超強豪校野球部マネージャーの彼女を部員にNTRれた…。失意のどん底に居た僕に手を差し伸べてくれたのは年上美人ナース(白衣の天使)だった
第2話人生初の裸婦画。ラフではない画家としての才能開花への道の一端
第2話人生初の裸婦画。ラフではない画家としての才能開花への道の一端
裸婦画。
それは文字通り女性の裸の姿を描く絵。
裸婦画を描くことで分かることやレベルやスキルが上がるなんて話しを何処かで耳にしたことがある。
僕は現在突飛な発想ではないが脳内で思いついてしまったイメージをキャンバスに残したくてウズウズしている。
芸大内の作業室の許可を得ていた僕は荷物を置くと紅くるみを校門の前で待っていた。
彼女を待つこと数分で久しぶりの元恋人と再会することになる。
「久しぶり。少し太ったんじゃない?」
元恋人である紅くるみは昔と変わらぬ態度で僕にフランクに接してくれる。
「久しぶり。そっちは痩せた?顔色は悪くないようだけど…何か雰囲気変わったね」
「まぁね。
あの報道があって…私達は散り散りになった。
それに罪に問われるような悪いこともしたし…
擦れてしまったと言うか…
沢山の事を経験して大人にならざるを得なかった。
人生踏み外して逮捕までされたんだよ。
カフェで会った時、私は錯乱状態だったんだ。
あの時、刑事が口にしていたことは事実。
私は◯に手を染めてしまったんだ。
けれど今の勤務先のオーナーが救ってくれて…
私はどうにか今も生きている。
しかも給料も悪くなくて贅沢な暮らしができているよ。
亮平を恨んでしまった瞬間が無いと言ったら嘘になるけど…
けれど私が全面的に悪かったって今では思える。
本当に申し訳ないことをしました。
亮平の心に傷をつけてトラウマを植え付けたことでしょう。
本当にごめんなさい。
今回の裸婦画だけで罪を償えるとは思えないけれど…
良かったら私の精一杯の謝罪を受け取ってください。
申し訳ありませんでした」
少しの世間話を終えると紅くるみは僕に精一杯全力で謝罪の言葉を口にする。
深く深く頭を下げた彼女の姿を目にして僕の心は少しだけざわついているようだった。
「うん。とりあえず受け取ります。じゃあ早速作業室に案内するから。頭を上げてよ」
「ありがとう。許してもらえるだなんて夢にも思っていなかったから…」
「そんなことないよ。しっかりと謝罪の言葉を言ってくれて。対話を重ねたんだから。人間同士だし謝ったら終わりでいいでしょ」
「本当にありがとう。亮平の心の広さに救われたよ」
「そんな。大げさだよ。仕返しの様なこともしたわけだし…お互い様でしょ?そんなことよりも早速行こう」
「うん」
そうして僕らは久しぶりに並んで歩くとキャンパス内へと入っていく。
作業部屋まで案内する道中で飲み物を二本購入する。
暖房がしっかりと効いた作業部屋に到着すると彼女は少しだけ戸惑っているようだった。
僕は彼女に毛布を手渡してパーテーションの奥に案内した。
「じゃあここで脱いでもらって。作業に入るまでは毛布で全身を隠していていいからね。寒いとかあったら言って。暖房の調節するから」
「うん…とりあえず脱ぐね」
「わかった。じゃあ僕は準備しているから」
紅くるみはそれにコクリと頷くとパーテーションの奥で服を脱いでいるようだった。
シュルリと衣擦れの音が聞こえてきて僕は心を無にするのに必死だった。
作業中に下半身が反応してしまったらモデルの彼女に失礼な気がして精神統一を怠らなかった。
作業の準備が整うと椅子を用意してそこに腰掛けていた。
パーテーションの奥から紅くるみが姿を現す。
彼女は毛布で全身を包んでいたが、やけに白く細い四肢が目に飛び込んできて頭を振った。
美しく艶めかしく映る彼女の四肢を目にして僕は今回の裸婦画の意味や意義に辿り着けそうだった。
それは端的に言って過去のトラウマや傷の払拭ではない。
そんな大したことない話しではなく。
紅くるみの存在は自分のスキルやレベルアップに役に立つ存在だと感じてしまったのだ。
僕は今の彼女のことも美しいと感じてしまう。
美しいと感じられない物を描いたとしても僕のレベルアップの役には立たないはずだ。
真名以外にも描いてみたいと思える女性がいることに僕は自分自身を少しだけ疑ったし呪った。
けれどこれは作家や芸術家の性だろう。
仕方ない。
仕方ないことなのだろう。
僕ら芸術家は普通の人には理解されないことも多い。
それが恋人であっても家族であっても。
理解されなくても僕は描きたいものに気付き出会ってしまったのだ。
仕方がない。
どうしようもない欲が身体中を駆け巡り脳へと伝った。
