小説を書いてみよう

ロゼ

第1話

 初めましての方もそうでない方もいらっしゃると思いますが、私は主に小説家になろうで異世界恋愛モノを書いております、ロゼと申します。


 第二回新人発掘コンテストで、大賞をいただき、書籍化までさせていただいた幸運なやつでもあります。


 そういう経緯からなのか、私の所には時々


「どうやったら小説って書けるんですか?」


 という質問が来たりします。


「拙くてもいいから、自分が思いついた事をとにかく書いてみるといいよ」


 と私は答えています。


「語彙力がないからそもそも無理!」


 という返事が来る事が多いのですが、私から言わせれば


「いやいや、ライトノベルを書くなら、そこまで高い語彙力は必要ないと思うよ?」


 と思うのです。


 語彙力はないよりもあった方が当然いいですし、語彙力が高い方が様々な物語が紡げる事は間違いありませんが、その高さ故にあまりにも難しい表現を多用しすぎると、ラノベに関しては読者が付きにくくなる傾向にあると思います。


 ラノベの読者層は幅広く、小学生から大人まで様々な人が読んでくれるという凄い世界です。


 確かに大人だけに向けて書くのならば、それに見合った質の高い文章を書けばいいのでしょうが、それではラノベを読みに来る意味もないのです。


 ライトノベルと言われるだけあり、ラノベを読む人達は「手軽にサクッと読める」事で小説に親しんでいます。


 中には、難しさを感じる純文学や文芸小説には苦手意識を持っていて、ラノベ以外読めないという人もいます。


 なので私は、そんなに難しい表現は使わず、自分が読み返した時にスムーズに読み流せる文章を心掛けています。


 そもそも文字に対して苦手意識を持つ人が多き昨今。


 そんな人達にも読んでもらおうと思った場合、難しい文章は悪手でしなかいと思いませんか?


 そして何より、ラノベは更新頻度が命でもある為、自分自身がサクッと書けて、頻繁に更新出来る文章と考えた時、難しい表現を使うのでは時間がかかりすぎるのと、単に私自身が書いていて楽しくないという傲慢な考えで、簡単で分かりやすく目が滑らない文章を心掛けて書くことにしたのですが、これがどうやら正解だったみたいです。


 私の書く小説は全て独学で、特に何かを学んだ事もなく書き始めました。


 本当に何の知識もなかったので、プロットという存在も、賞をいただいてから知ったくらいです。


 プロットを書く事なく、ぶつけ本番でなろうの投稿画面に直接文字を入力して、投稿前の確認ページで誤字やおかしな点を見付けたら直す程度ですぐに公開するスタイルを取っていましたし、現在のなろうでもそのスタイルの為、モチベーションがだだ下がり中の今、ちまちまと書いては保存して、という工程が出来ないなろうでの更新はストップしていますが、それを変えようとは思ってません。


 もうそれに慣れすぎてしまって、なろうで書く際にはそれでないと気分が上がらなくなっているんですよね。


 さて、冒頭で出た「どうやったら小説が書けるのか」についてですが、これはとにかく書いてみるしかないと思っています。


 百人いれば百通りの物語があり、その人の頭の中で誕生したお話はその人にしか書けません。


 書く事を難しく考えすぎて、「語彙力がないから」や「いやいや、そもそも無理!」と言う人が多いですが、考えてみてください? 誰しも最初は初心者です。


 中には処女作品で賞を獲る方、公開して一ヶ月も経たないうちに書籍化が決まる方、書いた物が次々と書籍化していく方もいらっしゃいますが、その方達は別格で、比べてはいけない人達だと思っています。


 それこそ、運も才能も全てを手にしている凄い人枠だと私は思っていて、そんな方々と自分を比較する事からして間違っていると思います。


 そんな凄い人達の文章と比較したら「こんなの書けないから無理」となるのは当然。


 だけど、それでも私は「気軽に書いてみるといいよ」と思うのです。


 語彙力なんて気にせず、頭の中に広がるストーリーを、自分の書ける範囲内の言葉で書いてみる。


 お気に入りの作家さんの文章と比較して「やっぱりダメだ!」と思うかもしれませんが、それはあなたの基準であって、読者になってくれる方々の基準とは違うかもしれない。


 そして、その人が書いた文章はその人にしか書けない唯一無二であり、誰かが好きだと言ってくれる小説かもしれない。


 そんな可能性を秘めているのに、語彙力がないと最初から諦めてしまうのは勿体ない。


 公開する、しないは書いてから決めても遅くはないので、自分の中に眠ってる、まだ誰にも知られていないお話を紡いでみてください。


 どこかで見たようなお話だと言う人がいるかもしれません。


 小説が溢れ返る現在、どの小説も全て、どこかで見たような内容は確実に含まれています。


 完璧に今までなかったストーリーなんてものは存在しないと言ってもいいと思います。


 本人は「新しい!」と思っていても、結局はテンプレと呼ばれるお決まりのパターンを使っていたり、転生モノであれば転生するパターンも何種類かですし、転位も召還等がお決まりです。


