…』という表情を浮かべるルークとエディン。
「私気づいたのです!バラン伯爵様が私の事を好きになってくださらないのは、私に華々しさがないからだと!なので私、文字通りお花で全身を着飾ることに決めました!」
「「…」」
あの食事会以降、エレーナは自分の中でバラン伯爵の気を引くための方法と、そのために自分に何が足りないのかを考えまくっていた。そしてその結果、どういう思考からきたのかは誰にもわからないものの、自分には華々しさが足りないという答えを導き出したらしい。
「は、華々しさをそのままの意味にとらえすぎなんじゃ…」
「華々しい女性は、華々しいから華々しいのです!つまり私が華々しくなれば、それはつまり華々しい女性となることができるのです!」
「は、華々しいとは…」
「ルーク…。一度スイッチが入ったエレーナはだれにも止められない…。見届けるのだ…」
「はぁ……それもそうですね…」
胸を張って自論を披露するエレーナを前に、二人はそろってあきらめの表情を浮かべるものの、一応の抵抗はしてみることにする。
「あ、あの……エレーナ??大切な妹の君にこんなことは非常に言いにくいのだけれど、きっとバラン様は君への脈はないと思うんだ…。だからそんなよくわからないことは止めて、潔くあきらめた方がいいんじゃないかな…」
「あ、あぁそうだな…!しかし気に病むことはないぞエレーナ!バラン様ほどの素敵な男はなかなかいないかもしれないが、生きていればきっと君にもいい出会いがあるとも!」
「そうだよそうだよ!エレーナ!俺たちも応援するよ!」
…もしかしたらうまくいくかもしれないという希望に胸を弾ませながら、二人はその目をキラキラを輝かせ始める。……が、スーパーポジティブのエレーナの前では無駄だった様子。
「お兄様とお父様の応援、力になります!!今は私への脈はないということは、これから先は上がり目しかないということですよね!つまり今の私には、バラン様と結ばれる素質しかないということですよね!ふふうふふふうふぇぇぇぇ」
自分たちの数倍はその目を輝かせるエレーナを見て、二人は絶望するほかないのだった…。
――――
結局エレーナの言葉により、3人が作業をするには大きすぎる花壇に、それぞれ分担して花の種を植えていくこととなった。この土地はエレーナたちの住む屋敷の近くに存在し、誰にも使用されずすっかり荒れ果ててしまっていたものであったが、エレーナは一瞬のうちに土地の持ち主と話をし、「花壇として花を育てるくらいなら好きに使ってもらってかまわないよ」という約束を取り付けたのだった。
「ま、まさか本当に花壇用の土地を見つけてくるとは…」
「…土地の持ち主の方も、エレーナの底なしの明るさを前にすっかり機嫌をよくされていました…。もはややるしかないのかも…」
「だ、だが私はまだ死にたくはない…!」
作業を開始するほんの直前、エディンは最後の抵抗を企てた。
「な、なぁエレーナ…。やっぱりいきなり花を植える必要はないんじゃないだろうか?エレーナはそのままでも十分なくらい華々しいし、別に花にこだわらなくても」
「え??応援してくださると言いましたよね??あれはうそだったのですか??」
「…」
次の瞬間には、黙々と花壇で作業に当たる2人の男の姿と、うっきうきで作業に当たる一人の女の姿が確認されたのだった…。
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