第4話 初討伐
今日はアイヴァンと冒険者ギルドに行く。朝食を食べ終わってゆっくりしていたらアイヴァンとルークが迎えに来た。
ルークの首にはアイヴァンの髪色と同じ赤銅色の首輪がはめられていて、ファミリアであること強調していた。
僕も今朝、シュガーの首に深紅のリボンを巻いた。これで誰から見てもファミリアだと分かるだろう。
「お、ルークとシュガー、色がお揃いだな。お前も赤だったら皆おそろいだったのにな」
アイヴァンが笑って言った。赤なんて目立ってしかたないだろうと言うと、赤毛の俺への宣戦布告かなんて軽口を返された。実際アイヴァンは背も高いしとても目立つ。僕の灰色の髪とは大違いだ。
僕は肩にシュガーを乗せて、ギルドへの道を歩く。肩がなるべく揺れないように歩くのが大変だ。
「お前、ダンスの先生みたいな歩き方になってんぞ」
アイヴァンが腹を抱えて笑っている。そうかアイヴァンは八男とはいえ貴族の子だから、ダンスも踊れるのか。
そうこう言っているうちに冒険者ギルドに到着した。ギルドに正式登録できるのは十五歳からだが、それまでは見習い登録をして魔物討伐以外の危険のない依頼を受けることが出来る。僕たちは見習い登録をして小銭稼ぎをしていたから、ギルドに来るのも慣れたものである。
「こんにちはシンディーさん」
僕たちはギルドのカウンターに行くと、金髪の綺麗なお姉さんに話しかける。ギルド職員のシンディーさんだ。
「あら久しぶりねレインくん、アイヴァンくん。その子たちはもしかして、あなた達のファミリアかしら?」
シンディーさんにファミリアを紹介すると目を丸くして驚いていた。
「精霊のファミリア召喚者が出たって噂は聞いていたけど、まさかレインくんだったなんて」
僕がシュガーを召喚したのは昨日である。噂が早過ぎないか?さすが冒険者ギルドである。
「それじゃあ今日は正規登録に来たのかしら」
そう、とうとう僕たちは正規の冒険者になれるんだ。冒険者のランクは五つあり、上からS、A、B、C、Dである。Cランクより上に行くにはギルド員の面接や試験が必要で、Cランクには特定の数の依頼をこなすとなることが出来る。僕たちはDランクからのスタートだ。
シンディーさんに見習い用のギルドカードを渡し、Dランク冒険者のカードに更新してもらう。
「はいそれでは、冒険者パーティー『インフィニティ』両名のカード更新完了しました!これから頑張ってくださいね」
『インフィニティ』とは僕たちのパーティー名だ。いずれ最強になると願いをこめて二人でつけた。今日この時からインフィニティは本格始動するんだ。
僕達は早速掲示板に貼られた討伐依頼を見てまわった。Dランクで受けられる依頼はやっぱり少ない。僕達は早々にランクを上げるために数を稼げる依頼を受けることにした。
土鼠の巣の破壊依頼だ。土鼠は増えすぎると街にまで入ってくる、土魔法を使う害のある魔物として知られている。一匹見かけたら百匹は居ると言われる繁殖力を持っているため、街で繁殖されたらたまったものでは無い。だから定期的に間引き依頼が来るんだ。
ちなみに小さいので食用にする時は小骨ごと砕いて団子にしたりする。コリコリして意外と美味らしい。前世の記憶のある僕は何となく忌避して食べないけどね。
僕達は近くの森へ行く。精霊であるシュガーが戦うと練習にならないので、シュガーには今日は戦わないようにお願いした。しかしお願いされるまでもなく戦う気なんか無かったようだ。
「あたしはレインの成長を見守ってるわ。どうしても困った時だけ助けてあげる」
シュガーは気分転換のために女神様が遣わしたんだ。あまり働いてもらうのは違うだろう。もしもの時に安全を守ってくれるだけで十分だ。
アイヴァンのファミリアのルークは戦う気満々なようだ。先程から何やら楽しそうに匂いを追っている。
「よし、ルーク。土鼠の巣を見つけてくれよ」
ウルフ系の魔物は冒険者に人気のファミリアだ、狙って召喚できる訳では無いけど、召喚出来たらかなり冒険が楽になると評判だ。なぜなら匂いを追えるからである。今もルークは土鼠の匂いを追ってくれていた。
突然ルークがワンと鳴くと、自身の影に潜り込んだ。シャドウウルフの強さはこの影潜りにある。彼らは自らの影に潜り、獲物に近づいては突然影から出て襲いかかってくる静かなる襲撃者なのだ。
本当にアイヴァンはいい相棒を得たと思う。
影から出たルークは土鼠を咥えていた。巣を見つけたらしい。僕達はルークが示した穴の中を覗き込んだ。中に大量の土鼠が居そうである。
僕達は周囲に他の出入口がないか探すと、三箇所ほど見つかった。僕は土の魔法で出入り口をガッチガチに塞ぐ。土鼠の魔法は弱いから、簡単には壊せないだろう。僕らは入口を一つだけ残して残りを塞ぐと中に煙玉を投げ入れた。
すると大量の土鼠が穴から出てくる。沢山居ると気持ち悪いな。僕達は穴からでてきたネズミを逃がさないように狩ってゆく。逃げそうなネズミはルークが影に縫い付けて動けないようにしてくれた。この依頼を選んで正解だった。
ルークは本当に優秀だ。土鼠討伐の依頼はどれだけの数を狩れるかにかかっている。ルークが影で固定してくれるおかげで今日の収入は跳ね上がりそうだ。
巣をひとつ潰すと土鼠の死体の山が出来上がっていた。
「すごいぞルーク!」
アイヴァンがルークを褒めるとルークは誇らしげに鳴いた。
僕は空間拡張と重さ軽減、さらに時間停止の魔法が付与されたマジックバッグに狩った土鼠を入れた。このマジックバッグは父さんに成人祝いで貰ったものだ。アイヴァンも同じものを貰っていた。
僕らはもう一つ巣を探して沢山の土鼠を狩ると、帰りの道中でウサギなどの動物を狩りながらギルドに戻った。動物は家族にお土産である。
「凄いわね!これならすぐCランクに上がれるわよ!」
積み上がった土鼠を見たシンディーさんが早速買取してくれた。依頼成功料と買取価格を見てやっぱり討伐の方が身入りがいいなと二人で喜んだ。
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