 そういうものを取り入れている時点で、全てが新しく今まで読んだ事もないもの、とは呼べないんですよね。


 だから、そういうことも一切気にせずに書く。書いてみなければ何も生まれないし、始まらないから。


 極端な話で言うと、小学生でも小説を書いている子がいます。


 その子達が大人並みの語彙力があるのかと言えば、答えは当然「NO」でしょう。


 それでも、自分が使える範囲内の言葉を駆使して、柔軟な発想力と表現力で小説を書きあげています。


 私は、小説を書くにあたって必要なのは、類稀なる語彙力ではなく、自分の中にある言葉を文章にする表現力だと思ってます。


 高い語彙力があっても、表現力がなければ魅力的な文章にはならないでしょう。


 逆に言えば表現力が高いと、多少語彙力が低くても人を惹きつけるだけの文章は書けると思います。


 「簡単な文章で分かりやすく」


 語彙力が高い人にはこれは難しいらしいのです。


 正直に言いまして、私は自分で「語彙力が高い」とは全く思っていません。


 中学・高校と、家にあったものや学校の図書室にあった小説を大量に読んでいた時期はありましたが、それが身になったかと問われると「どうかな?」と思いますし、X等で私とやり取りをしている方なら分かると思いますが、それ程難しい言葉も使いません。


 みんなが普通に使っている言葉を同じように使って書いているだけです。


 それでも私の小説を「面白い」と感じて読んでくださる読者さんが、賞を獲る前からなろうではある程度いて、有難い事に日間ランキング等にちょこちょこと載っていましたし、短編の一つはアンソロジーコミックスの中の一作品としてお声掛けいただきました。


 ここカクヨムでは全く無名で、まだまだな存在ですが、なろうでは細々ではありますが実績を持っている方だろうと思います。


 そんな私程度の語彙力でも、人に読んでもらえる小説は書けるのですよ。


「語彙力に自信があります!」


 と言っている人をXでたまにお見掛けしますが、「へぇー、すごいねぇ」とは思いますが、正直「羨ましいな」とはあまり思いません。


 その代わり、表現力のある方のことは「うわ! この表現すごっ! 羨ましい!」と思います。


 特に、中学位までに習っているであろう言葉や漢字だけで構成されている文章で、分かりやすいのにきちんと形になっていて、尚且つ面白い小説を書けている方のことは、書籍化云々なしにしても尊敬します。


 そういう方々は大抵、文字を組み立てるセンスと表現力を駆使して小説を書かれているのだろうと思っていて、それは語彙力とはまた違った才能だと思います。


 だから私は「とりあえず書いてみて」と思うのです。


 語彙力はないかもしれなくても、キラリと光る文章を書けるだけの表現力はあるかもしれない。


 そういうのがなくても、書くことが楽しいと感じるかもしれない。


 小説はお金が掛からない最高の娯楽だと私は考えているので、楽しいと思えればそれは趣味として今後の人生の一つの彩りにしてもいいのではないかと思います。


「いやいや、凄くお金が掛かるよ! 資料を買ったり、ね」と仰る方もいますが、基本的に小説は、ノートや原稿用紙と鉛筆か、スマホやパソコンがあれば書けるものです。


 専門的な話を書かない限りは資料集も必要ありませんし、分からないことはネットで調べればある程度分かります。


 私はスマホで書いていますが、これが非常に便利で、いつでもどこでも書けますし、調べ物もスマホ一つで事足ります。


 思ったよりハードルは低いと思いませんか?


 書いてみて、やっぱり無理だと、楽しくないと感じたら、それはそれでいいんじゃないでしょうか?


 自分の中にある可能性の確認が出来たと思えば、その行為は決して無駄ではありませんし、実際自分が書いてみた事で、それまで読んでいた小説の読み方もまた変わる事もあり、より深く小説を楽しむ事に繋がるかもしれません。


 書いてみたからこそ分かる書き手の苦労も体験出来るので、更新頻度が少なくても「あー、この作者さんも今頑張って書いてるんだろうな。書くの大変だもんな」と寛大に待つ事も出来るようになるかもしれませんし、誤字や脱字にも寛容になれるかもしれません。


 少しばかり言い回しや表現方法が独特でも、「これも個性だよね」と許せるようになるかもしれません。


 書いても必ずしも公開しなければならないなんて決まりはないので、書いてみたものの納得がいかなければ、納得いくまで手直しや加筆してもいいですし、別の新しいお話を書くのもいいと思います。