イメージやアイディアが溢れるほど浮かんできて今すぐにでも描いてしまいたい気分だった。
ふぅと息を吐くとどうにか冷静さを取り戻す。
「目安は一時間描いて二十分休憩を繰り返すって感じだけど。お手洗いや疲労感が限界になったらいつでも言ってね」
「わかった…じゃあ毛布を取れば良いの?」
「お願い」
そうして紅くるみの裸体を両目で確認した僕は◯欲ではない何かしらの興奮にも似た感情を抱いていた。
「ポーズとか…どうすれば良いの?」
「そうだね…」
そうして僕は彼女にポーズの指示をして椅子に腰掛けた。
「じゃあこれから描いていくね。疲れたらいつでも言って。その時点で休憩にするから」
「わかった…」
紅くるみは確実に照れくさい表情を浮かべているようだった。
僕は真剣な表情でキャンバスへと向き合っていた。
「ねぇ。聞いてもいい?」
「ん?何を?」
「作業中に話しかけてもいい?」
「構わないよ。僕は一応マルチタスクらしいから」
「良かった。裸婦画を描くのは初めて?」
「当然。こんな経験滅多にない」
「恋人の裸婦画は描かないの?」
「う〜ん。考えたこともない」
「じゃあどうして…私の裸婦画を描きたいの?」
「どうしてか…
色んな良い訳をこねくり回して考えていたけど…
今目の前にしてシンプルに思うのは…
やっぱり紅は美しいから…
どうしても僕だけの秘密のキャンバスに閉じ込めておきたいのかもしれない」
「それはどういう感情?独占欲?それに恋人は?美しいと思わないの?」
「恋人は特別な存在なんだ。
彼女の身体は僕だけの目でいつまでも見ていたい。
絵画であったとしても他人の目に触れさせたくない。
それに彼女の美しさを僕の画力で表現できるか怪しい。
僕にもこれがなんという感情なのかわからない。
ただ僕だけがいつまでも紅くるみという女性が居たことを忘れたくないと言うか…
僕を愛し裏切り傷付け苦しませ…いつまでも心の奥にこびりついている存在…
僕の人生にとって重要なキーになった女性が居たことを残しておきたいんだ。
後世で僕が有名になった時に紅くるみと言う女性が居たことを皆にも知ってもらいたい。
野田亮平と言う画家が最後まで恋人以外で唯一美しいと感じていた女性を世の中の人間に知ってもらいたい。
それが裸婦画って形ならもっと良い。
僕らの関係は他人には理解できない歪な形であって…
故に美しく感じる。
これを理解できる人間にだけ…
僕の芸術が伝わればって思うんだ…
なんか長い取り留めもない話になってごめん。
とにかく紅くるみを僕の手で僕だけのキャンバスに残したいんだ。
それが独占欲だと感じるなら…
そう思ってくれてもいいよ」
僕の長たらしい説明を耳にしていた紅は少しだけ複雑な表情を浮かべている。
嬉しい感情なのか後悔している感情なのか。
僕はその全てをキャンバスに収める為に観察を怠らなかった。
手を動かして紅の全てを丸裸にしてキャンバスに収めたい。
裸以上に丸裸な彼女の心までも感じ取って絵にしたかった。
全力で集中しているが耳だけは紅に向けていた。
「わからない…わからないよ。
こんな感情…私は知らない…
こんな時…どんな風にして笑えばいいか…
私は知らない…
わからないよ…亮平の言いたいこと…」
「分からなくていいよ。僕だけはいつまでも知っているし分かっている。
どんな表情を浮かべても構わない。
僕は紅の全てを受け入れて絵に残すだけだから」
「そんなこと言われても…どうしよう…」
「好きな表情を浮かべて。今、ここは自由に塗れているから」
「そう…」
そうして僕らの会話は一時的に中断するが僕はずっと手を動かし続ける。
裸の紅をまず描いて。
その後にイメージしている風景を描こうと思っていた。
一時間が経過して二十分の休憩が訪れる。
紅はパーテーションの奥に向かうと鞄の中に閉まっていたであろう朝食を取っているようだった。
休憩時間が過ぎると紅は再び毛布に包まって僕の目の前にやってくる。
毛布を取って再びポーズを取った彼女を僕はキャンバスに収めていく。
どれぐらいの作業時間と休憩時間を繰り返しただろうか。
外はとっくに夜を迎えていて僕は紅の裸をキャンバスに収めることに成功する。
満足感に浸ってふぅと息を吐くと紅に感謝を告げる。
「今日はありがとう。大体描けたから。後は風景を描くだけだから。今日でモデルは終わりってことで。本当にありがとう。僕のレベルアップに繋がったはずだよ」
「うん…観せて欲しい」
「どうぞ」
僕の了承を得ると紅は毛布に包まって背後に立った。
僕の描いた紅の裸を彼女は照れくさい表情を浮かべて眺めていた。
「私の身体ってこんなにキレイじゃないよ…」
卑屈にも思える言葉を耳にして僕は苦笑する。