 表現力は数を書いていくと少しずつ鍛えられるものでもあると思うので、何個か書いていくうちに自分なりの書き方というものも出来上がってくるでしょうし、今よりも次に書くものの方がより面白く、文章もその人なりに洗練されていくと思います。


 そうやって色々書いていった先で「誰かに読んでもらいたい」と思う時に公開してみても遅くはありません。


 読んでくれる人は少ないかもしれません。

 こころない感想をもらうかもしれません。


 だけど、感想も一つの勉強になる事もあります。


 自分が必死で考えて書いた文章に、読者さんの個人的な見解であれこれ言われるものに関しては「あー、こんな見方も出来るのか」程度に捉え、そうではなく、明らかな間違いや矛盾点等の指摘は有難く受け取る。


 誤字・脱字は自分では見落としてしまう事が多いので、本当に有難いものですし、知らない事を教えてくださる方々もいらっしゃるので、そういう感想は良い指針になったりします。


 単純に「面白かった!」「続きが読みたいです!」これだけでもモチベーションが上がる起爆剤になりますし、反応があると嬉しいものです。


 そういうものを自分のモチベーションにして皆さん書き続けていると思っていますし、私もそうです。


 ただ、中には自分の「嫌い」をぶつけてくる方もいて、それが続くと今の私のように書く気力すら出てこない状態に陥ることもあると思います。


 気にしないようにしてもそういうマイナスな言葉は何故か蓄積していくので。


 でも、そういうマイナスな面はそれほど多くないので、とにかく書いてみる! 書いてからどうするか決めてみる。これが一番だと思います。


 小説を書いてみると、自分の得手不得手も分かってきます。


 私は情景描写が苦手です。

 建物の建築様式など全く興味がありませんし、家具やインテリアにも詳しくないため「貴族のお部屋」を表現するのがとにかく苦痛です。


 でもそこは、軽く描写を入れ、あとは読者さんに勝手に想像してもらう事でなんとか乗り越えています。


 自分が読んでいる側になった時も、背景描写が細かいものだとその部分を読み飛ばしてしまうこともあります。


「だから駄目なんだろう!」とツッコまれそうですが、読むのも書くのも苦手だと自覚をしているので対処の仕方も覚えました。


 逆に、心理描写は好きなので、ノリと勢いで書いたものではなく、しっかりと書いているものに関しては、心の機微を丁寧に書くようにしています。


 特殊な思考ではない限り、読んだ人が共感を持てるような、または想像しやすいような心の動きを書くのは楽しいです。


 心理描写が苦手だと感じる人は多いようで、そういう描写が少ない作品を時々目にしますが、勿体ないなと思います。


 ここに主人公の心情が書かれていればもっと引き立つのにな、と。


 あまりにも心理描写が少ないと、キャラクターが個性も何もない、ロボットのようになってしまうので、そうならないためにも心理描写は必要になってきますからね。


 私は元々詩を書いていて、そこから何の因果かなのか小説の世界に飛び込んだ人間でして。心理描写が苦手な人には詩を書いてみることを勧めています。


 詩は「恥ずかしい文章」と馬鹿にされることがありますが、それ自体が人の心情を濃縮して切り取った小さな小説だと思っているので、あながち馬鹿に出来ないと思います。


 私はよくXに思いついた詩を載せていますが、文字に制限があるため、言葉選びも必要になってきますし、その文字数の中でどれだけ分かりやすく伝わる感情を表現出来るかが勝負になります。


 私の詩は参考にはならない駄作ばかりですが、ちゃんとした詩人と呼ばれる方々の詩は本当にそれ一つで完結している小説のような物が多く、苦しみ、悲しみ、喜びが上手く表現されているので、とても勉強になるはずです。


 自分で書いてみることも絶対力になると思うので、書いてみるといいと思います。


 でも、そういうことは一度書いてみた先に必要となることであり、初歩の段階では無視して構いません。


 思いついたままを素直に書いてみる。


 日記のような文章になってもいいんです。最初から全て上手くいく、上手に書けるなんて奇跡なんですから。


 書いて、完成させてみて、それを読み返した時に「あー、この辺もっと直したいな」と思う部分を手直しする。


 それだけでグッと小説として完成度が上がると思います。


 なので、小説を書いてみたいと思ったら、悩むことなく書いてみてください。


 私と凄く仲のいい人なら、私は喜んで読みますので、その際は一声掛けていただければと思います。


 何だか偉そうなことを言ってしまっていて不快に感じた方がいらしたら、申し訳ありません。


「小説を書いてみよう!」


 皆さんもハードルを下げて、是非書いてみてください。


 あなただけの世界がそこに広がっていきますから、楽しいですよ!

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