「どうして?沢山の男性と関係を持ったから?」
その言葉に彼女はコクリと頷く。
だが僕はそんな彼女の言葉を鼻で笑うようにして微笑む。
「関係ないよ。僕の目には紅の身体は美しいものだってキレイだって映るよ。これに嘘や誤魔化しはない。これがリアルだよ」
「なんか…亮平…変わった?」
「どうかな?変わったとしたら紅の御蔭もあるよ。
変な言い方だけど…傷付けてくれてありがとう。
その御蔭で僕の画力は上がった。
僕はこれから人間性を失うような画家になるかもしれない。
常人からしたら異常だって思われる異端な画家になるかもしれない。
そのキッカケをくれたのは紅だよ。
僕に平穏や安らぎや愛情や幸せを教えてくれたのは今の恋人だけど。
劇薬のような刺激や傷や影響や気付きを与えてくれるのは紅だよ。
だからこそ今日は本当にありがとう。
これで僕はまた一段と階段を登ったと思う。
本当に感謝する」
「やっぱり変わったよ。近づき難い有名人を前にしているみたいな気分…
前みたいに周りから舐められる様な存在じゃないって一目見れば分かる。
少し違うけど…おっかないオーラみたいな物が漏れ出てる。
絶対に怒らせてはいけないと言うか…
舐めて掛かっていい人じゃないって分かるよ。
一気に大人になったのは私だけじゃないんだね。
亮平は平穏に暮らしていたかもしれないけど私以上に経験値を積んだんだね。
傷付けてくれてありがとう…そんな言葉を言われるとは思ってもいなかった…
私は今日まで生きていて本当に良かったって思う。
今日ほど自分の存在意義を確かめられた日は…初めて…
本当にありがとう。
私からもお礼を言わせて欲しい。
それと…またモデルが必要になったら…
いつでも私を呼んで。
どんな姿でも描いて頂戴。
私はもう迷わないし間違えない。
私はやっぱり亮平の傍にいたい…
どの口が言っているんだって思うだろうけど…
亮平が振り向いてくれなくても…
相手をしてくれなくても…
私はいつまでも亮平を想っているからね。
それをいつまでも忘れないでいて…」
僕はその言葉に頷くと紅は恥ずかしそうな表情を浮かべてパーテーションの奥に向かった。
そのまま着替えを済ませた様で僕らは揃って芸大キャンパスを去るのであった。
「じゃあまた…いつでも呼んでね?」
「あぁ。また」
そうして僕らは各々の帰路に就く。
帰宅した僕を目にした真名は心配そうな表情を浮かべている。
「大丈夫。何も間違いは起きていないよ」
「ホントに?」
「本当に。大丈夫。裸婦画を描いてきただけだから」
「信じて良いんだよね?」
「もちろん」
「良かった…」
心配そうな表情から安堵の表情に変わっていく真名を優しく抱きしめると僕も張り詰めていた心を安らげるようにして身を委ねていた。
二人だけの幸福で甘い時間が過ぎていくと今日一瞬だけ感じた巨匠への可能性を思い出しながら明日へと向かうのであった。
一人暮らしのマンションに帰宅した私は本日の出来事を思い出していた。
顔が熱くなるような感覚を久しぶりに思い出して心が高揚している。
「それにしても…画家って皆…あんな誑しなの…」
誑しなどと言う言葉を使ったが…
私はプラスな意味でその言葉を口にしていた。
明らかに再燃してしまった亮平への恋心を患ってしまう。
「世界の画家」
「有名画家」
「巨匠」
「芸術家」
などなどと検索欄に映るサジェストを一つずつ見ていく。
様々な偉人のエピソードを目にして私は納得するようにして頷いた。
「あぁ〜じゃあ愛人とか…そういう関係に落ち着ける可能性もあるわよね…」
などと世迷い言が口を吐いて私は苦笑する。
亮平は今、平穏で安らぎがあり幸福で愛情に満たされている。
私の出る幕など何処に存在すると言うのだ。
しかしながら私は亮平の言葉を思い出す。
もしかしたら亮平の画家としても才能開花に繋がるのは今の恋人の存在では無いのかもしれない。
そんな淡い期待を抱く。
私ももしかしたら亮平の役に立てるのかもしれない。
そんな事を思うと様々な可能性を考えていた。
「芸大でもかなりモテているだろうな…あの感じだと…他にも亮平に刺激を与えてくれる存在はいるだろうし…私には何が出来るんだろう…」
頭を悩ませつつ私は久しぶりに元恋人の為に役に立ちたいなどと勝手にも感じるのであった。
ここから亮平の画家としての才能が問われる出来事が多く起こる。
真名を一番に大事に思いつつ…
自分の才能開花の役に立つためならどんなことにでも手を伸ばす。
そんな事を勝手ながらに決意するのであった。
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